ビジネスわかったランド (経理)

売上、売掛金の管理

売掛金の回収状況の把握方法は
売掛金元帳で発生金額、回収金額、残高等の回収状況を正しく把握するための帳票システムを確立したうえで、売掛金台帳による請求と入金のチェック、売掛金の年齢調べなどを地道に実施することが必要となる。


<< 正確な売掛金管理を可能にする帳票システムの確立 >>


日常の売掛金管理のポイント
売掛金管理を迅速かつ正確に遂行するためには、日常的に実施し得る帳票システムを確立する必要がある。
  1. 請求システムの整備:売掛金台帳と照合された正確な請求書を、得意先の支払期日までに必着するよう送付しなければならない。
  2. 入金処理と差異の調整:売掛金台帳で入金の消込み処理(どの売掛金が入金されたか1件ごとにチェックすること)を行ない、請求金額と入金額との差異の内容を把握して営業担当者に通知し、差異の解消を督促する。
  3. 売掛金の年齢調べ:毎月、各得意先の売掛金残高を発生月別に区分した年齢調べ表を作成し、長期滞留分があれば営業部に対し早期回収を督促する。得意先の支払能力悪化に伴い滞留したものがあれば、管理部や法務部に通告して債権保全の必要性について検討を要請する。
  4. 売掛金の残高照合:毎月の請求と入金消込みにより相互の残高照合を実施するほか、少なくとも年に1回は得意先に残高確認書を送付して回答を求める。
重要な売掛金の年齢調べ
売掛金の総額を把握することにも増して重要なのは、その内容を知ることだが、それを実現できるのが「売掛金の年齢調べ」である。たとえば、当月、1~2月、2~3月、3~6月というように経過月数を記録して、3か月以上の滞留が生じる得意先を取り出して、集金活動の良否などを検討して対策をとれば、不良債権化するのを未然に防ぐことができる。


売掛金の年齢調べ表を活用する
その際、顧客別に、いつ売り上げたものがいくら回収されずに残っているかを月別に分析するのが「年齢調べ表」である。
毎月作成するのが大変であれば、3か月ごと、6か月ごとでもかまわないので必ず定期的に作成し、上司の承認を受けるようにする。これらによって、不良な顧客から早期に回収するにはどのような対策をとったらよいか、取引の中止を決断するべきか、あるいは貸倒れとして処理すべきかを判断するための重要な資料となる。
マイナス残高になっている場合は、売上計上モレか過入金ということになる。再度、納品書および請求書で確認する。


売掛金の年齢調べ表の活用例
たとえば、ある月末の売掛金残高について、次のような年齢調べ表が作成されたものと仮定してみる。




合計額の500万円は当然に会計帳簿の売掛金と一致していなければならない。
A社に対しての売掛金の内容を調べると、前月すなわち1か月以内に売り上げた金額である32万5,000円と、その前月に売り上げた17万5,000円が未回収であることがわかる。
A社の場合、売上計上月の翌月に入金されるのが通常だとすると、前々月分の17万5,000円について回収が遅れているので、その原因を調査する。月末近くに請求書を発送したため、A社での仕入計上は、翌月回しになっている可能性がある。
B社の場合、回収サイトと比較して入金が遅延していないか確認する。
C社の場合、金額が小さいため値引きの計上もれがないか確認する。


<< IT活用も大きな力に >>

前提はタイムリーな入力
売掛金管理において、ITの活用が重要になってくる。コンピュータを使った売掛債権管理・契約管理ができるようにするためには、取引先と契約するつど、また債権や債務が発生したつど、迅速かつタイムリーにコンピュータに入力しておく必要がある。


営業と経理の数値の合致
売掛金の回収の消込みは、営業部門の業務であり責任だが、最終的に営業部門の売掛金台帳と経理システムの会計帳簿は金額的に合致しなければならない。
しかしながら、現実的には様々な原因から差異が生じかねない。その例をあげると次のとおりである。
  1. 販売システムと経理システムの結合方法の欠陥
    業務用コンピユータシステムは、受注から回収まで処理する販売仕入システムと、経理決算を行なう経理財務システムの双方が、それぞれ別のシステム・ソフトで並行して動いているケースが少なくない。
    売上高計上の経理仕訳は、販売仕入システムから自動的に展開仕訳されるのが理想であるが、システムによっては、販売仕入システムの売上データ月次合計額を手作業で、月1回、振替仕訳するケースもあり、この場合、販売データと経理データが手作業で分断されるため、ミスが生じる余地が出てくる。
  2. 販売システムの欠陥
    販売システムの受注入力画面で、受注ごとに数値を入れていくが、入金額や売掛金残高欄が画面に表示されている方式の場合、営業の担当者が誤って残高金額に手を加えるか、または故意に手を加え修正するケースがある。
    いずれにしても、営業と経理の売掛金の帳簿は、定期的に照合チェックし、差異が発生した場合、タイムリーに原因を究明し、解消する必要がある。

著者:木村 隆(公認会計士・税理士)
監修:税理士法人メディア・エス
2013年4月末現在の法令等に基づいています。