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固定資産等の管理

リースにはどんな種類があるか

リース取引は、契約内容の違いによって「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」の2種類に分けることができます。

 

(1)ファイナンス・リース取引とは何か
ファイナンス・リース取引は、次に述べるオペレーティング・リース取引と異なって、ユーザーが希望するすべての機械設備等が対象となるため、わが国におけるリース市場の90%以上を占めているといわれています。
「法人税法施行令」や「リース会計基準」では、ファイナンス・リース取引の定義が定められていますが、一般には、(a)中途解約の禁止、(b)フルペイアウトの2つの要件が含まれる賃貸借をファイナンス・リース取引といいます。

(a)中途解約の禁止
ファイナンス・リース取引では、リース期間の中途で契約を解除することができません。

(b)フルペイアウト
ユーザーは、リース会社がリース物件を取得するのに投資した資金(機械設備等の取得価額、資金調達コスト、固定資産税、保険料、管理費など)のほぼ全額をリース期間中に支払うことになります。これをフルペイアウトといいます。
ファイナンス・リース取引では、ユーザーが物件を購入する代わりに、リース会社が機械・設備などを購入して、ユーザーはリース期間中にリース会社が負担した物件の代金全額を支払うことになります。このように、ファイナンス・リース取引は、ユーザー側からすれば、一度に手持ち資金が大量に流出することを避け、また資金不足を補うことができる、という金融的側面を有する賃貸借といえます。
ファイナンス・リース取引では、ユーザーにリース物件に対する保守・修繕義務が課せられていたり、瑕疵担保責任や危険負担について、リース会社に免責が認められていたり、民法の賃貸借の規定と異なる内容が含まれています。


(2)オペレーティング・リース取引とは何か
ファイナンス・リース取引以外のリースを広く「オペレーティング・リース取引」といいます。つまり、ファイナンス・リース取引の要件である中途解約禁止とフルペイアウトのいずれかの要件を含まないリースは、すべてオペレーティング・リース取引です。リース会計基準及びリース取引に関する会計基準の適用指針にもそのように定義されています。

(a)中途解約が可能
オペレーティング・リース取引では、原則として一定の解約禁止期間を定め、それ以後は予告をして解約できることになります。

(b)ノン・フルペイアウト
オペレーティング・リース取引では、ユーザーは、リース期間中にリース物件の取得価額と諸費用の全額を支払うわけではありません。したがって、リース料は、リース期間満了後に残るリース物件の残存価値を控除して算定されています。ファイナンス・リース取引が金融的側面を有する取引であるのに対して、オペレーティング・リース取引は、より賃貸借に近い取引といえます。
ユーザーに、リース物件に対する保守・修繕義務が課せられていたり、瑕疵担保責任や危険負担に関してリース会社に免責が認められている点では、オペレーティング・リース取引もファイナンス・リース取引と同様ですが、フルペイアウトではないため、一定の条件で中途解約が認められ、契約違反をしたときにユーザーが支払う損害賠償の額も異なっています。
オペレーティング・リース取引については、税法上規定がありません。ですから、リース期間なども当事者で自由に決めることができます。リース期間を短くしたい、あるいは必要な期間だけ物件を使用したい、というユーザーのニーズに対応するために行われる場合が多く、一般にファイナンス・リース取引よりもリース期間が短いといえます。
オペレーティング・リース取引では、リース物件の残存価値を控除してリース料を算定しています。そのために、リース会社としては、契約終了後または中途解約後に、別のユーザーにその物件をリースしたり、売却したりして残存価額を回収する必要があります。したがって、対象物件は、いろいろなところで使え、中古市場が整っていることが前提となります。わが国では自動車や航空機がその代表例となっています。
最近では、パソコン、コピー機、一部の産業・工作機械、建設機械など対象物件は広がりつつありますが、これらの中古市場は依然として未発達であり、日本におけるオペレーティング・リース市場はわずかな規模にとどまっています。


(3)その他いろいろあるリース取引の分類
ユーザーのニーズに応じてリース取引はさらに多様化しています。ここで、商品化されているリースの形態をいくつか説明しましょう。

(a)メンテナンス・リース
リース会社の方が、物件の保守・管理・修繕などを行うリースを「メンテナンス・リース」といいます。ファイナンス・リース取引、オペレーティング・リース取引のいずれの場合もあります。
メンテナンス・リースは、煩雑な管理を伴う自動車を対象とするリース取引に多くみられます。ユーザーはガソリンの補給を行うだけで、リース会社の方が、定期点検整備、車検整備、一般修理、事故修理、オイル・タイヤ等消耗品の交換などを行う契約内容となっています。
今日、自動車リースの60%以上はメンテナンス・リースといわれています。

(b)レバレッジド・リース
通常、複数の投資家からなる賃貸人が借入金をテコ(=レバレッジ)にして航空機などの高額物件を取得し、その物件をユーザーにリースする取引です。
リース期間を耐用年数よりも長く設定することによって、賃貸人(投資家)は、物件(資産)の減価償却費などの損金を先行して計上できるため、投資家にとっては節税のメリットがあるといわれています。そして、安いリース料という形でユーザーに還元できるために、世界各国の航空会社の多くが、このレバレッジド・リースを利用して航空機を導入してきました。
レバレッジド・リースの取引のほとんどはファイナンス・リース取引ですが、平成10年度の税制改正により、日本から海外へのファイナンス・リース取引については、資産の償却方法が「リース期間定額法」に限定されたため、レバレッジド・リースのメリットは消滅し、現在ではオペレーティング・リース取引が利用されています。

(c)ベンダー・リース
サプライヤーが、リース会社を代行してリースの内容説明、契約手続きを行う取引で、そのほとんどはファイナンス・リース取引です。
リース会社は、サプライヤーから紹介のあった契約について審査を行い、契約が可能と判断した場合には、ユーザーに対して電話などにより契約意思を確認した後、リース契約がスタートします。ベンダー・リースは、比較的少額の物件を対象にして行われ、また、契約締結時には物件が搬入されているケースが一般的であるため、「物件借受証」が省略されることが多いのも特徴です。
また、ベンダー・リースは、リース会社とサプライヤーとの間に提携関係があることが多いために、「提携リース」ともいいます。

(d)パッケージ・リース
「パッケージ・リース」とは、機械・設備のファイナンス・リース取引に加えて、土地・建物などの不動産の賃貸借、事業資金の融資など各種の取引を組み合わせた複合取引のことです。病院、ホテル、スーパー、レストラン、工場などが対象となります。
パッケージ・リースは、1つのプロジェクト全体にかかわることから、「プロジェクト・リース」あるいは「セット・リース」ともいい、また事業経営のノウハウなども提供するため「コンサルティング・リース」とも呼ばれています。


著者
芥川  基(弁護士)
2012年6月末現在の法令等に基づいています。