ビジネスわかったランド (経理)

資金繰りと資金管理

リスケを決断するタイミングはいつがよいのでしょうか?
資金がなくなる半年前には申請を

リスケを行なえば、自社の信用に傷がつき、当面は新規の借入ができなくなりますから、慎重に判断しなければなりません。しかしその一方で、いたずらに判断を先送りしていると、いよいよ資金繰りが悪化して取り返しのつかない事態を招く恐れもあります。
 
<リスケを決断する3つの要件>
リスケを決断する前提として、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。

(1)返済を続けると事業への悪影響が避けられないこと
資金繰りがひっ迫した状態で、銀行への返済を続ければ、不足した資金を何かに“しわ寄せ”することになります。しわ寄せの代表的なものは、「仕入代金の滞納」「税金や社会保険料の滞納」「給料の遅配」です。
これらは、銀行の債務を他の債務に振り替えたにすぎません。通常、仕入先や税務署は銀行よりも厳しい対応をとってくるので、会社再建が難しくなってしまいます。
したがって、そういう状態に陥りそうであれば、1日も早く銀行にリスケを申し入れるべきです。

(2)銀行から融資を受けられないことが確定し、資金調達の代替手段がないこと
新規借入が困難な状況にあるということが、銀行がリスケを承諾する前提になります。通常、借入ができるなら、それで返済してください、という話になるからです。
したがって、リスケの申請前には、主な銀行を回って、追加の借入ができるかどうかをはっきりさせておく必要があります。
また、増資や資産売却などによる資金調達も検討します。
ただし、高利の金融業者の融資に手を出してはいけません。また業績改善の目処が立っていない状態で、無理に少人数私募債で資金調達するのも、新たな債権者をリスケに巻き込む恐れがあります。

(3)融資を受けられるとしても、少額で、すぐに返済不能に陥ることが明らかなこと
追加借入を行なっても、2~3か月以内に返済不能に陥ることが明白であれば、その借入は見送るべきです。無理を承知で追加借入を行なうのは、リスケに巻き込まれる“被害者”“被害額”を増やす行為であり、現実に、借入直後のリスケ交渉は非常に難航します。
上記要件を満たす場合は、リスケの申請をできるだけ急ぐべきです。リスケ後は新規借入ができなくなるので、ある程度、資金を手元に残しておく必要があるからです。ケースにもよりますが、遅くとも資金が枯渇する半年前には申請したいところです。


安田 順(中小企業診断士)