ビジネスわかったランド (経理)

本支店、工場の経理

本支店があるときの経理
 本支店会計は地域的に分散された会計単位の経理処理の効率化が目的の1つだが、コンピュータ化によって効率化は進んでいるので、いかに経営管理に役立てるかが重要になっている。

本支店(工場・営業所)会計の目的
本支店会計は、販売拠点にとどまらず、工場を含んだ地域的な区分や事業部のように経営組織のうえでの区分も同様に扱う。
本支店会計の目的は、次の2点である。
1.地域的に分散された会計単位の経理処理を効率よく計算する。
2.各支店の業績評価や経営管理に有効に役立てる。
本支店会計は、この2つの目的に合うように制度を組み立てる。ただ最近では、コンピュータを使うことで効率的にできるようになってきているので、本支店会計の目的は、いかに経営管理に役立てるかがポイントである。

支店・営業所の運営方法
支店・営業所の運営のポイントをあげると、次のとおり。
1.支店・営業所(長)責任権限を明確にする。
・責任権限規程をあらかじめ設け、それらのルールに従って運営する。
・責任権限は企業規模の拡大などにより改訂を考える。
・責任権限規程には、経費・投資・価格・固定資産・在庫の廃棄処分などに関する支店・営業所での決裁権限や、最終決裁者および報告者(部門)を明確にしておく。
2.支店・営業所(長)の業務実績について、評価項目をどうするか、決めておく。

3.支店・営業所では、売上・売掛金、現預金、商品、経費などが管理の中心になるが、本社との管理責任区分をあらかじめ決めておく。
4.最少人員で効率的に運営できる体制をつくる。このため、パソコンなどのコンピュ-タシステムの積極的な活用や業務の標準化・マニュアル化で間接業務の生産性をあげる。
5.内部統制体制の確立も重要である。販売重視の営業所や支店では、ともすれば内部管理が軽視されがちとなるので、定期的に本社からの監査など内部牽制を行なう。

日常業務の基本的な管理の仕方
1.現預金の管理
全社的な資金効率を優先させ、支店サイドでの管理業務の削減や不正の防止を図るため、資金はできる限り本社で集中的に管理する。
つまり支店・営業所では、極力現金をもたないようなしくみをつくるわけである。
2.債権の管理
不良債権の未然防止には、客先との担当窓口である支店・営業所での客先状況に応じたスピーディな行動が決め手になることから、次の内容をポイントにして取り組む。
a.営業担当者の管理必須項目を定め、問題発生時には対応策を決めて運営する。
・客先別請求額の入金状況確認
・客先別債権残の与信限度との差異状況確認
b.客先の信用リスクの管理
・危険信号発生から対応策までをマニュアル化しておく。
・危険兆候内容により危険度の段階の分類化と予想される対応策も決めておく。

・債権管理教育などを通じ営業担当者が対応できるようにしておく。
3.商品管理
本社(在庫センター)と支店のいずれで在庫するか、商品別に事前に決めて運用する。
すべて支店別に管理することは、全社的に過大な量を抱えやすく管理業務も複雑となるので、顧客対応に支障が生じない限り本社での集中管理を行なう。
したがって、支店では、特定客先への対応商品や即納品に限定して保有するようにする。
4.固定資産の管理
固定資産に関する経理処理は、科目の決定、耐用年数の決定、償却計算、固定資産と経費の区分などの判断を伴い、複雑で経理上の誤りを生じやすい。
したがって、支店・営業所では事務用品などの定常的処理にとどめ、その他は現物管理のみとする。
なお、購入や経理処理の判断は、本社が行なうものとする。
5.経費管理
支店・営業所での経費管理は、次の2つの観点で進める。
a.支払いの妥当性のチェック
次のような項目を必ず確認のうえ支払う。
・責任権限規程に則り承認が得られていること
・会社で定めた経理処理マニュアルに合致した処理が行なわれていること
・請求書などの裏付け資料が添付されていること
・予算の範囲内であること
b.予算と実績の差異がないかどうかを確認し、差異があればその内容を把握して、対策を講じる。

本店集中型の経理
1.基本的な考え方
本店集中型の経理は、責任権限を支店・営業所に大きく委譲しないことを前提とした経理の処理方法である。
したがって、支店・営業所としては、独自の会計帳簿、貸借対照表、損益計算書の作成を必要とせず、日常的な会計処理のみにとどめ、本社ですべての会計処理を行なう方法である。
このような典型は出張所である。この場合は、小口経費の支出のため定額資金の仮払いを受け、月末に金銭支出額を費用別に集計する。そして領収書添付のうえ本社に報告し、精算する。
2.効率的な運営方法
本店集中型の経理を採用する場合も情報処理のスピードが求められるので、日常取引について発生場所・時点で会計処理(伝票処理・入力処理など一連業務)を完結させることも有効である。
この場合は、標準化・マニュアル化で業務のシンプル化を図り、責任権限を与えて一定範囲で処理を委ねることになる。

支店分散型の経理
1.基本的な考え方
支店分散型の経理は、支店で独自の帳簿組織をもってすべての取引を処理するとともに、独自の貸借対照表や損益計算書の作成を行なうしくみである。
したがって、この経理制度は、支店への責任権限の大幅な委譲が行なわれている状況に適した経理制度である。
この制度では、本店・支店のような「企業内企業」ともいうべき独立した会計単位(本支店会計)が成立し、特殊な会計手続きで企業内取引を処理することになる。具体的には、「本店勘定」「支店勘定」を設定して本支店間の債権債務関係を記録することになる。
2.効果的・効率的な運営方法
a.支店分散型の問題点
・規模の拡大に伴って、支店での経理要員がますます必要となり、業務の非効率が起きる。
・資金の分散で資金効率の悪化を招くおそれがある。
b.効果的・効率的運営方法
・科目によっては、効率化の観点から、本社で集中処理することやコンピュータで一括計算する方法を採用する。
c.集中処理の具体的な考え方
・給与処理に当たっては、出勤データのみ支店で作成(入力)し、給与計算・給与の支払いは本社で一括して実施する。損益計算上の人件費の計上は支店にて行なう。
・支店としては、「売上」「売掛金」「商品」「経費」など、直接管理すべき科目を中心に対応する。
・資金運用・調達は、本社で一括対応し、支店では対応しない。
・手形の発行は本社にて行なう。
・国税・地方税などの税金関係は、本社で計算し納税する。
・「貸付金」や「投資有価証券」などの投資勘定は、本社で管理する。
・「引当金」は支店には計上しない。
・「仕入(買掛金)」処理は、本社で一括処理する(一部の支店での例外仕入を除く)。
d.支店別の財務諸表の作成をコンピュータで行なうときは、次の点に留意する。
・借方・貸方とも支店・営業所のコードを付けて処理する。
・コンピュータ上、仕訳処理データは全社一括して保有する。

著者
近藤 仁(元オムロン株式会社参与)
2013年4月末現在の法令等に基づいています。