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取引先の格付けと決済条件の決定
 取引先の格付け情報のある・なしに応じて、それぞれ次のようなやり方で決済条件を決定する。

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まず、ここでは、取引先を格付けすることによって、適切な決済条件を選定する方法を解説しよう。

マトリックスによる決済条件の選定
簡便的な方法では、図表1のようなマトリックス表を作成して、取引先の相手国のカントリーリスクと取引先企業そのもののリスクから決済条件を決めることもできる。

この場合は、横軸にカントリー格付け、縦軸に格付けを配して、その2要因のみで決済条件を決定することができるようにしている。カントリー格付け、格付けともにD&B社の格付けを使用した。

カントリーリスクの評価
D&B Country Risk Indicator(D&Bカントリー格付け)では、次の4つの観点からリスクを分析、評価している。
・Political Risk(政治リスク)
・Commercial Risk(ビジネスリスク)
・Macroeconomic Risk(マクロ経済リスク)
・External Risk(外部リスク)
分析、評価の結果は、図表2のように7段階の格付けで表現される。

企業格付けと同じように「1」が一番高く、「7」が一番低い評価となっている。この7段階に加えて、アルファベットのa、b、cを末尾につけ加えることにより、さらに細分化したリスク評価を行なっている。
D&B社では、こうした情報を毎月更新しており、国別の格付け情報やカントリーリスクの分析レポートを有償で入手することができる。
また、日本貿易保険では、国別の格付け(A~H)であるところの「国・地域カテゴリー表」をウェブサイト上(http://nexi.go.jp/insurance/ins_bairitu/ins_bairitu_frame.html)で定期的に発表している。

社内格付けと決済条件
こうした簡便的な決済条件の選定方法以外に、自社で社内格付けを作成し、それを用いる手法もある。国内取引でも社内格付けをよく活用する日本企業向けといえるだろう。以下にその参考例を図表3として紹介する。

格付けを決める場合に評価・分析基準をすべて満たす必要はないが、大半は満たしている必要がある。この格付けおよび決済条件の選定方法では、評価・分析基準をベースに定性的に取引先の決済条件や取引方針を判断する。

<< 格付けや財務情報のない取引先は >>

Risk Indexを活用する
これは国内取引でも同じだが、海外の取引先の財務情報が入手できなかったり、調査会社のレポートにも格付けがなかったりすることはよくある。もちろん、調査会社に財務情報を提出しない場合は、その企業の財務内容はあまり芳しくないと考えるのが一般的である。
そこで、その企業との取引については、決済条件を厳しくするという方針の日本企業は多い。あるいは、財務情報がなくても、限られた情報だけでリスクを判断しようとする企業もある。
こうした場合の判断基準として活用できるのが、倒産確率に基づいた信用リスクの評価指標である。こうした評価指標の多くは、財務情報を入手できない企業の信用リスクを評価するために開発されている。そのために、財務情報がなくても、定性項目がある程度入手できていれば信用リスクを評価できる。一例として、図表4にシンガポールのD&B社が開発したNew Credit Risk Index(NCRI)を挙げておこう。

ここに示した倒産確率は、過去24か月間の倒産企業のデータを分析したものである。シンガポールのNew Credit Risk Indexは、将来の倒産の可能性を予測するものではないが、データプロファイリングの手法を用いて、企業を分析評価したものである。
New Credit Risk Indexの判断基準となる主な評価項目および配分は、次のようになっている。
・企業情報(従業員数・業歴・D&B社の記録・法人形態・業種・系列・資本)…49%
・支払情報(遅延払いの発生)…11%
・財務情報(売上・純資本・純利益・流動比率)…25%
・公的情報(担保設定・訴訟記録)…15%
ここではD&B社のシンガポールの事例を紹介したが、米国や欧州でも同じような統計分析的なアプローチによるスコアが開発され、レポートに記載されている。
こうしたスコアを参考にすることで、定性情報を単に主観的に判断するだけではなく、客観的な判断が可能になる。これは私見だが、将来的には格付けと同じように、全世界、同じ基準で分析・評価されたスコアが利用できるようになるだろう。

著者
牧野 和彦(ナレッジマネジメントジャパン株式会社代表取締役、与信管理コンサルタント)
2007年12月末現在の法令等に基づいています。