ビジネスわかったランド (経理)

年次決算

キャッシュ・フローで会社は8タイプに分かれる
3つの活動の総額を見ることで、会社のタイプが8つに分かれる。

3つの活動の総額を見よう

会計のプロをめざす人以外は、キャッシュ・フロー計算書では3つの活動の総額さえ把握すれば十分です。この3つの活動がプラスかマイナスかを見るだけで、会社の状況を8つのタイプに分けることができます。

1. 優等生タイプ(営業+、投資-、財務-)

キャッシュ・フローの理想系と言えるタイプです。営業活動によるキャッシュ・フローが大きくプラスであれば、本業で十分なキャッシュを稼ぎ出し、その稼いだお金で投資を行い、借入金の返済まで行っているという状況が推測できます。まさに優等生タイプの会社です。

優等生タイプ

優等生タイプ

2. イケイケタイプ(営業+、投資-、財務+)

ベンチャー企業などによく見られるタイプです。本業でキャッシュを稼ぎ出していますが、稼ぎ出したお金だけでなく、借入金を増やしてまで積極的に投資を行っていると推測できる、イケイケタイプの会社です。

イケイケタイプ

イケイケタイプ

3. 筋トレ実施中タイプ(営業+、投資+、財務-)

不採算事業や不要な資産を持つ企業などに見られるタイプです。本業でキャッシュを稼いだうえに、不要な固定資産を売却してお金を集め、そのお金で借入の返済を行っていると推測できます。会社の贅肉を削ぎ落として、スリムになろうとしている、筋トレ実施中タイプです。

筋トレ実施中タイプ

筋トレ実施中タイプ

4. ビジネス大転換タイプ(営業+、投資+、財務+)

事業の大転換を図ろうとする企業などに見られるタイプです。
本業でキャッシュを稼いだうえに、既存の固定資産を売却してお金を集め、さらには借入まで行っていると推測できます。お金集めを重視し、これから新たな事業に進出しようとしている、ビジネス大転換タイプです。

ビジネス大転換タイプ

ビジネス大転換タイプ

5. 一発逆転タイプ(営業-、投資-、財務+)

再建途上の企業などに見られるタイプです。本業でキャッシュを稼げず、これを打開するために借入などでお金を集め、積極的に投資を行っていると推測できる、まさに一発逆転タイプです。

一発逆転タイプ

一発逆転タイプ

6. 小さく出直しタイプ(営業-、投資+、財務-)

大リストラ実施中の企業に見られるタイプです。本業でキャッシュが稼げず厳しい状況なので、保有する固定資産もどんどん売却してお金を集め、そのお金で借入の返済を進めていると推測できます。今後の金融機関からの融資も難しく、これから小さく出直していくタイプです。

小さく出直しタイプ

小さく出直しタイプ

7. 死亡寸前タイプ(営業-、投資+、財務+)

もっとも危ない会社のタイプです。本業が厳しくキャッシュが稼げないので、保有する固定資産も投げ売ってお金を集めるものの、それでも足りずにさらに借入を増やし、資金繰りをつなぐために、お金集めに奔走中と推測できます。将来のお金につながる資産もすでに処分済みで、果たしてどこまで持ちこたえられるか不安な、死亡寸前タイプです。

死亡寸前タイプ

死亡寸前タイプ

8. 過去の栄光タイプ(営業-、投資-、財務-)

昔は儲かっていたが現在は低迷している会社に見られるタイプです。本業でキャッシュが稼げないので、過去に稼ぎ出した潤沢なキャッシュを使って積極的に投資を行い、借入金の返済も行っていると推測できます。現在の事業は低迷するものの、過去の実績でお金は潤沢に持っている、過去の栄光タイプです。

過去の栄光タイプ

過去の栄光タイプ

キャッシュ・フロー数値のまとめ方

キャッシュ・フロー計算書については、下図のような様式にまとめます。この様式への記入方法を順に説明していきます。

キャッシュ・フロー計算書で3つの活動を把握する

「A4一枚決算書」内のキャッシュ・フロー計算書で3つの活動を把握する
  1. 貸借対照表、損益計算書と同様に、金額単位は会社の規模に合わせて、千円、百万円、十億円などのケタ区切り(カンマ)を使います。上から3ケタの数字があれば十分です。
  2. 損益計算書と同様に、3期分の数値を記入します。
  3. 3つの活動による総額のほか、キャッシュの増減額とキャッシュの残高も記入します。
  4. キャッシュ・フローが、先ほどの8つのタイプのうち、どのタイプに該当するかを記入します。
このキャッシュ・フロー情報の記入ができれば、ぜひチェックしていただきたいのが、「営業活動によるキャッシュ・フロー」と「投資活動によるキャッシュ・フロー」を足した「フリーキャッシュ・フロー」と呼ばれるものです。
先ほど、

「営業活動によるキャッシュ・フロー」⇒ できるだけ大きなプラス
「投資活動によるキャッシュ・フロー」⇒ マイナス

がキャッシュ・フロー上は望ましいと解説しましたが、そのうえで、この2つの活動の総額を足したフリーキャッシュ・フローがプラスであること、これこそがもっとも理想的なキャッシュ・フローと言われています。本業で稼いだお金で投資も行ったのに、まだキャッシュが増えている状態です。
このように、キャッシュ・フローは3つの活動の総額を把握するだけで、会社の状況が簡単に推測できるのです。

著者
香川晋平(公認会計士・税理士)