ビジネスわかったランド (経理)

経営分析

収益性分析の仕方は
 資本利益率や総資本経常利益率などが収益性を図る基本的なものさしだが、売上高経常利益や資本の回転率、回転期間も合わせて見ることが大切である。

収益性=会社の力を測る
会社の儲けの力、つまり収益性を測るのは、資本利益率である。

上の算式の分子の利益や、分母の資本に何を用いるかについてはいろいろあるが、中でも代表的な指標は総資本経常利益率である。

分母の総資本はすべての投下資本を表わし、分子の経常利益は、異常な、特別な損益を除いたところの経常利益である。会社の営業上の収益力を最もよく表わす。
経営分析の目的によっては、次のように別の指標を見る必要がある。

なお、経営資本とは、総資本の中で営業活動に参加していない資産、有休土地とか、貸与設備等を差し引いた営業用の純投資額をいう。

自己資本利益率は、株主資本利益率、または「ROE(rate of return  equity)」ともいう。株主や企業所有者の投下資本に対する利益率である。
この比率は、分子はともかく、分母の自己資本が小さければよくなる。このことは、自己資本を充実して、企業の安全性を高めなければならないということと矛盾する。したがって、自己資本比率をみて秤量しなければならない。

これは、会社の規模に関係なく企業間比較ができる指標で、配当余力も見ることができる。
以上、資本利益率にはいくつかあるが、経営分析の目的が経営改善にある場合には、総資本経常利益率が最適である。

総資本経常利益率の分析
総資本経常利益率を分解すると、売上高経常利益率と総資本回転率に分解できる。その関係は次のとおりである。

したがって、資本利益率は、売上高経常利益率が高いほど、総資本回転率が高いほど、よいといえる。
では、いったい総資本経常利益率はいくらあればよいのか、一応、8%以上なら良、3~7%なら普通、3%未満は問題ありである。

利益率を見る
売上高経常利益率は、損益計算書の利益区分ごとにみる。

つまり、売上総利益率が高くても、一般管理販売費が多ければ、営業利益率は低く、売上営業利益率は高くても、支払利息等の営業外費用が多ければ、売上高経常利益率は低いというように、より詳しい収益性の検討ができる。

回転率をみる
総資本回転率は、投下資本の効率性を示す指標である。総資本回転率は、次のように資産の区分ごとに細分して見ることができる。

これらの指標は、安全性にも関係している。企業の競争力が低下し、売上が減ると、無理な販売が行なわれて、売掛金の滞留が起こる。回収不能な売掛債権が発生して、貸倒処理をしないでいると、売掛債権回転率が低くなる。
在庫管理がよくない会社では、商品等の棚卸資産は多くなる。中には、死蔵品(売れる見込みのない商品)が発生する。棚卸資産回転率は低くなる。過大な設備投資や、不況の際の稼働率低下、関係会社に対する長期貸付等の焦付の結果、固定資産回転率は低くなる。
これらはすべて、総資産回転率を低くして、総資本経常利益率を悪くする原因である。

回転期間で見る
前述の売掛債権回転率等を回転期間で見ることもできる。

回転期間は、回転率とは分子・分母が反対になっている。なお、回転期間を日数で算出する場合には分母の「÷12」に代えて「÷365」とすればよい。

回転期間は短いほどよい
回転(新旧交替、新陳代謝)を数字で表わすには、回転率(1期間における回転の回数)と回転期間(1回転に要する期間)のどちらでもよいが、回転期間には1回転するのに何月(何日)かかったかという、手待時間あるいは費消時間という意味があり、単刀直入に回転期間を算出して、それを見て、計画・改善に利用できる。

著者
八田 数夫(経営コンサルタント)
監修
税理士法人A.Iブレイン
2013年3月末現在の法令等に基づいています。