ビジネスわかったランド (経理)

在庫管理

過剰在庫防止の手立ては
 過剰在庫を払拭する方法としては、デッドストックをなくすことが先決であり、そのうえで発注方式を変えるなど適正な手を打つことが肝要である。

<< 過剰在庫対策は経営全般に関する戦略 >>

過剰在庫防止の大切さ
在庫の増加は、倉庫料、管理人件費、金利その他の管理コストを増大させ、またキャッシュ→在庫→売掛金→キャッシュという企業資金サイクルの停滞を発生させるので、それだけ資金繰りに与える影響も大きく、経営の生死を決するともいえる。
さらに損益面でも、品質の劣化や経済的な陳腐化による損失発生の可能性を高め、資金や損益両面から経営を圧迫する要因となる。
そこで、こうした過剰な在庫を防ぐための考え方や手法が大切になってくる。

経営者がトータルで損得を見る
販売担当者にしてみると、得意先との対応において、より多くの種類や量の在庫を持つほうが営業チャンスが増加する。購買担当者は、購入ロットの量を増やせば割安な仕入ができるし、頻繁な購買処理は事務手続きが煩雑になる。このような個々の立場に立った理由を聞けば、確かに頷ける点もある。倉庫担当者は両者の主張のはざまに立ち、確たる意見もないまま在庫を受け入れる。
これでは在庫が増加するのは目に見えている。それで営業が効率よく回転するならともかく、資金固定化等のマイナス面も大きい。そのため、経営全体としての判断が必要となる。
要は、在庫量の決定は、個々の担当者レベルの問題ではなく、基本的に経営全体に関わる戦略であり、トータルで損得を見る必要がある。
金融機関の融資継続の条件として、いっそうの在庫圧縮を求められ、頭を抱えた経営者もいるが、外部から指摘される前にしっかりと自社の戦略を打ち立て、在庫に対応すべきなのである。

個別の棚卸資産ごとの適正在庫を把握する
単純に業界の平均的な商品・製品等の在庫回転期間を参考に在庫量を決めるのから一歩進めて、戦略的な立場から個別の棚卸資産ごとに適正在庫を把握すべきである。
会社に対する貢献を、保管や物流に要する経費等をも含めた利益率や換金性などから測定し、持ちすぎず品切れを起こさない効率のよい在庫日数の把握に努める。

<< 在庫調整・圧縮のポイント >>

発注方式を見直す
品切れを起こしたり、棚卸資産の滞留を生じさせるのは、不適切な発注内容、量、時期などが主たる原因である。したがって、自社の棚卸資産の特色に応じた発注方法を確立する必要がある。
なお、品名、サイズ、色合い等、単純な発注ミスといった初歩的な誤りを皆無にするためのチェックシステムも大切である。

デッドストックをなくす
企業内の倉庫には、ほとんどの場合、多かれ少なかれ長期滞留品(デッドストック)が残されている。特定顧客向けの商品で見込み違いから過発注した残品、シーズンものや流行ものの乗り遅れ品、発注や受注誤りで抱え込んだ在庫等々、デッドストックの発生する原因は様々である。
これらは、いわば企業内の垢のような存在から、やがては経営そのものに関わる重大事に至るおそれがあるにもかかわらず、案外軽視されることが多い。
確かに在庫品が何らかの理由で滞留するのは、企業経営上、ある程度はやむを得ない面がある。しかし、長期間販売されない商品や、購入してから消費速度の鈍い原材料等の長期滞留在庫は、適正在庫と相容れない。
したがって、問題は、デッドストック化する以前に、迅速に手が打てるかどうか、その体制やルールをつくり、デッドストックをゼロにするという経営トップ以下の強い意思があるかどうかである。
経費のかかる外部倉庫を使わず自社内の倉庫に保管していても、企業に貢献する在庫のスペースを占有することで、目に見えないロスを生じさせているし、在庫である以上、管理するための費用も必要である。

倉庫担当者がキーマンという認識を
第一線の営業マンに比べると、倉庫担当者は企業でも重要視されることは少ない。ただ年輩であるからといった理由だけで、倉庫に配属されるケースもある。中小企業では、経費減らしのため倉庫に確たる担当者を置かず、営業担当者等が兼務することも多い。
しかし、こういった考えは改められるべきであり、デッドストックが発生すれば1人の人件費くらいでは収まらない。営業部門や製造・購買部門に定期的に滞留状況を指摘し、遠慮のない発言ができる倉庫担当者が必要である。さらに経営責任者のバックアップのある企業では、在庫圧縮に苦労することは少ない。
次に、倉庫担当者は、保管のための費用が具体的にどれだけ必要で、ムダな投資によって金利が嵩んでいるといったことを数字で示し、ラインに提言しなければならない。逆に在庫圧縮が進んだ場合は、対前期比等で在庫維持費の軽減状況を示すなど、圧縮効果をアピールすべきである。

得意先等との関係改善も必要
在庫は一面で商売の力関係を表わすバロメーターでもある。「在庫は力関係の弱いところに滞留する」という法則がある。したがって、自社が得意先や仕入先の倉庫代わりに使われていないか、過去の惰性に流されていないかなど、基本的な経営姿勢が問われていると受け止め、問題があればそうした得意先等との関係改善のための努力も必要となってくる。

著者
渡辺 昌昭(公認会計士・税理士)
監修
税理士法人メディア・エス
2013年4月末現在の法令等に基づいています。