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年次決算

税効果会計とは
税効果会計とは、企業会計上の収益・費用と、課税所得計算(税務)上の益金・損金は、認識時点等が異なることから相違する。そこで、実際に支払った税額ではなく、会計上の利益に対して本来払うべき税額を損益計算書に計上することで、企業会計と税務会計の違いを期間対応する税金費用で調整する必要性から行なわれるのが税効果会計である。そのやり方は次のとおり。

税効果を認識する必要性
企業会計上の税引前利益と課税所得は、その計算目的を異にするため通常一致しない。この不一致の原因の一つに、会計と税務での収益・費用の認識時点の相違がある。
現在、企業の所得に対して課せられる税金の実効税率は、40%程度であり、この税金の会計処理いかんは、税引後利益に重大な影響を与える。
ところで、連結によって連結会社間の取引は消去され、これにかかる未実現利益も消去される。この未実現利益の消去は、連結上、最も重要な作業であり、連結会社取引にかかる在庫を多く有している場合には、金額はきわめて多額なものとなる。
この未実現利益に対しても、現在は課税がなされており、これに対して支払った税金をそのまま当期の税金として処理すべきではなく、税金の前払いとして処理すべき、というわけである。

税効果会計の採用
この未実現利益は、企業会計上の収益・費用と税務上の益金・損金の認識時点の相違の典型例であり、これも含めて、税引後利益の算定に重要な影響を与える税金について、合理的な期間配分を行なうことを目的とする税効果会計が採用されたわけである。

税効果会計の効用
税効果会計の適用により、個別財務諸表の公平な比較を含めて次のような効果が期待できる。
・期間比較が正しくできる
・企業内比較が可能になる
・国際間比較が可能になる
・有税処理への抵抗がなくなる
・配当可能利益の株主間不公平の可能性がなくなる
・1株当り利益、投下資本利益率、株主資本利益率などの経営指標の意味が鮮明になる。

税効果会計の対象 税効果認識の対象となる税引前利益と課税所得の連結財務諸表上の一時差異には、次のものがある。
  1. 収益・費用の帰属年度の相違により生じる各連結会社の課税所得の合計額と連結財務諸表の税金等調整前当期純利益との差額
    たとえば、減価償却超過額、貸倒引当金等の引当金の限度超過額、貸倒損失否認額、棚卸資産や有価証券の評価損否認額、各種の圧縮記帳に伴う圧縮記帳積立金など
  2. 子会社の資産・負債の時価評価により生じた評価差額のうち、課税所得の計算に含まれていないもの
    たとえば、債権債務の消去に伴い減額修正された税務上の貸倒引当金、連結調整勘定償却額など
税効果会計の計算と表示
一時差異が把握されたならば、これに実効税率を乗じて税効果額を算定し、将来において回収等の見込まれない税額を除き、繰延税金資産や繰延税金負債として貸借対照表に表示されることになる。
税効果会計では税効果計算に用いられる税率は、法人税、法人住民税、事業税等の所得に対して課せられる税金の表面税率ではなく、事業税等の損金算入を考慮した実効税率による。しかも、平均税率ではなく、所得の増減に対応した限界税率によって行なう必要がある。
なお、標準税率と異なる税率が適用されている都道府県、市町村に所在している場合(複数の税率が適用される場合は、分割基準に基づく加重平均をして算定する)は、実際の税率に基づき算定した実効税率が適用されるべきであることはもちろん、税効果は納税主体となる会社ごとに計算し、異なる納税主体となる会社間の繰延税金資産と繰延税金負債は相殺しないで表示することが要求されている。
税効果会計適用の仕訳処理は、次のとおりであり、具体的な金額は、一時差異の額に実効税率を乗じて算定する。


著者
渡辺 昌昭(公認会計士・税理士)
監修
税理士法人メディア・エス
2013年1月末現在の法令等に基づいています。