ビジネスわかったランド (経理)
固定資産等の管理
減損会計の処理の流れは
減損会計の処理は、減損の対象となる資産、減損の兆候、減損損失の認識、減損損失の測定、減損損失の会計処理、という順序で、次のように行なう。
<<減損会計の処理>>
減損会計の処理の流れは、図表1のように、大きく(1)減損の対象となる資産の有無、(2)減損の兆候、(3)減損損失の認識、(4)減損損失の測定、(5)減損損失の会計処理、という順序で行なう。
(1) 減損の対象となる資産の有無
減損会計の対象となる資産は、貸借対照表に計上されている固定資産である。すなわち、有形固定資産(本社・支店や工場、福利厚生施設の土地、建物、機械装置、建設仮勘定等)、無形固定資産(営業権=のれん、特許権、商標権、借地権、連結調整勘定等)、投資その他の資産(賃貸ビルや賃貸マンションの投資不動産、長期前払費用として計上されている権利金等)などが該当する。
なお、次のような他の会計基準に減損処理に関する定めがある資産については、対象資産から除かれる。
・「金融商品に係る会計基準」に定めのある金融資産
・「税効果会計に係る会計基準」に定めのある繰延税金資産
・「研究開発費用等に係る会計基準」に無形固定資産として計上されている販売目的のソフトウェア
・「退職給付に係る会計基準」に定めのある前払年金費用
(注) 繰延資産は、貸借対照表上、固定資産に分類されていないため、減損合計基準の対象資産とはならないが、支払の効果が期待されなくなった場合は、一時的に償却される。
ところで、複数の資産が一体となって独立したキャッシュフローを生み出している場合は、合理的な範囲、すなわち経営の実態が適切に反映されるよう配慮して、他の資産・資産グループのキャッシュフローからおおむね独立したキャッシュフローを生み出す最小の単位でグルーピングする必要がある。
(2) 減損の兆候
資産や資産グループに減損が生じている可能性を示す事象を減損の兆候という。
減損の兆候があるかどうかの判断は、資産または資産グループに関連して、以下のような事象が発生しているかどうかで行なう。
・営業損益またはキャッシュフローが継続して赤字になっている
・資産等の回収可能価額を著しく低下させるような変化が生じた
・資産等が使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化した
・資産等の市場価格が著しく下落した
(3) 減損損失の認識
その資産および資産グループに関する将来キャッシュフローを計算し、その合計額を帳簿価額と比較する(図表2参照)。
その結果、帳簿価額のほうが大きい場合には、減損損失を認識したものとして、次の(4)へ進む。
(4) 減損損失の測定
減損損失を認識すべきであると判定された資産および資産グループについては、回収可能価額を計算し、帳簿価額との差額を減損損失として測定する(図表3参照)。
回収可能価額とは、資産および資産グループの正味売却価額(時価から処分費用を控除したもの)と使用価値(将来キャッシュフローの割引現在価値)のいずれか大きいほうの金額をいう。
資産グループについて認識された減損損失は、帳簿価額に基づいて比例分配する方法、あるいは各構成資産の時価を考慮した配分方法等、合理的と認められる方法により、当該資産グループの各構成資産に配分する。
(5) 減損損失の会計処理
損益計算書において、当期の減損処理額につき、原則として特別損失で処理する。重要な減損損失を認識した場合は、損益計算書の特別損失に関する注記事項として、その資産および資産グループの用途、種類、場所などの概要、経緯、全体の金額と主な固定資産の種類ごとの内訳、回収可能価額が正味売却価額の場合はその旨と時価の算定方法、回収可能価額が使用価値の場合にはその旨と割引率などを記載する。
また、減損合計基準を初めて適用した事業年度は、減損損失を計上していない場合であっても、全般的な資産のグルーピングの方針等を注記することができる。
なお、減損処理を行なった資産の翌期の減価償却は、減損損失を控除した帳簿価額に基づいて行なう。
<<所有権移転外ファイナンス・リース取引と減損会計>>
平成20年4月1日以後開始する事業年度からリース会計基準が適用され、所有権移転外ファイナンス・リース取引についてもリース資産として資産計上することが原則化された。リース資産であっても基本的には固定資産であるから、リース資産又は当該リース資産を含む資産グループに減損の兆候が生じた場合には、減損会計の対象となる。
リース資産の計上にあたっては、原則として、リース料総額からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除する方法によることとされているが、リース資産総額に重要性が乏しいと認められるときには、利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法によることができるとされている。このような方法によっている場合でも、リース資産又は当該リース資産を含む資産グループに関する減損損失の認識の判定および減損損失の測定にあたっては、その時点における利息相当額の合理的な見積額をリース資産から控除して行うことができる。
一方、所有権移転外ファイナンス・リース取引について通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理(例外処理)を行っている場合も考えられる。この場合であっても、未経過リース料の現在価値をリース資産の帳簿価額とみなして減損会計基準を適用するとされている。
なお、いずれの処理方法を採用していたとしても、個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合、当該リース資産は減損会計基準の対象としないことができる。
<<減損会計の税務取扱い>>
法人税法上、固定資産の評価損は、原則として損金不算入である。例外的に、災害により著しく損傷したなどの特別な場合に限り、損金算入が認められている。固定資産の減損損失は、これら特別の場合には該当しないことから、税務上は損金不算入となる。
したがって、減損損失と会計上の原価償却費の合計額が、税務上の償却限度額を超えた場合は、その超過した金額が償却超過額となり、別表四で償却超過額として申告調整を行なうこととなる。
著者
吉岡 一人(経営コンサルタント)
監修
税理士法人A.Iブレイン
2013年3月末現在の法令等に基づいています。
<<減損会計の処理>>
減損会計の処理の流れは、図表1のように、大きく(1)減損の対象となる資産の有無、(2)減損の兆候、(3)減損損失の認識、(4)減損損失の測定、(5)減損損失の会計処理、という順序で行なう。
(1) 減損の対象となる資産の有無
減損会計の対象となる資産は、貸借対照表に計上されている固定資産である。すなわち、有形固定資産(本社・支店や工場、福利厚生施設の土地、建物、機械装置、建設仮勘定等)、無形固定資産(営業権=のれん、特許権、商標権、借地権、連結調整勘定等)、投資その他の資産(賃貸ビルや賃貸マンションの投資不動産、長期前払費用として計上されている権利金等)などが該当する。
なお、次のような他の会計基準に減損処理に関する定めがある資産については、対象資産から除かれる。
・「金融商品に係る会計基準」に定めのある金融資産
・「税効果会計に係る会計基準」に定めのある繰延税金資産
・「研究開発費用等に係る会計基準」に無形固定資産として計上されている販売目的のソフトウェア
・「退職給付に係る会計基準」に定めのある前払年金費用
(注) 繰延資産は、貸借対照表上、固定資産に分類されていないため、減損合計基準の対象資産とはならないが、支払の効果が期待されなくなった場合は、一時的に償却される。
ところで、複数の資産が一体となって独立したキャッシュフローを生み出している場合は、合理的な範囲、すなわち経営の実態が適切に反映されるよう配慮して、他の資産・資産グループのキャッシュフローからおおむね独立したキャッシュフローを生み出す最小の単位でグルーピングする必要がある。
(2) 減損の兆候
資産や資産グループに減損が生じている可能性を示す事象を減損の兆候という。
減損の兆候があるかどうかの判断は、資産または資産グループに関連して、以下のような事象が発生しているかどうかで行なう。
・営業損益またはキャッシュフローが継続して赤字になっている
・資産等の回収可能価額を著しく低下させるような変化が生じた
・資産等が使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化した
・資産等の市場価格が著しく下落した
(3) 減損損失の認識
その資産および資産グループに関する将来キャッシュフローを計算し、その合計額を帳簿価額と比較する(図表2参照)。
その結果、帳簿価額のほうが大きい場合には、減損損失を認識したものとして、次の(4)へ進む。
(4) 減損損失の測定
減損損失を認識すべきであると判定された資産および資産グループについては、回収可能価額を計算し、帳簿価額との差額を減損損失として測定する(図表3参照)。
回収可能価額とは、資産および資産グループの正味売却価額(時価から処分費用を控除したもの)と使用価値(将来キャッシュフローの割引現在価値)のいずれか大きいほうの金額をいう。
資産グループについて認識された減損損失は、帳簿価額に基づいて比例分配する方法、あるいは各構成資産の時価を考慮した配分方法等、合理的と認められる方法により、当該資産グループの各構成資産に配分する。
(5) 減損損失の会計処理
損益計算書において、当期の減損処理額につき、原則として特別損失で処理する。重要な減損損失を認識した場合は、損益計算書の特別損失に関する注記事項として、その資産および資産グループの用途、種類、場所などの概要、経緯、全体の金額と主な固定資産の種類ごとの内訳、回収可能価額が正味売却価額の場合はその旨と時価の算定方法、回収可能価額が使用価値の場合にはその旨と割引率などを記載する。
また、減損合計基準を初めて適用した事業年度は、減損損失を計上していない場合であっても、全般的な資産のグルーピングの方針等を注記することができる。
なお、減損処理を行なった資産の翌期の減価償却は、減損損失を控除した帳簿価額に基づいて行なう。
<<所有権移転外ファイナンス・リース取引と減損会計>>
平成20年4月1日以後開始する事業年度からリース会計基準が適用され、所有権移転外ファイナンス・リース取引についてもリース資産として資産計上することが原則化された。リース資産であっても基本的には固定資産であるから、リース資産又は当該リース資産を含む資産グループに減損の兆候が生じた場合には、減損会計の対象となる。
リース資産の計上にあたっては、原則として、リース料総額からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除する方法によることとされているが、リース資産総額に重要性が乏しいと認められるときには、利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法によることができるとされている。このような方法によっている場合でも、リース資産又は当該リース資産を含む資産グループに関する減損損失の認識の判定および減損損失の測定にあたっては、その時点における利息相当額の合理的な見積額をリース資産から控除して行うことができる。
一方、所有権移転外ファイナンス・リース取引について通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理(例外処理)を行っている場合も考えられる。この場合であっても、未経過リース料の現在価値をリース資産の帳簿価額とみなして減損会計基準を適用するとされている。
なお、いずれの処理方法を採用していたとしても、個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合、当該リース資産は減損会計基準の対象としないことができる。
<<減損会計の税務取扱い>>
法人税法上、固定資産の評価損は、原則として損金不算入である。例外的に、災害により著しく損傷したなどの特別な場合に限り、損金算入が認められている。固定資産の減損損失は、これら特別の場合には該当しないことから、税務上は損金不算入となる。
したがって、減損損失と会計上の原価償却費の合計額が、税務上の償却限度額を超えた場合は、その超過した金額が償却超過額となり、別表四で償却超過額として申告調整を行なうこととなる。
著者
吉岡 一人(経営コンサルタント)
監修
税理士法人A.Iブレイン
2013年3月末現在の法令等に基づいています。
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