ビジネスわかったランド (経理)

在庫管理

不良品、滞留品の処分は
 不良品や滞留品は、抱えていても在庫費用がかかるだけである。したがって、早期に処分することが望ましいが、バーゲンするにしても廃棄するにしても、税務上の証拠を残しておくことが必要である。

<< 滞留品等の処理方法 >>

不良品、滞留品は迅速に処理する
購入したり製造された棚卸資産の不良品や滞留品は、早期に販売をも含めた処分の検討が必要となる。仕入先等へ返品等できるものは直ちに返品を行ない、また原材料等で転用が可能な物品は優先して利用する。販売できるにしても通常価格で無理な場合は、販売価格や販売先、販売方法や販売時期等を検討する。最終的に以上のいずれも不可能な場合は廃棄処分にすることになるが、いずれの方法にしても迅速な決断と実行がポイントとなる。そのタイミングや方法によって行なうべき会計処理も異なり、税務処理にも影響するため注意が必要である。

プラス効果につながる処分方法等を考える
滞留品のなかには、シーズン物や流行商品等で、規格品質上の問題がない物がある。あるいは、適切な値引によって十分販売可能な商品もあろう。
これらは、とくに販売先、販売方法や販売時期等に留意して売却すれば、その品物では損をしても、全体としては他の商品を含めた販売促進につながったり、顧客対象を広げる効果を生じ、プラスとなることがある。
福袋・お年玉商戦や年末商戦で、店頭で滞留品を一掃させる販売、特定顧客先へのダイレクトメールによる特売、常時赤札コーナーを設け顧客を呼び寄せる販売方法など、自社の商品の特色に応じた適切なセールスが求められる。

値引販売をするとき
不良品や滞留品を含めた二級品の販売には、通常、値引処理が伴う。値引の実施には、迅速な対応も必要と考えられるため、あらかじめきちんとした社内の権限と責任に基づくルールづくりが必要で、そのつどバラバラに販売担当者の独断で進めることのないようにしたい。企業のイメージを損ねるだけでなく、不正が発生する温床ともなりかねないからである。


<< 税務対策のためのポイントは >>

評価損の計上が認められるには
商品や製品等が滞留した状態で決算を迎えたため、評価損を計上したいと考えても、税務上では、次表のような事由で期末の処分時価が簿価を下回ったときに、その金額を限度として評価換えが認められる。
平成19年度より、低価法による評価方法も認められ、低価法の評価方法を税務署に届け出、原価法により評価した価額と時価(正味売却価額)のいずれか低いか額を評価額として評価損を計上できることとなった(洗替方式のみ)。

税務対策としての特売という方法も
上記のように、評価換えに対する税務上の要件はかなり厳格で、その対策として最もよい方法は、その事業年度内で現実に販売し、損失を実現させることである。決算直前のバーゲンセールは税務対策の1つともいえる。
このためにも、本番の実地棚卸は期末日に行なうものとして、主として商品内容のチェックのための棚卸を、本番の事前準備を兼ね、決算日の2か月ほど前に行なっておくのも有効である。
ところで、年度末の様々なバーゲンで、商品を実際に販売先へ納入することなく自社内に預かり保管する「預かり売上」とすることがある。やむを得ないケースであろうが、バーゲンのうえに保管コストを負担する販売は、企業の健全性を損なうおそれがある。
それだけでなくコスト割れ等にでもなれば、税務上も実際の販売かどうかの追及が厳しくなることも考えられる。
一方、バーゲンセールで行なわれる特別な値引に対しても、場合によっては税務対策が必要となる。あまりに大幅な値引率は、売上高の偽装工作として疑われるためで、これに対しては、特売時の状況を示すチラシや写真を残したり、入金状況も他の一般商品とは区別して特売分として把握できるレシートを作成するなどの対策が必要である。

廃棄処分のポイント
販売等のできない棚卸資産は、最終的に廃棄や除去処分することになるが、この点をめぐって税務調査の際に問題とされることも多い。
まず、廃棄処分した事実を明らかにしなければならない。第三者へ売却した資金隠しと見られないためにも、商品等の廃棄状況を示す証拠が必要である。廃棄した棚卸資産の内容を明らかにし、廃棄に至る事情等を記した内部書類を作成する。
次に、実際に廃棄時の模様を撮った写真や取扱業者の証明書や請求書等を保存しておき、状況を説明できるようにする。
屑等で販売した場合は、その明細を添付し、取扱業者のサインをもらっておけばよい。
棚卸資産を経理上廃棄処分し、損失処理したにもかかわらず、
1.本来の利用方法では無理だが、部分的には利用できる可能性ありとして保管する
2.廃棄が困難な棚卸資産であり、業者に引取りを依頼したが時間がかかる
3.つい業務に追われて除去処理が遅延した
など、何らかの理由でそのまま廃棄せずに残されている簿外資産を税務調査で発見されたときは、悪質な脱漏があったものとして重加算税が課せられるおそれもある。

著者
渡辺 昌昭(公認会計士・税理士)
監修
税理士法人メディア・エス
2013年4月末現在の法令等に基づいています。