ビジネスわかったランド (経理)

事務組織と記帳

領収書の保管の仕方は
 管理の基本目的は、取引事実、金銭の動き、帳簿の三者の整合性を図ることにある。法人税法の規定に従うことはもちろん、領収書の様式、保管方法・期限や集金の場合の取扱いなどをあらかじめ決めておくことが大切である。

領収書とは
領収書・支払証憑は、ともに金銭の授受の契機となる取引事実を根拠づける、あるいは取引事実の証拠となる重要な書類である。領収書(=発行領収書)と支払証憑(=請求書、受取領収書)の管理のポイントは次のとおり。

管理規程の整備とその運用
領収書や支払証憑の管理手法は、会社の規模やレベルによって異なる。しかし、どのような会社でも、管理の基本目的は、取引事実、金銭の動き、帳簿の三者の整合性を図ることにある。

領収書や支払証憑の管理は、このような事項の予防や発見に役立つように行なう。
そのためには、いかなる会社であっても、一定の文書化された管理規程やルールが必要である。さらに、規定の運用には、内部牽制の働く組織が確立されていなければならない。
内部牽制が有効に機能しない組織では、上述のb~dの不正が発生しやすく、税務上問題となるケースも多い。調査においても、決算書から帳簿、さらに原始証憑へとさかのぼり、最終的には反面調査で取引事実が確認されるケースが多いからである。

税法との関連
領収書や支払証憑の保存義務や要件は、法人税法や消費税法で規定されている。
1.青色申告法人の帳簿書類の保存義務は7年間
2.上記の場合でも中小法人(資本金1億円以下の法人等)の保存期間は特例として5年間
消費税法との関連では、請求書・領収書の要件についても、次の記入が義務づけられている。
1.書類作成者名
2.日付
3.相手先名
4.金額
5.取引内容
経理担当部署は、この点にも留意して証憑管理を行なうべきである。

領収書の管理
領収書管理に関して規程化、またはマニュアル化すべき事項を列挙すると、次のとおりである。

以上のような規程化を図り、適切に運用することが領収書管理のポイントである。また、領収書と入金伝票はワンライティングのものにし、入金の網羅性を確保する方法を兼用するとより有効な管理が可能となる。
この場合には、すべての入金伝票が出納課に回収されていることが確認されなければならず、領収書発行管理台帳を作成すると効果的である。

支払証憑の管理
支払証憑の管理も、領収書と同様、社内規程に基づき適切に行なう必要がある。とくに二重支払い等の危険を防止するには、支払証憑の回付・保管・帳簿の作成に関する規程づくりと運用が大切である。
規程作成上の留意点を列挙すると、次のとおりである。
1.一切の金銭の支払いは、領収書と交換で行なう。
2.原則として、請求書は必ず入手する。
3.日付順・相手先順等により整理保管する。とくに請求書等を会計伝票の起票や入力の直接原始証憑としていたり、当月分以外の請求書ファイルを頻繁に見返したりする場合は脱落や紛失に注意する。
4.購入先から領収書用の印影を届けさせておき、これと当該領収書の印影を照合し不正を防止する方法は非常に有効である。

著者
樫本尚彦(公認会計士)
2012年6月末現在の法令等に基づいています。