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年次決算

「節税対策チェックリスト」でモレなく実施する
「資金不要の永久節税対策」「資金不要の税金繰延対策」「資金必要の永久節税対策」「節税効果の高いもの」の4区分32項目

4つの区分けで32項目
まずは、下表をみてください。節税対策を「よい節税キーワード」をもとに4つに区分けして、合計32の項目を掲載しました。区分けは、「資金不要の永久節税対策」「資金不要の税金繰延対策」「資金必要の永久節税対策」「節税効果の高いもの(資金必要の税金繰延対策)」です。
 
 

  ■節税対策チェックリスト32項目  
  番号   節税対策内容 影響額
  【資金不要の永久節税対策】
  1   使用していないまたは存在していない固定資産を除却できないか  
  2   回収不能の不良債権を貸倒損失に計上できないか(債権放棄)  
  3   不良在庫を処分できないか  
  4   従業員などを増やして税額控除を適用できないか?  
  5   1人当たり5000円以下の飲食交際費の特例を適用できないか  
  6   消費税の経理基準を税抜にできないか  
  7   減資を検討したか(1000万円、3000万円、5000万円、1億円ライン)  
  8   含み損を抱える不要資産の売却を検討したか  
  【資金不要の税金繰延対策】
  9   売上の計上基準を変更できないか(継続適用が必要)  
  10   売上の締切日での決算を検討したか(締め日が末日以前10日以内で継続適用)  
  11   決算日(事業年度)を変更できないか  
  12   決算月の社会保険料(翌月払い)を未払計上しているか  
  13   労働保険料を未払計上しているか  
  14   固定資産税を未払計上しているか  
  15   締め日後の従業員給料を計上しているか(役員給与はダメ)  
  16   その他未払費用の計上を徹底的に行なったか  
  17   貯蔵品の計上を基本通達2-2-15により廃止できないか  
  【資金必要の永久節税対策】
  18   30万円未満の少額減価償却資産の特例を適用できないか  
  19   中古の固定資産の購入を検討したか  
  20   税額控除の対象となる固定資産の購入やリース契約を検討したか  
  21   古い固定資産の修繕を検討したか  
  22   役員退職金の支給を検討したか  
  23   従業員決算賞与の未払計上を検討したか(役員賞与はダメ)  
  24   役員や従業員の自宅を社宅にすることを検討したか  
  25   社員旅行の実施を検討したか(最大4泊5日まで、従業員の50%以上参加)  
  26   出張旅費や日当を支払うための旅費規程の作成を検討したか  
  27   中小企業退職金共済への加入を検討したか  
  28   中小企業倒産防止共済への加入を検討したか  
  【節税効果の高いもの(資金必要の税金繰延対策)】
  29   地代家賃や生命保険の年払いを検討できないか  
  30   経営者保険への加入を検討したか  
  31   広告宣伝費など来年の投資を前倒しできないか検討したか  
  32   人材採用費などを前倒しできないか検討したか  
 

節税対策が必要な会社は、この節税チェックリストを活用してください。個々の項目の詳細は後述していきますが、ここでは後述していない部分について解説をしていきます。


在庫や貯蔵品には税金がかかる?
まずは、3「不良在庫を処分できないか」です。在庫というのは、会社の資産となり、売上原価の計算式では「期首在庫+当期商品仕入高-期末在庫」となります。つまり、在庫が多くなればなるほど費用である売上原価がその分少なくなり、税金がかかることになります。これは逆にいうと、在庫の金額が少なくなれば節税になるということです。

そこで、売れない在庫があれば、「赤字覚悟で決算セールを実施」したり、「在庫を廃棄」したりすることをおすすめします。これは会社の財務体質健全化にも貢献します。ただし、在庫を廃棄するときには、税務署対策として「廃棄したことがわかるような証拠書類」を保存しておくようにしてください(たとえば、処分業者からの「廃棄証明書」や「廃棄商品の写真など)。
在庫と同様に、会社にある文房具や切手、収入印紙などで決算期末に存在するものは、貯蔵品として会社の資産に計上するのが原則です。

しかし、例外処理として、法人税法基本通達2-2-15には、「各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものについては決算期末において資産計上しなくてよい」と定められています。この規定を使って資産処理せず経費計上できれば、節税につながるのではないでしょうか。これが17「貯蔵品の計上を基本通達2-2-15により廃止できないか」になります。


売上の計上基準や締切日を変更できないか
次に、9「売上の計上基準を変更できないか」ですが、売上の計上基準とは、商品を出荷したときに売上を認識する「出荷基準」や得意先が商品を検収したときに売上を認識する「検収基準」のことです。節税対策を考えると、なるべく売上の計上時期は遅らせたほうが有利です。

そこで、売上の計上基準を「検収基準」としてみてはいかがでしょう。この場合、3月末決算の会社では、3/31出荷、4/1納品・検収というような商品について、来期の売上計上となります。
ただし、売上の計上基準については、みだりに変更するのではなく、継続適用するようにしてください。

10「売上の締切日での決算を検討したか」ですが、これは法人税法基本通達2-6-1を活用したものになります。通達では、「法人が、商慣習その他相当の理由により、各事業年度に係る収入および支出の計算の基礎となる決算締切日を継続してその事業年度終了の日以前おおむね10日以内の一定の日としている場合には、これを認める」と定められています。つまり、20日締めの得意先について、本来であれば21日から末日までの売上を計上しないといけないのですが、継続適用という前提で、21日以後の売上を来期回しにすることができるのです。


社宅、社員旅行、中小企業退職金共済の活用
24「役員や従業員の自宅を社宅にすることを検討したか」ですが、これは下表にあるような負担金を個人が給与天引きなどで負担すれば、会社負担分の社宅家賃などについて、給与課税がなされず、福利厚生費などとして会社の経費計上が認められるということです。社宅費用全額を会社負担にすると、個人に給与課税されるので注意してください。


 ■国税庁タックスアンサーより一部抜粋

●使用人に社宅や寮などを貸したとき
 
 使用人に対して社宅や寮などを貸す場合には、使用人から1か月当たり一定額の家賃を受け取っていれば給与として課税されません。この1か月当たりの一定額の家賃は、次の3つを合計した金額を基準とします。

(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2)12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3)
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
 
 以上の3つを合計した金額が、使用人に貸す社宅や寮などの1か月当たりの家賃の基準となります。使用人から受け取っている家賃が、基準となる金額の50%以上であれば、受け取っている家賃と基準となる金額との差額は、給与として課税されません。

●役員に社宅などを貸したとき
 
 役員に対して社宅を貸す場合には、役員から一定額の家賃を受け取っていれば、給与として課税されません。この基準となる1か月当たりの家賃は、貸す社宅の床面積により小規模な住宅とそれ以外の住宅とに分け、次のように計算します。ただし、この社宅が、社会通念上一般に貸与されている社宅と認められないいわゆる豪華社宅である場合は、次の算式の適用はなく、時価(実勢価額)によることとなります。

 (注) 小規模な住宅とは、建物の耐用年数が30年以下の場合には床面積が132・以下である住宅、建物の耐用年数が30年を超える場合には床面積が99㎡以下(区分所有の建物は共有部分の床面積を按分し加えたところで判定します)である住宅をいいます。

1.役員に貸す社宅が小規模な住宅である場合
 
次の(1)から(3)の合計額が基準となる1か月当たりの家賃になります。

(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2)12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3)
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

2.役員に貸す社宅が小規模な住宅でない場合
 
 次の(1)と(2)の合計額の12分の1が基準となる1か月当たりの家賃になります。

(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
     ただし、建物の耐用年数が30年を超える場合には10%を掛けます。
(2)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

 (注) 会社が他から社宅を借りて貸す場合には、この金額と会社が支払う家賃の50%の金額とのいずれか多い金額が、基準となる金額となります。


同じ福利厚生費関係として、25「社員旅行の実施を検討したか」も先ほどと同様に、個人に給与課税されないように実施することが重要です。具体的には、「4泊5日以内」「1人当たり10万円程度」「50%以上が参加」の要件を満たす社員旅行は通常給与課税されず、全額会社の福利厚生費として処理できますので覚えておいてください。

この項目の最後は、27「中小企業退職金共済への加入を検討したか」です。中小企業退職金共済とは、「中小企業が、従業員の退職に備えて毎月掛金を支払い、節税を図りながら、社外に退職積立をしていくことができる」制度となっています。独立行政法人「勤労者退職金共済機構」が運営する共済制度で、役員は対象となりません。また、従業員が退職する際には、退職金が事業団から従業員に直接支払われます。これを、事業主に変更することはできません。注意してください。

 

著者
今村 仁(マネーコンシェルジュ税理士法人/税理士) 
http://www.money-c.com/ 
2013年1月末現在の法令等に基づいています。