ビジネスわかったランド (経理)

在庫管理

過剰在庫、滞留在庫、廃棄は、在庫マネジメントの良否を示す
顧客を視野に入れた指標が必要となる

過剰滞留を測る指標

在庫準備のミスは、「過剰在庫」を測定すれば評価できます。しかし、過剰在庫の定義はむずかしいものです。何をもって過剰とするのか、過剰の基準値の設定が困難です。

ただ、基準在庫を超える在庫を過剰だと定義することもできるでしょう。
また、基準在庫を少しでも超えたら過剰というのでは、過剰在庫だらけになってしまいますから、基準在庫を超過した比率で計算してもよいでしょう。たとえば、基準在庫を20%以上超過した品目を過剰在庫とする、といった定義です。

滞留在庫を測る指標

「滞留在庫」も在庫準備の失敗で、在庫管理の品質レベルが測れる指標です。しかし、過剰在庫同様に、滞留在庫の定義もむずかしいのです。何をもって滞留在庫というのかは、企業の定義次第です。

たとえば、「○か月以上出荷がない品目」とか、「入庫してから○か月出荷がない品目」というように定義します。この○か月という基準自体は特に公式があるわけではなく、自社在庫として廃棄や陳腐化のリスクが高まる期間で決めます。
廃棄や陳腐化のリスクが高まる期間の取り決めは重要です。こうした判断基準をもたないと、「顧客の注文がいつ来るかわからないから在庫しているのであって、それを滞留といわれても困る」という感情論的な対立になる可能性があるからです。

滞留在庫を定義して測定する方法以外に、在庫の滞留期間を測定する方法もあります。売上や出荷がない期間をとるのではなく、倉庫に入庫してから経っている期間で滞留を特定します。

廃棄を図る指標

「廃棄」は在庫処理の最後の手段です。過剰在庫や滞留在庫になっても販売できたり、転用できたりすればまだマシですが、そうした手が一切使えなくなったときに廃棄になります。
廃棄が多いということは、それだけムダな在庫を無意味に用意してしまっている結果であり、在庫マネジメントのレベルが低いということなのです。

廃棄は廃棄金額自体を評価する場合と、対売上高廃棄金額を評価する場合があります。

在庫に関する指標だけでは問題が起きる

在庫削減を目指し、在庫に関連する指標ばかりで評価・判断していると、ときに大きな間違いを犯すことがあります。
企業に利益をもたらしてくれるのは「顧客」です。にもかかわらず、その存在を忘れて在庫削減が行なわれることがあるからです。

在庫削減で、一気に在庫が減る場合もあるでしょう。一方で、あまりに過剰に在庫削減をしてしまうと、欠品したり、納期遅れになったりすることが予想以上に発生します。そうなると、顧客に多大な迷惑をかけることになります。

私の知る企業のなかでも、自社都合で在庫削減に取り組み、その結果、欠品が多発して、顧客が離れてしまった企業がいくつかあります。在庫だけを指標にすると、顧客の存在が視野から抜け落ち、間違った判断をしてしまう可能性もあるのです。

受注ヒット率

在庫マネジメント改革を推進するにしても、顧客を視野に入れた指標を設定しなければなりません。

その指標の1つが、「受注ヒット率」です。受注ヒット率とは、顧客が注文したときに、きちんと在庫があって、すぐに注文に応じられる比率のことです。100件受注して、95件在庫が引き当たり、納期どおりの即出荷できた場合、これを受注ヒット率95%といいます。
顧客はせっかちです。必要なときに必要なものがなければ、そっぽを向きます。受注ヒット率は、「必要なものを、必要なときに、必要なところに、必要な量だけ届ける」ことができたことを示すのに最も適した指標です。
受注ヒット率は、「受注引当率」といったり、「オーダー充足率」といったりもします。

受注ヒット率は在庫があることが前提で、見込生産向きの指標です。もし、自社が受注生産であれば、「納期遵守率」という指標を使います。

受注ヒット率とは逆の欠品率

「欠品率」は、受注のうち欠品した件数比率を管理します。受注ヒット率とは逆の指標です。

バックオーダー件数と解消期間

欠品後、その注文が注文残として何件残っているかを管理する指標を「バックオーダー件数」といいます。
バックオーダーは至急解消しなければ、顧客が困ります。したがって、バックオーダー解消期間も、管理しなければならない重要な指標です。

著者
石川和幸(経営コンサルタント)
2014年10月末現在の法令等に基づいています。