ビジネスわかったランド (経理)

在庫管理

効率的な在庫管理をする手立ては
 在庫管理の効率化を進めるためのポイントは、その棚卸資産の内容、業種や経営形態等によって千差万別だが、そのなかにも共通的な日常の管理ポイントがある。また、所有する棚卸資産の品目別の重要度を判断し、重要度の高い品目にはより管理を強化し、相対的に重要度の低い品目には管理の密度を引き下げることで、全体として管理キャパシティを維持しながら管理の効率化を図ることができる。

<< 効率化のための日常の実務手続き >>

発注の際のポイント
在庫の発注が決まれば、その価格と納期が問題となる。これらは、複数の業者との交渉で決定されるが、新規発注では販売の市場動向や需要予測をベースに、より戦略的な立場が重視される。
在庫の発注に当たっては、自社の在庫の内容や種類により、在庫管理にポイントをおいて定期発注するもの、そのつどの当用買いで間に合うものなどを区別する。



保管の際のポイント
在庫そのものの物理的な維持保管状態を良好に保つ手段を講ずる。置場の整備、見誤りをなくする区画・配置・採光・照明等の確保、保管数量の把握が容易となるパレット等の利用やハイ積みの統一、現品カード等の添付、適当な温度や湿度の維持、虫害や鳥のフン等の防除等々、実情に応じた対策を打つ。
倉庫担当者は、定期的に棚卸を実施し、数量確認を行なうとともに、保管中の物品の品質等の状況を把握する。長期滞留品や劣化・損傷などによる不良品などが発見されれば、定期的またはタイムリーな報告を管理者に行なうよう、制度として実施する。

在庫の移動記録を継続する
在庫の入荷から出荷に至る移動状況を数量(または金額を含む)につき在庫帳等として継続して記録する。継続記録があれば、いちいち在庫を確認するまでもなく現状が把握でき、また発注その他在庫をめぐる業務のうえからも利点が多い。
ただし、入荷・出荷段階での記録誤りも多く、せっかくの継続記録が役に立たないケースもある。根気よく継続記録を続けるとともに、現品との照合頻度を増やし、差異の究明を行なっていけば定着も早い。こうした作業は、パソコンソフトの利用で以前よりは継続しやすくなっている。

<< 在庫を重要度に分けて管理する >>

ABC分析で効率化を図る
在庫品目の重要度をAからCまでにランク分けし(A~Dでもよい)、それぞれの重要度に応じた管理を行なうための分析手法に「ABC分析」がある。

在庫管理を進める際に、ABC分析が求められるのは、主として在庫品の重点的な発注と在庫コストの削減を意図する場合であり、管理目的としてはコストを考慮した適正在庫の実現にある。
重要度判定のための手続きは次のとおり。
1.ABC分析書を作成する
・品目ごとの年間使用金額を調査する。上の表では、品目イ~リまでのそれぞれにつき、「使用量×単価」で計算している。
2.年間使用金額の多いものから順次並べて一覧表を作成し、その累計額を計算する。
品目ロは、5,200+2,300=7,500円
品目ハは、5,200+2,300+1,610=9,110円
以下、同じ要領で記載する。
・累計使用金額の構成比率を算出する。
品目イは、5,200÷11,000=47.3%
品目ロは、7,500÷11,000=68.2%
以下、同じ要領で計算する。
3.ABCのランクづけをする
管理の重要度の最も高いAランクには、構成比率82.8%までの品目イ、ロ、ハとし、並程度のBランクは構成比率95.4%までの品目ニ、ホ、重要度の低いCランクには品目ヘ、ト、チ、リが含まれる。
この場合の構成比率とランクづけは、個々の企業の実情と試行錯誤を積み重ねて決定するが、70~80%を占める品目はAランクとされる。
4.ランクごとの管理目標を定める
・Aランク=重要度が高く、在庫量に最も注意が必要である。継続記録に基づく帳簿棚卸は不可欠で、現品との照合も頻繁に行なう必要がある。倉庫内での移動も多く、保管場所や位置等から考えることも大切。
発注に際しては、精度の高い定期発注方式による。発注期間を可能な範囲で短縮し、回転率を高めることで、在庫の縮減が可能となる。滞留在庫に対する監視の目を厳しくし、営業部門や製造部門への迅速な対応を迫る。
・Bランク=帳簿棚卸を実施し、継続記録で管理する。現品との照合は、適宜定期的な期間を設定して行なう。発注に当たっては、定期発注方式を採用し、その他はあらかじめ定めた一定量を補充する定量発注方式により行なう。
・Cランク=管理重要度の低い棚卸資産であり、単位当り在庫コストも割高となるため、現場での現品カードのみで管理したり、場合によっては目による確認を中心とする。発注に当たっては、当用買いを増やす。

著者
渡辺 昌昭(公認会計士・税理士)
監修
税理士法人メディア・エス
2013年4月末現在の法令等に基づいています。