ビジネスわかったランド (経理)

年次決算

年次決算の手続きとチェックポイントは
年次決算は毎年のことだが、きちんとしたスケジュールを立て、スムーズに進めることが不可欠。非公開会社を中心とするの手続きとチェックリストは次のとおり。

年次決算の手続き
決算の大きな流れは、次のようになる。
  1. 修正前試算表の作成……総勘定元帳と補助簿を突合し、不一致内容の調査、修正を行なう。
  2. 銀行の残高証明、取引先より残高確認書、倉庫会社より在庫証明書等外部よりの諸証明書を入手し帳簿残高と突合、差異の調査を行なう。
  3. 決算修正……月次決算で計上しない項目の計上や仮計上していた項目の修正を行なう。決算修正項目例を次に示す。 ・売掛金、受取手形……回収不能額の貸倒れ処理や貸倒引当金の設定 ・棚卸資産……棚卸差異の修正、評価減の計上、低価法の適用、原価計算による評価額の確定等 ・有価証券……強制評価減の実施、流動資産か固定資産かの見直し等 ・仮払金、仮受金等……内容を調査し、本勘定へ計上 ・有形固定資産……減価償却の実施、増加償却、特別償却の実施、遊休・不良資産の評価減、建設仮勘定の残高の見直し等 ・繰延資産……償却の実施等 ・引当金……当期取崩額、引当額の計上。月次決算での予定計上額は、取り崩す ・前払費用、未払費用等の計上 ・本店・支店・工場との間で社内売買、内部利益、本支店勘定制度等を採っている場合はそれらを相殺、消去する ・税金……課税所得を計算し、それに基づく税金の未払額計上
  4. 修正後残高試算表の作成……1に3を加えて修正後残高試算表を作成する。決算修正を一度に行なわないときは、第1次、第2次等複数の残高試算表が作成される。
  5. 総勘定元帳に3を転記し、締め切る。
  6. 貸借対照表、損益計算書の作成……長期・短期の組替えや、試算表勘定科目を集約する等して、貸借対照表、損益計算書の表示科目に組み替えるとともに「注記表」(従来どおり、貸借対照表、損益計算表の欄外注記でも可)を作成する。表示方法は、会社計算規則に定められている。
  7. 勘定内訳明細書、会社法上の附属明細書の作成は4と並行して行なう。
  8. 株主資本等変動計算書の作成
  9. 株主総会召集通知の作成
  10. 法人税等申告書の作成
株式会社の決算日程
決算日後定時総会に至る諸手続きやその日程は、会社法に定められている。
新会社法下における株式会社の定時株主総会は、結果として、事業年度終了後3か月以内に開催することになる。理由は、株主総会を開催するに当たっては、議決権を行使できる株主を一定日(基準日)を定めて確定する必要があるが、実務上、定款で基準日を事業年度末日に定めることが多く、その基準日株主の権利は基準日から3か月以内にしか実行できないと定められているからである。
新会社法下での定時株主総会開催日程の制約は、このほか開催日より一定期間前に計算書類等を備置することと、一定期間前に招集通知を発送することのみである。従来は、定時株主総会の一定期間までに監査役、会計監査人等に貸借対照表等を提出しなければならないという規制があり、監査が速やかに終了したとしても、一定期間を経なければ株主総会を開催できない仕組みであった。しかし、新会社法では、貸借対照法等の一定の措置の期間と株主総会招集通知の期間が確保されれば、定時株主総会を早期に開催することが可能になった。事業年度末日の株主名簿の閉鎖から公告までの主要手続きの流れを示すと、次の表のようになる。


取締役会非設置会社の特則
旧有限会社のように比較的小規模で、株式譲渡制限会社については取締役会非設置会社が認められているが、それらの会社の株式総会に対する特則は、次の表のとおり。


決算手続きチェックポイント
決算は、事業年度の財政状態、経営成績を確定する手続きであるが、同時に会社の会計処理、手続きの総合的見直し、資産の管理状態の見直しの機会でもある。したがって、決算に当たっては次のようなチェックを行ない、会社の健全経営のためのシステムづくりにも資することが必要である。


著者
西山 浩(経営コンサルタント)
監修
税理士法人A.Iブレイン
2013年1月末現在の法令等に基づいています。