ビジネスわかったランド (経理)

資金繰りと資金管理

サービサーから債務免除を受けることは可能ですか?
可能ですが、注意すべきポイントがあります

企業にとって、サービサーに債権が移るメリットは、債権譲渡価格(銀行からの買取価格)以上の金額を返済し、残額を債務免除してもらう交渉が可能になる点にあります。
残債務の一部返済を条件として、サービサーから債務免除を受けることを「DPO」(Discount Pay Off)といいます。DPOでポイントとなるのは、債権譲渡価格と一部返済の原資の調達です。
 
●債権譲渡価格

サービサーへの譲渡価格は、主に次の要素から決定されます。

(1)債務者企業の返済力
決算書からみた利益や資金繰り状況、返済実績により返済力を判断します。

(2)担保の処分可能価格
担保評価額(競売で回収可能な価格)です。

(3)保証人からの回収見込み額
連帯保証人の所有する資産、収入の状況からみた回収見込み額です。

たとえば、決算書が大幅な赤字状態で、長期にわたって延滞しており、担保も保証人もないという企業の債権は、「タダ同然」の価格がつけられます。銀行は、このような債権を少しでも早く償却したいと考えるので、極端にいえば、譲渡価格1円ということもあり得ます。一方、返済力はないが担保だけが残っているという場合は、競売になることをふまえ、担保評価額の7掛け以下の価格になっている可能性があります。

また、サービサーに対する債権譲渡では、銀行が複数の債務者に対する貸付債権をひとまとめにして入札形式で売りに出す「バルクセール」も用いられ、その場合には、予想以上に高い値段がついていることもあります。
債務者にとっては、銀行からサービサーへの譲渡価格が安いほど、サービサーとの債務免除交渉がやりやすいということになります。

企業の側が債権譲渡価格を正確に見積もることは難しいので、交渉で探りを入れていくのが基本戦術になります。
 
●一部返済の原資の調達

一部返済の原資の調達については、別の銀行やスポンサーからリファイナンス(借換え融資)を受ける手もあります。あらかじめリファイナンス先を確保できる場合は、債権を買い取るサービサーを債務者側で用意し、銀行との交渉を任せるといった対応も不可能ではありません。


安田 順(中小企業診断士)