ビジネスわかったランド (経理)

事務組織と記帳

受取領収書の税務上の取扱いは
税務調査等では疎明資料となるが、基本的に印紙税の対象として課税される。具体的には、次のとおり。

<< 領収書の要件 >>

法定記載事項
受取書・領収書等と記載されていなくても、受取事実を証明するために、請求書やお買上票等に「代済」「相済」「了」などと記入したものや、レジペーパーなどその作成の目的が「金銭または有価証券の受取事実」を証明するものは、「領収書」と同じ扱いとなる。
したがって、たとえ名刺の裏やメモであっても、金銭等の受領事実を証明するために作成したもので、証明のために必要なこと(法定記載事項)が記されていれば、領収書と同じである。
すなわち、「いつ、誰から、いくらを、何のために」受領したのかが記されていなければならない。具体的には、年月日・受領相手・金額・摘要(○○商品とか飲食代等)、そして作成者の住所・名称である。これらが記載されていれば、どのような物でも証拠証券としては十分である。
また、領収書は、受領事実を証明するために作成された証拠証券であるから、領収書を受け取った側からいえば、「払った事実」を証明する証拠証券でもある。したがって、税務調査のときに、支払った経費などの疎明資料として、非常に便利な資料となるのである。

疎明資料として「上様」宛ては不十分
税務調査の疎明資料という観点から、領収書をもう少し詳しく検討してみよう。
よく「領収書がないと経費にはならない」といわれる。
税務署の職員は、実際の取引の現場にいるわけではない。したがって、経費として使ったのであれば、その事実が証明できる証拠証券が必要となるわけである。その代表が、領収書である。
ところで、領収書には「上様」としか書いていないものが見受けられるが、これは「いつ、誰から、いくらを、何のためにもらったのか」を記載すべき受領の事実を証明する証拠証券としては、金銭等を誰からもらったのかが確認できない。したがって、宛先名の原則は、正式な社名・担当者名が記入されていることが肝要である(ただし、通常使用し、世間一般に通用しているものであれば、アルファベットの略称等も認められる)。
レジペーパー、いわゆるレシートも、その作成の目的が金銭または有価証券の受取事実を証明するものは「領収書」と同じ扱いとなると前述したが、これは金銭等を受領した側からの見方である。
金銭等を支払った側がその支払いの事実を証明しようとする場合には、金銭等を払った側(支払者である自分)の名称が記載されていないものは、証拠証券としてはやはり不十分であるといえよう。
もっとも、金額が少額で業務に必要と思われる物を購入しているようなレシートについては、払った事実を証明する証拠証券としても十分であると思われる。また、税務調査でも認められている。

<< 領収書がもらえない場合 >>

領収書がない場合、もらえない場合が時には生じる。この場合は、税務上、経費とは認められないのであろうか。
税務調査の疎明資料という観点からの領収書とは、払った事実を証明するためのものであるから、払った事実が証明できれば、いわゆる「領収書」は本当はなくてもよい。
「おや?」と思われるかもしれないが、銀行振込によって金銭等を受領したときのことを思い起こせば、領収書を作成しない場合がほとんどでである。なぜ作成しないのかといえば、支払った側から要求されないからである。なぜ支払った側が要求しないのかといえば、銀行振込の場合は領収書がなくても、その支払いの事実を証明できるからである。
逆に銀行振込でもなく、領収書もないような場合にどうすればよいのかといった問題がある。
たとえば、少額の電車賃や公衆電話での電話代の領収書をとるのはむずかしいであろう(最近は携帯電話がほとんどで、公衆電話代は少ないと思われるが……)。
さらに、いわゆる慶弔費といわれる出費も、現金で支払うにもかかわらず、領収書はもらいにくい。
これらのうち電車賃や電話代は、その事実を証明するために、日報等に具体的な金額と、どこに行ったのかやどこに電話したのか等をきちんと記録しておくことが必要であろう。
また、慶弔費等については、招待状や礼状を保管しておき、社会通念上(常識的に)妥当な金額であれば、領収書等がなくても、支払いの事実の証明となる。
要は、支払いの事実を証明する税務調査の疎明資料としては、支払ったという事実が証明できればよいのであって、「領収書でないと絶対にいけない」というものではないのである。

<< 受取領収書にかかる印紙税 >>

印紙が貼付されていない受取領収書
印紙税の納税義務者(税金を納める義務のある人)は、印紙税を課税される文書の作成者である。
受け取った領収書に本来必要である印紙が貼っていなかったような場合には、作成者に納税義務があるので、印紙を貼ってもらうよう要求しよう。代わりに印紙を貼付して、作成者に代金を請求することも可能である。
一方で、印紙を貼っていなければ支払いの事実を裏づける証拠証券とならないかというと、そういうことはない。当然、証拠としては認められる。

クレジット支払時の領収書は
ここで意外に誤解されている点が、クレジットカード支払時の領収書である。次の表は、受取書(領収書)にかかる印紙税の税率表の部分をピックアップしたものである。

これにより明らかなのは、「課税物件」はあくまでも「金銭または有価証券の受取書」である。しかし、クレジットカード取引は、現実に金銭の授受を伴わない。したがって、クレジットカードにより支払いを受けた際の領収書で、クレジットカードによる代金決済であることが明らかにされているものは、印紙税はかからないのである。ただし、領収書に「クレジット決済等」と明記しておく必要がある。

非課税基準の3万円に消費税は含まれるか
前掲の表からもわかるように「3万円未満の領収書」は非課税となっているが、ここで問題となるのが消費税との絡みである。
たとえば、29,000円の商品を販売すると、消費税が1,450円かかる。お客から30,450円を受領して領収書を切るときに、単に合計だけの記載であれば、印紙税がかかる。しかし、「消費税の金額が区分記載されている場合は、消費税の金額は、記載された受取金額に含めない」とする税法の規定があるので、次のように記載すれば印紙税はかからない。


営業に関係しない受取書とは
前掲の印紙税の税率表によれば、「営業に関係しない受取書」は非課税となっている。それでは、営業に関係しない受取書とは、どのようなものを指すのであろうか。具体的には、次の5つを挙げることができる。
(1) 資本金に絡む取引の領収書
いわゆる会社の行為は、基本的には営利行為であるが、例外として、「株式払込証拠金領収書」等の資本金に絡む取引の場合は、営業に関係しない受取書となる。
(2) 公益法人が作成する領収書 
財団法人等の公益法人は、営業活動をしない。したがって、作成する領収書はすべて非課税となる。
(3) 協同組合と出資者との間の金銭収受の領収書
協同組合等の法人の場合、出資者との間での金銭等の収受に関する領収書は、営業に該当しない。もちろん、それ以外の金銭等の収受は該当する。
(4) 親睦団体等との収益事業に関係しない金銭収受の領収書
人格のない社団(マンションの管理組合・自治会・親睦団体等)については、収益事業に関係しない金銭の収受についての領収書は営業行為に該当しない。
(5) 個人で事業(商売)ではなく行なわれる金銭収受の領収書
たとえば、個人が自分の不動産を売却して金銭を受領したときなどに発行する領収書は、非課税である。
そのほか、医師(歯科医師)や弁護士・税理士等のいわゆる士業も営業行為とはみなされていないので、発行する領収書は印紙税がかからない。

仮領収書の扱いは
印紙税においては、非課税物件として記載されている領収書以外は、すべて課税される。したがって、金銭または有価証券の受取書であれば、仮領収書であろうと、請求書に「代済み」と印を押したものであろうと、便箋に走り書きしたものであろうと、すべて印紙税の課税対象となる。
では、仮領収書を作成したうえで正規の領収書を発行した場合はどうなるのかというと、両方とも印紙は必要となる。
印紙税というのは、作成された文書にかかる税金である。同じ物でも何枚も作成すれば、作成された分だけかかると考えるのが印紙税法の考え方である。
よく契約書の最後に「本契約書を2通作成し甲乙双方が保管する」と記載されている場合があるが、この場合は2通とも印紙を貼付する必要がある。しかし、「本契約書を1通作成し、原本は甲が保管し、そのコピーを乙が保管する」というように記載すれば、印紙は1通分だけで済む。

著者
高橋 節男(税理士)
監修
税理士法人メディア・エス

2013年1月末現在の法令等に基づいています。