ビジネスわかったランド (経理)

資金繰りと資金管理

一時的な資金ショートの乗切り策は
 突発的な資金ショートには、手形の差しかえなど、次のように対応する。

一番恐いのは不渡りの発生
「入りは最小、出は最大」で立てた資金計画を超えて、突発的に資金ショート(支出にあてる資金が足りなくなること)が起こることがある。このケースのうち最も恐いのは、受取手形の不渡り。とくに、支払いの集中する月末近くになって不渡りになることがわかった場合は、短時間のうちにその穴埋めをしなければならない。額が大きく、しかもその後のやり繰りがうまくできなければ、連鎖倒産に追い込まれかねないからである。

割引手形を差しかえる
その不渡手形をすでに割引に出していたときは、早速、銀行が手形の買戻しを請求してくる。不渡手形を買い戻すということになると、会社はそれだけ手元の資金が減少することになる。買い戻すだけの資金(預金)がない場合はお手あげになるから、そんなときはいったん不渡手形を買い戻し、そのかわりに別の手形を割り引いてもらうことで、資金ショートを回避する。

割引の増枠か預金を取り崩す
取立てに回した手形が月末直前に不渡りとなったときは、事態は深刻。入るべき資金が入らず、資金不足となるからである。
もし、手形割引枠に十分な余裕があれば、割引を追加すればよいが、割引枠を一杯まで使っていたときは、事情を銀行に説明して、割引の増枠など緊急の融資を要請しなければならない。
この場合、取引銀行が急な融資に対応できないときは、いわゆる拘束預金を取り崩して支払いに充当する方法をとる。しかし、これを取り崩す前には、銀行に事情をよく説明して、資金の目処がつけばすぐ元に戻すという約束をしておかないと、あとあと銀行の心証を害することにもなる。

支払手形のジャンプ
上記の策でも間に合わないときは、
1.支払先に説明して月末支払いを一時待ってもらう
2.銀行への返済を待ってもらう
3.支払手形の決済についてジャンプを依頼する
などの手を打つことにより、浮いた資金で不渡手形を買い戻したり、不足資金分を埋め合わせるようにする。
いったん振り出した支払手形は、支払期日に預金残高がなければ「資金不足」ということで不渡り処分を受ける。この処分を避けようとすれば、支払期日を延長するしかない。支払先には得意先の倒産による旨等、事情を充分説明し、以後の原材料等の納入にできるだけ影響のない心配りが必要なのはいうまでもない。このような手形のジャンプは、支払資金に行き詰まった場合に緊急避難的に用いられる方法である。

著者
渡辺 昌昭(公認会計士・税理士)
監修
税理士法人メディア・エス
2010年8月末現在の法令等に基づいています。