ビジネスわかったランド (経理)

経費の支出管理

販売促進費の管理は
 販促物の使用状況表等でムダを抑えるとともに、得意先ごとに費用効果を見極め、戦略的見地による判断も加えて対応策を決定する。

販売促進費とは
販売促進費(販促費)とは、販売担当者の販売活動を直接・間接に助成し、売上高を伸ばし、販売能率を高めるために用いる販売関連費用の総称である。この中に広告宣伝費を含めるかどうかは議論のあるところであるが、一応、広義の意味でとらえ、ここでは含めて考える。
販促費については、他の支出項目と同様、予算に基づいて管理する。経理としては、予算と対比させながら実際の販促費の支出状況をチェックし、適宜シグナルを出すのが基本である。
このように基本的には同じだが、むずかしいのは、他の費用とは異なり、たとえ予算をオーバーしているからといって、単純に削らせればすむといった費用ではないという点である。

販売部門での管理を促す
販売担当者の十分な理解も得ないまま、予算の関係で削るというのでは、当の販売担当者のやる気を削ぐことになるのはもちろん、得意先の協力を得ることもむずかしくなる可能性が高い。
そうさせないためには、とくに販売部門にはきちんと説明して納得させ、販売活動に齟齬をきたさないようなフォローが必要となる。
具体的に、カタログやサンプルなどの販促ツールを例にとって考えてみよう。カタログやサンプルは、販売活動には不可欠ではあるが、一方で販売担当者の営業用の車の中やロッカーの中に結束されたまま放置されているといった状態が散見される。
これなどは、販売担当者の怠慢が原因であるケースもあろう。その場合は、所定の得意先等に配付し、有効活用するように指導・プッシュすることが肝要だが、必要数量以上につくり過ぎたケースも考えられる。
つくり過ぎについては、余る分には支障はないといった安易なつくり方はせず、数はきちんと見積もってもらうようにする。
また、販促物の使用状況表を作成することにより、ムダな使用と余分な作成がないかをチェックしたい。
とくに、次回からはそのデータを活かせるような処置をすることが必要である。

費用対効果の視点からチェック
販促費は、トータル金額が予算どおりかどうかで見ていくことも大切だが、単なる慣行として惰性的に支出するのではなく、効率的に使用されているかどうかを検証するのは、それ以上に重要である。
その手法の1つとしては、得意先別に実際に支出した販促費と売上の予算・実績を対比させ、双方のバランスをチェックするというやり方がある。
ただし、販促費については、たとえば交際費などのように得意先別にきちんと分けられるものと、広告宣伝費や交通費などのように得意先別に分けにくいものがある。この分けにくいものについては、訪問回数で按分するなど、一定の合理的な基準を設定して、とにかく販促費を得意先別に割り振るようにする。
こうして集計された得意先別の販促費実績は、売上高で割ったうえ、売上高1万円あるいは10万円といった単位当りの販促費額を導き出す。

集計結果に対しては戦略的見地による判断も必要
単位当りの販促費額は、同じ売上高を上げるのに、それぞれの得意先でどれだけの販促費がかかっているかを示すわけであり、平均値をとって比較すれば、販促費がかかり過ぎている得意先かどうかは一目瞭然となる。
もちろん、このデータは、あくまでも統計上の数値に過ぎない。市場や得意先は生きた存在であり、たとえ平均以上に販促費がかかっていても、その得意先はこれから伸ばしていこうという戦略的な見地から販促費を積極的に注ぎ込んでいる先であるかもしれない。
それはそれで大変重要なことであり、そのような目的で販促費が使われるということは、有効活用につながり、結果として販促費の管理目的にも合致するわけである。
問題は、そうではない得意先、すなわち、単位当りの販促費実績を見て、「何でここに、こんなに」というような得意先については、全体としての販促費の支出を抑える方向で、対応策を検討してもらうようにすべきである。

販促費の内容に踏み込む
販促費というのは、いくつかの販売関連費用の総称であるから、得意先別単位当り販促費額のチェックの結果、検討すべき得意先が抽出できれば、次は「販促費のなかの具体的には何の費用が原因なのか」について分析する。
分析の仕方は、販促費というくくりで用いたのと同様、単位当りの手法でも、もっと簡便なやり方でもよい。
特定の販促費用がピックアップできれば、それをどう削減していくかを検討することになる。
いずれにしても、経理としては、販促費支出の効率的な活用策はもちろん、客観的で詳細なデータを提供し、それを基に販売部門にまず金額的な面から見直してもらい、対策を考えてもらうように促すという姿勢が基本となろう。

著者
真鍋 誠良(公認会計士)
2012年7月末現在の法令等に基づいています。