ビジネスわかったランド (経理)

固定資産等の管理

ユーザー側からはリース契約を解除できないのか

ユーザー側からは、リース契約を解除することができません。
リース物件は、ユーザーに代わってリース会社が購入したうえでユーザーにリースすることになっています。その段階では、すでにリース会社の側で物件の代金全額が支出されていることが前提となっています。
リース会社では、この投下した資金を、リース期間を通じてリース料として回収することを予定しているわけです。ですから、レンタルの場合と違って、リース会社は、ユーザーの契約解除を禁止しておく必要があることになります。
逆にいえば、リース契約の中途解約、物件処分によって投下した資金を回収するということは、本来予定されていないことになっています。
もし、契約が解除された場合、リース会社は、予定賠償としての損害金(実務上は「規定損害金」と呼ばれることが多い)の支払いを求め、それによって当初の投下した資金を回収することになるようなしくみになっています。


(1)リース物件の滅失についてはユーザーが損害金を支払う
リース契約では、リース物件が滅失したり毀損したりして使用に耐えなくなっても、ユーザーはリース会社に対し、規定損害金の支払義務を負わされています。
リース会社はその損害金により、投下資金および支出済みの経費を補填することになります。
なお、一般的には損害金の支払いによってリース契約は終了しますが、ユーザーの損害金の支払いが完了するまでは、リース契約は維持され、各種の約定による請求権は存続するものとされています。
このように、リース契約では、ユーザーに損害金支払義務があります。
ただ、現実にはリース物件には、リース期間中、動産総合保険がつけられていますので、ユーザーの故意・重過失によらないリース物件の滅失・使用に耐えない損害については、普通は保険金が給付されます。リース契約条項では、リース会社が受け取った保険金を限度として、ユーザーの規定損害金の支払いを免除するという規定があります。


(2)ユーザーはリース物件の保守・修繕義務のリスクを負う
リース取引においては、ユーザーは、自ら選択したリース物件を使用し、占有者として支配します。対象となるリース物件は、ユーザーが自己の業務を行うのに必要なものが多く、ユーザーはその使用や運転・管理に明るいものだということが前提とされています。
一方で、リース料は、リース会社によるリース物件の購入代金のほかに、購入のために必要な資金の調達金利、公租公課などの経費、若干の手数料で構成されます。そこには物件のメンテナンス、修繕費用は、通常盛り込まれていません。

これらのことを前提として、リース契約では、ユーザーが、リース物件を保守・修繕する義務が課されています。たとえば、「乙(ユーザー)は、物件が常時正常な使用状態および十分に機能する状態を保つように保守、点検および整備を行うものとし、物件が損傷をしたときは、その原因のいかんを問わず修繕し修復を行い、その一切の費用を負担する。この場合、甲(リース会社)は何らの責任も負わない」(リース標準契約書第3条2項)というように規定されています。また、リース契約書によっては、ユーザーが業者との間に、物件についての保守契約を締結することを義務づけているものもあります。
リース物件を毀損して、その物件の利用価値が減少するというリスクについても、ユーザーの負担となります。ユーザーは、自己の責任と負担によって物件の修理をしなければなりません。


(3)保守・修繕義務に違反した場合
リース物件の保守・修繕はリース会社ではなく、ユーザーの義務となっています。ですから、物件が修繕を要するにもかかわらず放置しておくことは、ユーザーの契約違反です。
リース会社がユーザーに対して、修繕するように求めることができることはいうまでもありませんが、リース会社はユーザーが契約違反をした場合の措置をとることができます。その措置は、リース契約書の方式によって少々異なります。リース会社はユーザーに対して、次の(a)~(c)のうちの全部または一部の請求をするか、または、リース契約を解除し、物件の返還と規定損害金の請求をすることになります。


(a)リース料またはその他の費用の全部または一部の即時弁済の請求
(b)物件の引揚げまたは返還の請求
(c)リース契約の解除と損害賠償の請求


著者
芥川  基(弁護士)
2012年6月末現在の法令等に基づいています。