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固定資産等の管理

リース契約締結から終了までの流れは?

ファイナンス・リース取引は、リース会社とユーザーとの間の「リース契約」、リース会社とサプライヤーとの間の「売買契約」、ユーザーとサプライヤーまたはメンテナンス会社との間の「保守契約」から成り立っています。このような内容をもつリース取引は、おおむね以下のような手順で、契約締結から終了にいたります。まず、これをひととおり見ておきましょう。


(手順1)営業マンの訪問
リース会社によっては、営業マンが直接ユーザーである事業者を巡回訪問して、リース契約を1つひとつ獲得していく例もあります。しかし、大半のリース会社の営業マンは、ユーザーではなくサプライヤーとなるべきメーカーやディーラーの事業所を訪問することが多いようです。
もちろん、ユーザー自身が直接リース会社に問い合わせ、後日営業マンがユーザーを訪問する場合もあります。


(手順2)リース物件のユーザーによる選定
ユーザーの側では、リースを利用する設備・物件の検討がなされることになります。このとき、サプライヤーが選ばれます。
サプライヤーが決まったら、メーカーやディーラーの営業マンがユーザーとの間で銘柄・仕様・数量・納期などについて交渉し、ユーザーが物件を決定します。
物件を決めたユーザーとしては、それを買い取った方がよいか、リースにした方がよいかを判断し、結局、リースによって導入した方が得策であると考えた場合は、いよいよリース契約の申込みをします。


(手順3)リース会社への申込みと審査
リース会社が選定され、申込みがなされると、ユーザーとリース業者との間で、リース料・リース期間・その他の条件について交渉が始まります。リース取引にはユーザーに対する長期の信用供与という側面があります。もし、ユーザーがリース期間中に何らかの事情によりリース料を支払えなくなった場合には、リース会社はその投下した資金を全額回収することができなくなります。ですから通常は、申込みを受けたリース会社は、ユーザーに過去3年分の貸借対照表、損益計算書および資金繰表などの資料の提出を求め、ユーザーの信用調査とその案件の審査を行います。審査は、ユーザーからの提出書類以外に民間調査機関の信用情報なども考慮して行われることもあります。
リース会社の審査は、原則として書面で行われますが、必要があればユーザーを訪問して経営者と面談などをする実地調査を行う場合もあります。継続して契約するユーザーに対しては、与信枠の範囲内であれば、このような審査手続きが簡略化されることもあります。
リース会社は、ユーザーだけでなく、サプライヤーに対しても与信判断を行う場合があります。これは、ユーザーとサプライヤーとの間に締結される保守契約をめぐるトラブルを未然に防止するためや、1つの物件を複数のリース会社と契約する「ダブル・リース」などの詐欺的行為を行う悪質サプライヤーを排除するためです。


(手順4)リース料の見積り
リース会社による審査の後、ユーザーとサプライヤーの間で決定された物件の価額を前提に、固定資産税・動産総合保険の保険料・リース会社の調達コスト・手数料などを考慮して、その案件についてのリース料の見積りがリース会社より提示されることになります。リース料は、物件の種類・法定耐用年数・価格支払条件・リース期間・ユーザーの信用などによって異なりますが、基本的には次のような構成になります。



(手順5)リース契約の締結
リース取引の条件が確定し、ユーザーの信用に不安がないとなれば、リース会社はユーザーとの間でリース契約を締結することになります。
リース契約書には、リース物件の機種・数量・搬入場所・リース期間・リース料・支払方法など、ユーザーとサプライヤーとの間で、あるいはユーザーとリース会社との間であらかじめ合意されたすべての事項が記載されています。そして、ユーザーとリース会社双方が署名・捺印します。契約の際に、リース会社は、リース契約上の債権を保全するために、原則として、ユーザーである事業者の代表者個人や関係会社などに連帯保証を求めることになります。
なお、リース期間の始期は、ユーザーがリース会社に発行する物件借受証記載の「借受日」となっていますので、リース契約成立の時点では、ユーザーにはリース料の支払い、リース物件の使用など契約上の権利義務は発生していません。


(手順6)物件の発注と売買契約の締結
リース会社とユーザーとの間でリース契約が結ばれると同時、あるいはその直後に、リース会社は、物件の売主であるサプライヤーに物件を発注して、売買契約を締結することになります。
通常、この売買契約では、リース会社からサプライヤーに物件の発注を行う「注文書」が発行され、これを承諾するサプライヤーからは「注文請書」が発行されます。標準注文書・標準注文請書では、リース会社がサプライヤーからの「注文請書」を受領した時点で売買契約が成立するとされています。
注文書・注文請書には、その売買契約にもとづいてリース契約が締結されたことと、ユーザーからのリース物件借受証の交付が前提となるものであることが記載されています。


(手順7)リース物件のユーザーへの納入と借受証の発行
売買契約にもとづいて、サプライヤーはリース物件をユーザーの指定する場所に直接納入します。通常の売買契約であれば、物件は買主へ納入されることが多いのですが、リース取引の場合は、買主であるリース会社の指定する場所、つまりユーザーのもとへ納入されるのです。
ユーザーは、納入された物件が自己の希望した規格・銘柄・仕様等であるかどうかを調べ(通常、これを検収といいます)、契約どおりのものであれば、「物件借受証」をリース会社あてに発行します。一般には、ユーザーはこのとき第1回のリース料を支払うことになっています。

物件借受証の交付は、ユーザーとリース会社双方にとって重要な法的効果を発生させることになります。その意味で、適正に作成された借受証を取得することは、手続き上、大変重要になります。
ユーザーにとっては、借受証を発行することによって、リース契約に定められたリース期間中、リース物件を自ら使用収益することができることになります。リース会社にとっては、借受証を受領することによって、リース物件引渡義務を完了させたことになります。
さらに、このとき以降、リース会社はリース物件に関する危険負担・瑕疵担保責任から免れることになっています。逆にいえば、ユーザーはリース物件が納入されていない、瑕疵があるなどの事由を、以後主張できなくなります。


手順8)サプライヤーのリース物件購入代金の支払い・借受証の受領
ユーザーからリース会社に物件借受証が発行されると、当該リース物件の所有権が、サプライヤーからリース会社に移転し、リース会社はサプライヤーに、物件の購入代金を支払うことになります。現金一括決済の場合もありますし、3か月の手形による決済または分割払いということもありますが、いずれにしろ比較的短い間に完済します。


(手順9)保守契約の締結
ここまでの手続きを終えて、リース会社は、貸与資産としての管理・減価償却・保険付保事務・固定資産税納付などのリース契約に関連する事務を行います。
ところで、ファイナンス・リース契約では、ユーザーが物件の保守・修繕義務を負うこととなっていますので、ユーザーはサプライヤーまたはメンテナンス会社との間で保守契約を締結し、保守サービスを受けるようになります。
また、リース契約では、通常、物件に保険がつけられていますから、リース会社はリース開始と同時に、損害保険会社に通知して包括保険契約にもとづく個別保険契約を成立させるほか、リース期間中、物件にかかる固定資産税の申告・納付を行います。


(手順10)リース期間の満了とリース契約の終了
リース期間の満了が迫ってくると、ユーザーは物件を返還してリース契約を終了させるのか、あるいは、「再リース」するのかを選択します。再リースとは、それまでのリース料の10分の1または12分の1という低廉のリース料を支払ってリース契約を更新することです。
再リースを選択した場合は再リース期間満了によって、また、そうでないときはリース期間満了によって、ユーザーがリース物件をリース会社に返還することで、リース契約は終了します。
返還を受けたリース物件は、いずれ経済的効用がなくなり廃棄されますが、実務上は、リース会社がユーザーに物件を廃棄してもらい、ユーザーから物件の「廃棄証明書」の提出を求めるということも行われています。


著者
芥川  基(弁護士)
2012年6月末現在の法令等に基づいています。