ビジネスわかったランド (経理)

売上、売掛金の管理

売上と利益の関係(3)──10万円の値引きと、30万円のオプションどちらが得か

(問題)
あなたは自動車のセールスマンで、お客様と交渉をしています。お客様は250万円の自動車に興味を持ち、あと一押しで商談がまとまりそうです。そこであなたは、次の2点のどちらかの提案をしようと思いました。

A 10万円の値引きを行う
B 30万円分のオプションをつける

A案とB案のどちらが多くの利益を稼ぐことができるでしょうか。ちなみに、自動車の原価率を80%、オプションの原価率を30%とします。

それでは、A案とB案のどちらの利益が大きくなるかを計算してみましょう。

A.10万円の値引きを行う
10万円の利益のマイナス

B.30万円分のオプションをつける
30万円×30%=9万円9万円の利益のマイナス

A案は10万円の利益のマイナスとなりますが、B案は9万円の利益のマイナスとなるため、B案を選択した方が利益の数字は大きくなります。このように、車や家を買うときにはオプションをつけることによって値引率を大きく見せることがあります。
ここで気をつけるべきことは、オプションの値段は30万円ですが、企業の実質的な負担金額はオプションの原価部分である9万円だけになります。また、商品の販売価格は需要と供給のバランスによって決定しますが、オプション部分の価格設定は企業が自由に決めることができますので、高めの販売価格を設定することにより、お得感を出すことができます。
ちなみに設問の中に「自動車の原価率80%」という数字が出てきますが、A案を採用した場合もB案を採用した場合も自動車の原価である200万円(250万円×80%)は発生するため、この数字について考える必要はありません。
このように、A案、B案のどちらを採用しても発生する原価は意思決定に影響を与えないため「埋没原価」と呼ばれています。

著者
望月 実(公認会計士)
2011年12月末現在の法令等に基づいています。