ビジネスわかったランド (経理)

売上、売掛金の管理

売上と利益の関係(2)──少しの値引きが利益に与えるインパクト

(問題)
あなたは商社の営業マンで、食料品メーカーのC社に対して大口の商談を行っているところです。C社から要求された商品の見積書を作ったところ10億2900万円となりました。これを見たC社の担当者から「10億2900万円ですか。ちょっと高いですね。10億円でしたら、すぐに契約しますが……」と言われました。

販売価格を10億2900万円から10億円に値下げすると、利益は何%減少してしまうでしょうか。ちなみに、今回の仕入れにかかったコストは9億7100万円とします。

それでは、実際に値下げ前と後の利益を計算してみましょう。

1.10億2,900万円で販売した場合の利益
10億2,900万円-9億7,100万円=5,800万円

2.10億円で販売した場合の利益
10億円-9億7,100万円=2,900万円

10億2900万円を10億円にするというのは、販売価格から考えると約3%の値引きになります。「商談をまとめるためなら、3%くらい値引きをしてもいいかな?」などと考えがちですが、この値引きによって、利益の数字は5800万円から2900万円と半分になってしまいます。つまり、今回の問題では3%の値引きを行うことによって、50%の利益が失われてしまうことになるのです。
利益が半分になってしまうということは、同じだけの利益を稼ぐためには2倍働かなければいけないということです。競争が厳しくなればなるほど、価格競争が厳しくなりますが、値引きをするときには細心の注意が必要になります。

値引きをするときは、値引きと利益の関係を明確にシミュレーションする必要があります。今回の例であれば、何も考えずに3%引いてしまうのではなく、3%の値引きを行うと利益の数字が半分になってしまうことを明確に意識することが大切です。その上で、3%の値引きを行うのか、1.5%で交渉するのか、それとも値引きをせずに粘り強く交渉するのか、という意思決定を行うのです。

著者
望月 実(公認会計士)
2011年12月末現在の法令等に基づいています。