ビジネスわかったランド (経理)
売上、売掛金の管理
回収不能となったときの処理は
債務者が破産等の法的な清算手続きをとっている場合はそのまま貸倒れとして損金処理すればよいが、それ以外の場合は「回収不能証明書」を入手して貸倒処理する。前回のアジア通貨危機の際に、東南アジアのある国の政府機関に対する不良債権を抱えている顧客があった。債権者はもちろん日本企業であり、取引に際しては政府機関だからということで、十分な保全措置もとらずに取引を行なっていた。しかし、東南アジアに端を発した通貨危機は、東南アジアの経済をあっという間に疲弊させ、未曾有の不況に陥れ、その国の経済も一時、麻痺状態になっていた。金融機関を含め、一般の事業会社も次から次へと倒産していた。
債務者も法的な破産は申請してないが、事実上業務を停止し倒産状態にあった。当然、債務者は、通貨危機を理由に開き直り、現地の Collection Agency もすっかりお手上げで、回収は不能ということで終了されてしまった。債権者も予想していたことであったが、税務償却用の資料として回収不能証明書の発行を求めた。
どう貸倒処理するか
回収不能証明書というのは、債権が回収不能であることを、調査機関や Collection Agency が客観的に証明する書類のことである。日本の国税庁が一般的に債権を回収不能として、貸倒れの損金算入を認めるのは、債務者が破産等の法的な清算手続きをとっている場合である。しかし、上記の場合は、政府機関は存続しているだけに一筋縄ではいかず、複雑な状況であった。あらゆる角度から徹底的な検証を試みて、結果的に無事に回収不能証明書を発行することができたが、同国に国家破産制度があれば、もっとスムーズに処理できていたはずである。
国家破産制度が確立すれば、債権者としても債権放棄、債務の繰り延べなど、債務者の再建に向けた協力体制がとりやすくなるだろう。もちろん、法的手続きということでの損金処理も行ないやすくなる。アジア通貨危機という特別な理由は別としても、新興市場国や発展途上国の政府に対する与信管理は、カントリーリスクの分析や、十分な保全措置が必要である。日本の政府機関と取引する感覚では痛い目にあう。
回収不能証明書の作成ケースと記載内容
回収不能となってしまった場合は、貸倒れ費用を損金として処理できるように「回収不能証明書」の活用をお勧めしたい。
この回収不能証明書は、全世界にネットワークをもつCollection Agency や弁護士と連携をとり、債権回収の可能性に関する調査、分析を行ない、海外不良債権の回収が不可能であることを第三者として客観的に証明するものである。
証明書といっても公的な書類ではなく、あくまで第三者が客観的に調査、分析した報告書である。対象国は、共産圏や紛争のある地域を除く全世界で、調査期間は通常1~2か月かかる。
主に、次の2つの用途で日本企業に利用されている。
・貿易保険の終了認定を受けるための資料として
・無税償却の適用を受けるための第三者の回収不能報告として
実際に回収不能証明書を活用するのは、次のようなケースである。
<ケース(1)>
ITバブル崩壊後、10年以上の信頼関係があった米国の代理店が、突然支払いを滞らせ始め、連絡もとれなくなった。会社の存在自体の確認がとれない。
<ケース(2)>
直接貿易先のギリシャで輸出代金の回収が遅延し、債務者は倒産と噂されているが、現地にネットワークがなく、事実関係を確認できない。
<ケース(3)>
国内の融資先企業が自己破産を申請し、担保にとってあった売掛債権を取得した。そのなかに南米向けの不良債権があることが判明した。関連資料も少なく債権債務の存在さえもわからない。
なお、回収不能証明書の記載内容は、次のような項目である。
1、Purpose(目的)
2、Country Credit Risk(カントリーリスク)
3、Company Profile(企業概要)
4、Transaction in Issue(取引概要)
5、Financial Condition(財務状態)
6、Management(経営陣)
7、Current Investigation(最近の調査結果)
8、Conclusion(結論)
著者
牧野 和彦(ナレッジマネジメントジャパン株式会社代表取締役、与信管理コンサルタント)
2007年12月末現在の法令等に基づいています。
債務者も法的な破産は申請してないが、事実上業務を停止し倒産状態にあった。当然、債務者は、通貨危機を理由に開き直り、現地の Collection Agency もすっかりお手上げで、回収は不能ということで終了されてしまった。債権者も予想していたことであったが、税務償却用の資料として回収不能証明書の発行を求めた。
どう貸倒処理するか
回収不能証明書というのは、債権が回収不能であることを、調査機関や Collection Agency が客観的に証明する書類のことである。日本の国税庁が一般的に債権を回収不能として、貸倒れの損金算入を認めるのは、債務者が破産等の法的な清算手続きをとっている場合である。しかし、上記の場合は、政府機関は存続しているだけに一筋縄ではいかず、複雑な状況であった。あらゆる角度から徹底的な検証を試みて、結果的に無事に回収不能証明書を発行することができたが、同国に国家破産制度があれば、もっとスムーズに処理できていたはずである。
国家破産制度が確立すれば、債権者としても債権放棄、債務の繰り延べなど、債務者の再建に向けた協力体制がとりやすくなるだろう。もちろん、法的手続きということでの損金処理も行ないやすくなる。アジア通貨危機という特別な理由は別としても、新興市場国や発展途上国の政府に対する与信管理は、カントリーリスクの分析や、十分な保全措置が必要である。日本の政府機関と取引する感覚では痛い目にあう。
回収不能証明書の作成ケースと記載内容
回収不能となってしまった場合は、貸倒れ費用を損金として処理できるように「回収不能証明書」の活用をお勧めしたい。
この回収不能証明書は、全世界にネットワークをもつCollection Agency や弁護士と連携をとり、債権回収の可能性に関する調査、分析を行ない、海外不良債権の回収が不可能であることを第三者として客観的に証明するものである。
証明書といっても公的な書類ではなく、あくまで第三者が客観的に調査、分析した報告書である。対象国は、共産圏や紛争のある地域を除く全世界で、調査期間は通常1~2か月かかる。
主に、次の2つの用途で日本企業に利用されている。
・貿易保険の終了認定を受けるための資料として
・無税償却の適用を受けるための第三者の回収不能報告として
実際に回収不能証明書を活用するのは、次のようなケースである。
<ケース(1)>
ITバブル崩壊後、10年以上の信頼関係があった米国の代理店が、突然支払いを滞らせ始め、連絡もとれなくなった。会社の存在自体の確認がとれない。
<ケース(2)>
直接貿易先のギリシャで輸出代金の回収が遅延し、債務者は倒産と噂されているが、現地にネットワークがなく、事実関係を確認できない。
<ケース(3)>
国内の融資先企業が自己破産を申請し、担保にとってあった売掛債権を取得した。そのなかに南米向けの不良債権があることが判明した。関連資料も少なく債権債務の存在さえもわからない。
なお、回収不能証明書の記載内容は、次のような項目である。
1、Purpose(目的)
2、Country Credit Risk(カントリーリスク)
3、Company Profile(企業概要)
4、Transaction in Issue(取引概要)
5、Financial Condition(財務状態)
6、Management(経営陣)
7、Current Investigation(最近の調査結果)
8、Conclusion(結論)
著者
牧野 和彦(ナレッジマネジメントジャパン株式会社代表取締役、与信管理コンサルタント)
2007年12月末現在の法令等に基づいています。
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