ビジネスわかったランド (経理)

経費の支出管理

販売奨励金の管理ポイントは
 販売奨励金は支給基準を明確にしないことが多く、交際費と疑われやすい。したがって、支出の目的、得意先を絞った理由等の算定基準を明らかにするとともに、議事録や稟議書に記録を残すなどの証憑書類管理が大切になってくる。

販売奨励金とは
販売奨励金は、新規に販売先を開拓する場合や、ライバル会社との競争が激しい地域で顧客を獲得するために交付するもので、その点で売上高や回収高に比例して交付する売上割戻しとは、その性質を異にする。

他の費用と明確に区分処理する
会社が、得意先の営業地域の特殊事情とか、協力度合いにより、交付する販売奨励金は、あくまで会社の商品、製品の販売促進を図るものであり、贈与には当たらない。販売奨励金は、自社の商品の販売地域を開拓する場合などに交付されるもので、売上高に比例するものではないので、売上割戻しとはならない。
一方、これを受け取った得意先は、通常、収益として計上する。
特約店の従業員に掛捨ての保険料を負担した場合は販売奨励金となるが、名目が販売奨励金であっても、実態が交際費の分担金もしくは協力金に該当する場合は、交際費となる。

販売奨励金に代えて事業用資産を交付すると
販売促進の目的で、得意先に販売奨励金として金銭に代えて、社名や商品名を入れた自動車やショーケース等の事業用資産を交付する場合がある。これらは、得意先の収益を向上させるためのものであるから、交際費とはならない。
ただし、事業用資産の交付が広告宣伝のために行なわれる場合であっても、その支出の効果が1年以上に及ぶものは、税務上は支出時の損金とはせず、交付した事業用資産の耐用年数の10分の7の年数(最高5年)で均等償却、すなわち繰延資産として償却することになっている。
交付時の仕訳は、次のとおり。
(借)繰延資産 ×××  (貸)現金 ×××
(借)繰延資産償却 ×××  (貸)繰延資産 ×××

証憑書類の整理保全が管理のポイント
販売奨励金の支出は、前述のように売上割戻しとは性格が異なるところから、支給基準等を明確にしないことが多く、そのため交際費と疑われる場合がままある。
したがって、販売会議において、目的、得意先を絞った理由・経緯、算定基準等を明確にするとともに、それらを議事録や稟議書等にきちんと残し、得意先からは何のための販売奨励金かを記載した領収書を受領するようにといったアドバイスをすべきである。

著者
真鍋 誠良(公認会計士)
2012年7月末現在の法令等に基づいています。