ビジネスわかったランド (経理)
固定資産等の管理
リース契約はいつから成立するのか
(1)契約の成立
一般に契約は、申込みと承諾という当事者の意思が合致することによって成立します。
リース契約も例外ではなく、申込みと承諾という意思の合致によって成立します。必ずしも書面を作成する必要はありません。
通常は、リース契約書が作成されたり、注文書と注文請書のやりとりがなされて売買契約書が作成されますが、それは法律上要求されているものではなく、契約の内容を明文化することによって、履行を確実にし、将来の紛争を防止するために作成されているにすぎないものです。
(2)契約締結の留意点
(a)意思の確認
リース契約を締結するにあたっては、ユーザーがリース契約についてきちんと理解しているか、また、理解したうえで契約書に署名(記名)捺印しているかに注意する必要があります。
たとえば、あるユーザーが「リース期間途中で物件を返還して、以後はリース料を支払いたくない」といったとします。このような主張は、リース契約には必ず期間の定めがあり中途解約することができない、という点をわきまえないことからきています。
(b)物件の納入の確認
リース取引では、リース物件をユーザーのもとへ納入するのは、売主であるサプライヤーで、貸主であるリース会社ではありません。ユーザーは、物件が納入され、検収を済ませると「借受証(書)」という書面を作成し、確かに当該物件を借り受けたということを認証します。
これによって、リース会社は、リース物件が売主からユーザーに引き渡されたことを確認します。
しかし、ユーザーが借受証を発行することと、実際に物件が納入されることとは別問題です。借受証が発行されていても、物件が納入されていないこともあります。
リース取引のしくみを悪用するサプライヤーやユーザーは、ときどき登場します。物件が実際に引き渡されていないにもかかわらず、借受証が発行されますと、リース業者は、物件の購入代金を売主に支払います。その後に、物件の引渡しがなかったことが明らかになれば、ユーザーとしてはリース料の支払いをしなくなり、リース会社との間で紛争が起こることは目に見えています。
そこで、紛争を未然に防止するという点からも、ユーザーは、物件の引渡しを受けないうちは、誰から何といわれようと「借受証(書)」という書面に署名(記名)捺印してはなりません。リース会社も借受証をもらったからといって物件の納入の確認を怠らないことが大切です。
(c)サプライヤー、ディーラーが関与する際の注意点
リース契約を締結するにあたって、サプライヤーなどの従業員が関与する場合には、以下の点について注意する必要があります。
前述したように、リース会社の営業マンが直接、ユーザーの事業所を回ってリース契約を締結する事例は現実には少なく、多くはメーカーやディーラーを通じてリース案件がリース会社に持ち込まれます。そのような場合には、リース契約書を作成する際に、メーカーやディーラーの従業員が関与する場合があります。
たとえば、リース契約書2通にユーザーから署名・捺印をもらい、これをリース会社のもとへ持っていって、そこでまた押捺してもらい、そのうちの1通をユーザーのところへ持ち帰るというようなことが行われます。
契約書を持ち運びする段階にとどまっているなら問題は生じませんが、たとえば、ディーラーの営業マンが、リース契約書の記載とは異なって、ユーザーに対し、「リース料の支払いは、ソフトウエアが完成し、コンピュータが稼動してからでよい」と口頭で約束していたとしましょう。
このような場合、ユーザーは、書面上の約束であろうと口頭であろうと自己に有利な方を盾にとってくるのは、無理もないでしょう。
そもそもリース契約は、ユーザーとリース会社との間で締結されるものですから、第三者であるディーラーの営業マンには、特にリース会社から権限を与えられている場合以外は、原則として、リース料の支払い条件等について約束する権限はもっていません。したがって、ディーラーの営業マンがユーザーにした約束が、リース会社との間で効力を有するか否かは、権限を授与されているか否かにかかっています。
つまり、リース会社がディーラーの営業マンに、リース契約の内容を決める権限を与えている場合は、この営業マンはリース会社の代理人ということになり、その効力がリース会社に及ぶことになります。
仮に権限が与えられていなかった場合でも、いわゆる表見代理(民法109条・110条・112条)が成立する場合には、その効力がリース会社に及びます。表見代理というのは、真実は代理人ではありませんが、その事情を知らない第三者から見て、あたかも代理人であるかのような外観がある場合です。
リース会社としては、ディーラーなどの従業員がリース契約書の作成に関与した場合には、契約書上の署名・捺印が、ユーザー自身によってなされたものかについてはもちろん、書面以外の約束がないかに注意する必要があります。
ユーザーとしても、ディーラーなどの営業マンが何をいっても「リース契約書記載以外の約束はない」と心得ていた方がよいでしょう。
著者
芥川 基(弁護士)
2012年6月末現在の法令等に基づいています。
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