ビジネスわかったランド (経理)

現金、手形等の管理

受取手形を回し手形として用いるときの注意点は
 手形は、振出人による指図禁止の記載がない限り、裏書きによって譲渡できる。つまり、現金などと同様に、いったん自社宛に受け取った手形に裏書きし、それを他社宛の支払い等に充当することも可能である。こうした手形の使い方を「回し手形」という。回し手形として裏書きを行なう場合には、次のようにいくつかの注意点を知っておく必要がある。

裏書欄への記載の仕方
裏書きは、通常、手形の裏面の裏書欄に署名して行なうが、実務上は、銀行統一手形用紙を用いるので、手形の裏面の裏書欄に所定の記載をする。
銀行統一手形用紙には、裏面に4つの裏書欄と一番下に受取欄がある。
一番上から第一裏書人が署名し、順次第二裏書人、第三裏書人と下の欄に署名していく。裏書欄が足りなくなれば白い紙(補箋)を貼って欄を足せばよい。
裏書欄には、裏書人が署名する欄と被裏書人(譲渡先)の指定をする欄がある。通常、裏書人署名欄に自分の署名(記名捺印を含む)を行ない、被裏書人欄に譲渡先の名称を記載する。
裏書欄には、裏書日付を記載する欄がある。これは裏書きの要件ではないが、満期以降の裏書きかどうかを判定する際に、この日をもって裏書きがなされたという推定を受ける。
また、裏書人の住所を記載する欄もあるが、これも裏書きの要件ではない。

裏書きの種類
裏書きには、記名式裏書きと白地式裏書きの2種類の方法がある。
1.記名式裏書き
記名式裏書きとは、被裏書人指定欄に被裏書人を指定した裏書きをいう。この場合、被裏書人は手形を満期まで持ち、決済を受けることもできるし、さらに他の人に裏書譲渡することもできる。
2.白地式裏書き
白地式裏書きとは、被裏書人指定欄に被裏書人を指定しない、つまり被裏書人指定欄が白地である裏書きをいう。白地裏書きで裏書きを受けた場合は、そのままでも手形を満期まで持ち、決済を受けることもできるし、さらに他人に裏書譲渡することもできる。

白地式裏書きの場合の裏書きの方法
白地式裏書きの場合の裏書きの方法としては、次の4つがある。結果的にあらゆるパターンが可能である。
1.被裏書人欄に自分の名称を補充し裏書譲渡
被裏書人欄の白地を補充することにより、記名式裏書きの形式に戻す方法である。
2.被裏書人欄に譲渡先の名称を補充し裏書きをせずに手形を譲渡
裏書譲渡を受けた取引先から、自社が裏書譲渡する先に直接、記名式裏書きが行なわれたような形式を整える方法である。
3.被裏書人欄に補充せず裏書譲渡
白地式裏書きのまま、裏書きをする方法である。
4.被裏書人に補充せず、裏書きもせずにそのまま手形を譲渡
裏書譲渡を受けた取引先から、自社が裏書譲渡する先に直接、白地式裏書きが行なわれたような形式を整える方法である。

裏書きの効力(遡求)
裏書きにより、手形上権利はすべて被裏書人に移る。また、裏書人は自分より後に手形を取得する人全員に、手形の支払いを担保する責任を負う。つまり、手形振出人が支払いを拒絶したときには、裏書人はその被裏書人とその後の被裏書人全員に対して手形金額を支払う義務を負うのである。これを遡求義務という。
逆にいえば、自分より前の裏書人に優良企業がいれば、その手形は優良企業が振り出した手形と同等の安全性をもつことになる。信用できる取引先の裏書きがあるかどうかも、重要な手形のチェックポイントである。

裏書きの連続
手形の形成上、受取人から最後の裏書きの被裏書人まで切れ目なく連続していることを裏書きの連続という。手形の表書きに記載された受取人と最初の裏書人がまず一致し、直前の裏書きの被裏書人が、次の裏書きの裏書人となっていなければならないわけである。
裏書きについては、形式的に連続していれば、その手形の所有人は自己の権利を証明せずに権利を行使ができる。しかし、次の図のように裏書きが不連続な手形は、裏書不備として銀行で不渡り扱いされるため、もし、自社がそういう手形を受け取って他に回す場合には、前の裏書人に戻して、正しく連続するように直してもらう必要がある。


著者
田邉 太郎(公認会計士・税理士)
2011年1月末現在の法令等に基づいています。