ビジネスわかったランド (経理)

固定資産等の管理

固定資産取得の採算計算は
 購入によって見込まれる利益を計数的に表現することが大切である。具体的には、次のように行なう。

利益見込み算出の例
たとえば、ある機械の取得によって、月当り生産量を20,000個から25,000個に増やすことができ、しかも労務費や間接経費の増加がほとんどない場合、購入申請書で生産量の増加を数量的に20,000個から25,000個と表現しても十分でない。
仮に労務費や間接経費の月当り発生額が2,500万円であるとすると、製品1個当りの費用は、1,250円から1,000円に低減するから、低減額250円に25,000個を乗じた額625万円が月当り利益となる。これにその機械の見積使用月数を乗ずれば取得による利益が算出される。

見込利益の累計と固定資産の取得価額の比較
上記の見込利益と取得価額を比較することで、固定資産の購入の是非を検討する一助となるのである。
しかし、この方法では、見積使用月数(年数)に資金コストの概念が入らないので、次のその例を示そう。

正味現在価値による利益比較法
正味現在価値というのは将来のキャッシュフロー(償却前利子支払前利益)を資金コストで割り引いて合計し、これを現在価値とする。そこから資金額を差し引いて正味現在価値を求める。その額がプラスで大きいほど経済性が高いと判定するのである。
たとえば、ある機械の取得に要する資金は1億7,000万円とする。この設備投資からもたらされるキャッシュフローは投資時点から数えて1年後、2年後、3年後、4年後にそれぞれ6,000万円とし、この設備の経済的耐用年数は4年で、4年後の残存価値はゼロとする。税金は存在しないと仮定する。計算には下記の年金現価表を用いる。

各割引率の正味現在価値は、次のとおりとなる。
1 割引率0%→6,000万円×4-1億7,000万円=7,000万円
2 割引率5%→6,000万円×3.546-1億7,000万円=4,300万円
3 割引率10%→6,000万円×3.170-1億7,000万円=2,000万円
4 割引率15%→6,000万円×2.855-1億7,000万円=100万円
よって、資金コストを仮に10%とした場合には、正味現在価値は2,000万円のプラスとなり、この投資案は一応合格とされよう。
なお、この場合の資金コストは、調達金利プラス事業リスクを考慮した率を用いるべきである。

著者
土田 秋雄(公認会計士・税理士)
2007年12月末現在の法令等に基づいています。