ビジネスわかったランド (経理)
売上、売掛金の管理
英文督促状の基本は
次のような英文督促状の基本フォーマットを踏まえ、主旨、債権の詳細、期限を明確に設定した、その気になる文書を作成する。
<< 支払う気になれない督促状とは >>
ここでは、実際に債務者に支払う気を起こさせる督促状について考えてみよう。まずは、図表1の手紙をご覧いただきたい。
これは、実際にある会社が債権回収の目的で顧客に出したFAXである。もちろん、人名、社名、商品名、金額、国などは変更してある。いかがだろうか? あなたが受取人だったら、これを見てすぐにお金を支払おうという気になるだろうか?
ほとんどの人は、そう感じないはずだ。文法や言葉の使い方の問題は別として、その原因は、次のように大きく3つある。
・主旨が明確でない
・債権の詳細がない
・期限がない
主旨が明確でない
この督促状では、主題が「Lastly,we request you to remit our money……」(最後になりましたが、代金をお振込みいただくようお願いします)と最後のパラグラフにきている。
これでは、遅延しているお金を支払って欲しいという債権者の意図は伝わらない。それどころか「We did not know that you visited Japan last month……」(先月、来日していたとは知りませんでした)といった前半の部分を読んでいると、これはセールスレターか、さらにはただの私信かと錯覚してしまう。
日本的な感覚では、重要なことは最後に書くというのは現代のビジネス社会でも十分通用するかもしれないが、英語ではそうはいかない。最後に本題を書くなどという回りくどいことでは、債務者に支払いをさせることはできない。
基本的にビジネス文書では、債権回収に関するものにかかわらず、主題は第1パラグラフに入れるというのが基本である。一歩譲っても第2パラグラフまでだろう。そうでなければ、こちらの意図は伝わらないし、督促状の緊迫感も出てこない。まず、結論を先に述べてから詳しくまたは補足の説明をするというのが、督促状に限らず、英文ライティングの基本でもある。
債権の詳細がない
督促状に不可欠なのは、債権の詳細である。債権の詳細とは、債権額、支払期日、請求書番号等である。
ここでは、「JPY3,250,000-」と債権額しか書かれていないため、実際どれくらい遅延しているのかわからない。
債務者は、都合の悪いことは忘れるものである。必ず支払期日(期日からの遅延状況も)を書き、支払いの緊急性をアピールすることが重要だ。「We need cash to manufacture your customized products」(商品を製造する資金が必要です)では、緊急性はまったく伝わらない。
期限がない
最後のパラグラフで「We will appreciate if you make remittance soon」(すぐにお支払いいただけると幸いです)と支払いを促しているが、この支払要請に対して期限を設定していないのは、督促状としては致命傷である。期限が決められていなければ、緊迫感もない。
soon(すぐ)やas soon as possible(できるだけ早く)というフレーズは、督促状では使ってはいけない。人によって「すぐ」や「できるだけ早く」の受け取り方が異なるため、期限が明確でないからだ。
また、今後、督促するにしても、期限があったほうが督促しやすい。必ずby May 10「5月10日までに」、within this week「今週中に」などの期限が明確な表現を心がけよう。
<< 回収を成功させる督促状22のポイント >>
図表2に、回収に結びつく督促状の22のポイントを掲げた。それに沿って説明していこう。
督促状そのもののシステム化
遅延期間に応じた複数の督促状を準備しておき、必要に応じてカスタマイズしたものを使用すると効率的だ。消費者相手に大量の請求、督促を行なわなければならない電話、電気、水道、金融機関、カード会社など債権回収のシステム化が進んだ会社では、顧客と遅延期間に合わせた督促状が自動的に作成され、ボタン一つでPCから出てくるようにしてある会社も多い。
そこまでする必要はないにしろ、あらかじめ複数の督促状のテンプレートを作成しておけば、債権回収の効率化が図れる。なお、テンプレートは、やがて実態にそぐわなくなることもあるので、債務者の反応を見ながら定期的に見直す必要がある。また、典型的な言い訳を防ぐために、請求書を初めから督促状に同封するのも効果的だ。
督促状の構成
督促状の全体の構成としては、手紙やFAXの場合は1ページにまとめるようにし、できれば2~4パラグラフで構成されているほうが読みやすい。また、1パラグラフも2~3文程度が読みやすい。
忘れてはならないのが、主題を第1パラグラフにもってくることである。すべてを大文字にすると読みづらくなるが、強調したい部分に大文字を使ったり、アンダーラインを引いたりするとわかりやすい。
緊迫感を出すために支払期日を入れるのは必須だが、遅延期間を日数で表現すると、よりインパクトがある。また、督促状で使用する英単語はPlain Englishが基本だが、適宜、Long Letter Wordsと呼ばれる長い単語を織り交ぜると、ビジネスライクな雰囲気を出すことができ、支払いの緊急性を演出できる。
相手に読ませる工夫
常習的な債務者になれば、督促状を1日に何通も受け取っている。ひどい場合は、差出人を見ただけで開封もせずにゴミ箱に直行だ。したがって、督促状には開封させるエ工夫、内容を読ませる工夫が必要となる。
まず、末尾の署名欄は、印刷されたものより手書きのほうが読まれやすい。遅延期間が経過するにつれて、差出人と受取人を変えるのも1つの方法である。差出人の役職を上げていくことで、こちらの社内における問題の大きさをアピールすることができ、相手の宛名の役職を上げていくことで、真剣に支払いを検討するようになる場合もある。
市販の封筒と切手を利用すると、未開封のまま捨てられる可能性が減る。誰からきたかわからない手紙は、内容を確認したくなるのが自然な感情だからだ。相手に開封させるために、速達、電報、宅配便を利用するというのも有効な手段である。
きちんとタイプした督促状にUrgent(緊急)、Immediate Action Required(迅速な対応必要)などのメモを手書きで入れるとインパクトがある。郵送ならば強調したい部分にアンダーラインを引くのもよい。
また、債務者に無視されているような場合は、One Word Letterと呼ばれるA4の白紙に1語、1フレーズとあなたの名前と社名だけを手書きで記載し、FAXを送るというやり方もインパクトがある。
たとえば、
"PLEASE! $1,500.00-"
というようにである。ただし、同じ債務者に何度も使うと効果が薄れるので注意を要する。
督促状送付の戦略
効果的な督促状を書くには、債務者からの手紙を分析する必要がある。そして、相手の真の狙いがどこにあるのかを見極めて、その狙いに答えるように督促状を書く。クレームがある場合は、債務者も何枚にもわたる詳細な返事を書いてくる場合がある。その返事を熟読して内容や事実関係を確認することは、もちろん重要だ。しかし、そこに書かれた一つひとつの項目に対して、丁寧に返事をする必要はほとんどない。
むしろ、債務者がなぜそんなに長い返事を書いてきたのか、結論は何を言いたいのかと分析をして、その意図や結論に対して返答や提案をしたほうが進展しやすい。そして、提案や相手の行動には必ず期限を設けよう。手紙を受け取っていないという言い訳を防ぐために、宅配便などを利用し、受取りを確認するとよい。
また、Final Notice(Demand)=最後通告を送る場合は、日本人でかまわないので、顧問弁護士の了解を得て弁護士の署名を入れておくと効果がある場合もある。
分割払いの場合は、入金を確認したらThank You Letterを送り、次の支払期日前には確認通知やリマインダーを送ることも大切だ。
分割払いを承認したら、債務者のサインを入れた合意書を作成するのが確実だが、債務者が応じないことも多い。その場合には、こちらから電話の内容をまとめた確認書を一方的に送り、「3日以内に返事がなければ債務者はこの内容を認めたとする」といった一文を入れておく方法もある。その場合には、一度でも支払いが遅れた場合は全額の支払期限が到来する旨の「利益の期限喪失条項」を必ず入れておく。
<< 回収率が倍増する魔法のフレーズ >>
たった1通の督促状で1,000万円クラスの債権が回収できてしまうといったら驚くだろうか?しかし、これは紛れもない真実なのだ。私が顧客のためにドラフトした督促状は、最初の1通で全額回収できることがある。それも1度や2度ではなく、いままでに何度もある。ホールインワンよりもはるかに確率は高いのではないだろうか。
その秘密が何かをここで教えよう。
3つの重要な「殺し文句」
(1) "Your payment has been past‐due for 45 days."「貴社の支払いは45日遅延しています」
督促状の冒頭部分に述べるべきフレーズだ。はっきり遅延期間を記載することで、これが督促状である旨を明確に伝える。単に支払期日を明記するよりも、遅延期間を日数で書いたほうがインパクトがある。
(2) "We ask that you remit the full amount within this week."「今週中に全額の送金を要求します」
これは、督促状の基本中の基本のフレーズだ。必ず記載すべきもので、「 」の部分は状況に応じて変更が可能。ただし、「全額をいますぐ」要求することが大切である。
(3) "To prevent further delays for the next shipments,your payment today is highly requested."=「今後の出荷を遅らせないためにも、本日中にお支払いただくことが非常に重要です」
督促状のコツの1つに、「債務者に支払いの動機を与える」というのがある。ここでは、今後の出荷が遅れるという軽いペナルティを示唆することで、支払いをさせようとしている。
何よりも「期限」
この3つのフレーズを見て何か共通点に気づかないだろうか? そう、すべてに具体的な日数や期限が設定されていることだ。とくに期限の設定は、督促状を書くうえで最も重要なことである。理由は、電話での督促と同じだが、期限の設定によって次なる行動が迅速にとれるからだ。期限が決められていなければ、緊迫感もない。
<< 英文督促状の基本フォーマット >>
では、英文督促状の基本から述べていこう。
図表3のフォーマットは、督促状の本文部分だけである。
全体の構成は、一般的なビジネスライティングと同じである。このフォーマットでは、(1)「現状の提示」は箇条書きにするので、本文自体は(2)~(4)の3パラグラフで構成することになる。
Present the situation(現状の提示)
ここでは、主に件名と債権の詳細について記載する。件名は、Overdue Account(遅延債権)、Outstanding Payment(未払い)などと明確に書くのが一般的である。
債権の詳細として最低限必要なのは、債権額、請求書番号、支払期日である。そのほかReference Number(参照番号)、Purchase Order Number(注文番号)なども記載すればなおよい。
Make a proposal(提案)
提案とは、通常、支払いの要請である。「いつまでにお金をいくら支払え」という要請をすることになる。提案の内容と表現方法は、督促の段階によってはかなりきつい表現になる。
この督促状の送付の前後に電話をしたり、督促状に請求書などの添付資料をつけた場合は、ここでそのことに言及する。
Provide motivation for the debtor(債務者に支払いの動機を与える)
ここでいうところのモチベーション(動機)とは、簡単にいえば、インセンティブかペナルティを指している。インセンティプは遅延期間の短い時期に、ペナルティは遅延期間がかなり経過した時点で効果的である。
というのは、債務者といっても、もともとはお客さまであり、多少の遅延で脅していては、債権は回収できるだろうが、2度と注文がこなくなるおそれがあり、それでは商売が成り立たなくなる危険性もあるからだ。ある程度の見極めが必要である。
「与信限度額を維持する」ということは、インセンティブになるし、「減額する」とすればペナルティにもなる。今後の注文(出荷)も同じで、「維持する」といえばインセンティブになり、「減らす」といえばペナルティになる。
「次なる手段」は、より強い回収活動なのだから、明らかにべナルティである。
Action(行動)
ここでは、第2パラグラフの提案を再確認することで、債務者を即、行動に移らせるように働きかける。支払方法や銀行の振込先などもこのパラグラフに記載する。ここでも、行動の期限を設定することを忘れないようにする。
著者
牧野 和彦(ナレッジマネジメントジャパン株式会社代表取締役、与信管理コンサルタント)
2007年12月末現在の法令等に基づいています。
<< 支払う気になれない督促状とは >>
ここでは、実際に債務者に支払う気を起こさせる督促状について考えてみよう。まずは、図表1の手紙をご覧いただきたい。
これは、実際にある会社が債権回収の目的で顧客に出したFAXである。もちろん、人名、社名、商品名、金額、国などは変更してある。いかがだろうか? あなたが受取人だったら、これを見てすぐにお金を支払おうという気になるだろうか?
ほとんどの人は、そう感じないはずだ。文法や言葉の使い方の問題は別として、その原因は、次のように大きく3つある。
・主旨が明確でない
・債権の詳細がない
・期限がない
主旨が明確でない
この督促状では、主題が「Lastly,we request you to remit our money……」(最後になりましたが、代金をお振込みいただくようお願いします)と最後のパラグラフにきている。
これでは、遅延しているお金を支払って欲しいという債権者の意図は伝わらない。それどころか「We did not know that you visited Japan last month……」(先月、来日していたとは知りませんでした)といった前半の部分を読んでいると、これはセールスレターか、さらにはただの私信かと錯覚してしまう。
日本的な感覚では、重要なことは最後に書くというのは現代のビジネス社会でも十分通用するかもしれないが、英語ではそうはいかない。最後に本題を書くなどという回りくどいことでは、債務者に支払いをさせることはできない。
基本的にビジネス文書では、債権回収に関するものにかかわらず、主題は第1パラグラフに入れるというのが基本である。一歩譲っても第2パラグラフまでだろう。そうでなければ、こちらの意図は伝わらないし、督促状の緊迫感も出てこない。まず、結論を先に述べてから詳しくまたは補足の説明をするというのが、督促状に限らず、英文ライティングの基本でもある。
債権の詳細がない
督促状に不可欠なのは、債権の詳細である。債権の詳細とは、債権額、支払期日、請求書番号等である。
ここでは、「JPY3,250,000-」と債権額しか書かれていないため、実際どれくらい遅延しているのかわからない。
債務者は、都合の悪いことは忘れるものである。必ず支払期日(期日からの遅延状況も)を書き、支払いの緊急性をアピールすることが重要だ。「We need cash to manufacture your customized products」(商品を製造する資金が必要です)では、緊急性はまったく伝わらない。
期限がない
最後のパラグラフで「We will appreciate if you make remittance soon」(すぐにお支払いいただけると幸いです)と支払いを促しているが、この支払要請に対して期限を設定していないのは、督促状としては致命傷である。期限が決められていなければ、緊迫感もない。
soon(すぐ)やas soon as possible(できるだけ早く)というフレーズは、督促状では使ってはいけない。人によって「すぐ」や「できるだけ早く」の受け取り方が異なるため、期限が明確でないからだ。
また、今後、督促するにしても、期限があったほうが督促しやすい。必ずby May 10「5月10日までに」、within this week「今週中に」などの期限が明確な表現を心がけよう。
<< 回収を成功させる督促状22のポイント >>
図表2に、回収に結びつく督促状の22のポイントを掲げた。それに沿って説明していこう。
督促状そのもののシステム化
遅延期間に応じた複数の督促状を準備しておき、必要に応じてカスタマイズしたものを使用すると効率的だ。消費者相手に大量の請求、督促を行なわなければならない電話、電気、水道、金融機関、カード会社など債権回収のシステム化が進んだ会社では、顧客と遅延期間に合わせた督促状が自動的に作成され、ボタン一つでPCから出てくるようにしてある会社も多い。
そこまでする必要はないにしろ、あらかじめ複数の督促状のテンプレートを作成しておけば、債権回収の効率化が図れる。なお、テンプレートは、やがて実態にそぐわなくなることもあるので、債務者の反応を見ながら定期的に見直す必要がある。また、典型的な言い訳を防ぐために、請求書を初めから督促状に同封するのも効果的だ。
督促状の構成
督促状の全体の構成としては、手紙やFAXの場合は1ページにまとめるようにし、できれば2~4パラグラフで構成されているほうが読みやすい。また、1パラグラフも2~3文程度が読みやすい。
忘れてはならないのが、主題を第1パラグラフにもってくることである。すべてを大文字にすると読みづらくなるが、強調したい部分に大文字を使ったり、アンダーラインを引いたりするとわかりやすい。
緊迫感を出すために支払期日を入れるのは必須だが、遅延期間を日数で表現すると、よりインパクトがある。また、督促状で使用する英単語はPlain Englishが基本だが、適宜、Long Letter Wordsと呼ばれる長い単語を織り交ぜると、ビジネスライクな雰囲気を出すことができ、支払いの緊急性を演出できる。
相手に読ませる工夫
常習的な債務者になれば、督促状を1日に何通も受け取っている。ひどい場合は、差出人を見ただけで開封もせずにゴミ箱に直行だ。したがって、督促状には開封させるエ工夫、内容を読ませる工夫が必要となる。
まず、末尾の署名欄は、印刷されたものより手書きのほうが読まれやすい。遅延期間が経過するにつれて、差出人と受取人を変えるのも1つの方法である。差出人の役職を上げていくことで、こちらの社内における問題の大きさをアピールすることができ、相手の宛名の役職を上げていくことで、真剣に支払いを検討するようになる場合もある。
市販の封筒と切手を利用すると、未開封のまま捨てられる可能性が減る。誰からきたかわからない手紙は、内容を確認したくなるのが自然な感情だからだ。相手に開封させるために、速達、電報、宅配便を利用するというのも有効な手段である。
きちんとタイプした督促状にUrgent(緊急)、Immediate Action Required(迅速な対応必要)などのメモを手書きで入れるとインパクトがある。郵送ならば強調したい部分にアンダーラインを引くのもよい。
また、債務者に無視されているような場合は、One Word Letterと呼ばれるA4の白紙に1語、1フレーズとあなたの名前と社名だけを手書きで記載し、FAXを送るというやり方もインパクトがある。
たとえば、
"PLEASE! $1,500.00-"
というようにである。ただし、同じ債務者に何度も使うと効果が薄れるので注意を要する。
督促状送付の戦略
効果的な督促状を書くには、債務者からの手紙を分析する必要がある。そして、相手の真の狙いがどこにあるのかを見極めて、その狙いに答えるように督促状を書く。クレームがある場合は、債務者も何枚にもわたる詳細な返事を書いてくる場合がある。その返事を熟読して内容や事実関係を確認することは、もちろん重要だ。しかし、そこに書かれた一つひとつの項目に対して、丁寧に返事をする必要はほとんどない。
むしろ、債務者がなぜそんなに長い返事を書いてきたのか、結論は何を言いたいのかと分析をして、その意図や結論に対して返答や提案をしたほうが進展しやすい。そして、提案や相手の行動には必ず期限を設けよう。手紙を受け取っていないという言い訳を防ぐために、宅配便などを利用し、受取りを確認するとよい。
また、Final Notice(Demand)=最後通告を送る場合は、日本人でかまわないので、顧問弁護士の了解を得て弁護士の署名を入れておくと効果がある場合もある。
分割払いの場合は、入金を確認したらThank You Letterを送り、次の支払期日前には確認通知やリマインダーを送ることも大切だ。
分割払いを承認したら、債務者のサインを入れた合意書を作成するのが確実だが、債務者が応じないことも多い。その場合には、こちらから電話の内容をまとめた確認書を一方的に送り、「3日以内に返事がなければ債務者はこの内容を認めたとする」といった一文を入れておく方法もある。その場合には、一度でも支払いが遅れた場合は全額の支払期限が到来する旨の「利益の期限喪失条項」を必ず入れておく。
<< 回収率が倍増する魔法のフレーズ >>
たった1通の督促状で1,000万円クラスの債権が回収できてしまうといったら驚くだろうか?しかし、これは紛れもない真実なのだ。私が顧客のためにドラフトした督促状は、最初の1通で全額回収できることがある。それも1度や2度ではなく、いままでに何度もある。ホールインワンよりもはるかに確率は高いのではないだろうか。
その秘密が何かをここで教えよう。
3つの重要な「殺し文句」
(1) "Your payment has been past‐due for 45 days."「貴社の支払いは45日遅延しています」
督促状の冒頭部分に述べるべきフレーズだ。はっきり遅延期間を記載することで、これが督促状である旨を明確に伝える。単に支払期日を明記するよりも、遅延期間を日数で書いたほうがインパクトがある。
(2) "We ask that you remit the full amount within this week."「今週中に全額の送金を要求します」
これは、督促状の基本中の基本のフレーズだ。必ず記載すべきもので、「 」の部分は状況に応じて変更が可能。ただし、「全額をいますぐ」要求することが大切である。
(3) "To prevent further delays for the next shipments,your payment today is highly requested."=「今後の出荷を遅らせないためにも、本日中にお支払いただくことが非常に重要です」
督促状のコツの1つに、「債務者に支払いの動機を与える」というのがある。ここでは、今後の出荷が遅れるという軽いペナルティを示唆することで、支払いをさせようとしている。
何よりも「期限」
この3つのフレーズを見て何か共通点に気づかないだろうか? そう、すべてに具体的な日数や期限が設定されていることだ。とくに期限の設定は、督促状を書くうえで最も重要なことである。理由は、電話での督促と同じだが、期限の設定によって次なる行動が迅速にとれるからだ。期限が決められていなければ、緊迫感もない。
<< 英文督促状の基本フォーマット >>
では、英文督促状の基本から述べていこう。
図表3のフォーマットは、督促状の本文部分だけである。
全体の構成は、一般的なビジネスライティングと同じである。このフォーマットでは、(1)「現状の提示」は箇条書きにするので、本文自体は(2)~(4)の3パラグラフで構成することになる。
Present the situation(現状の提示)
ここでは、主に件名と債権の詳細について記載する。件名は、Overdue Account(遅延債権)、Outstanding Payment(未払い)などと明確に書くのが一般的である。
債権の詳細として最低限必要なのは、債権額、請求書番号、支払期日である。そのほかReference Number(参照番号)、Purchase Order Number(注文番号)なども記載すればなおよい。
Make a proposal(提案)
提案とは、通常、支払いの要請である。「いつまでにお金をいくら支払え」という要請をすることになる。提案の内容と表現方法は、督促の段階によってはかなりきつい表現になる。
この督促状の送付の前後に電話をしたり、督促状に請求書などの添付資料をつけた場合は、ここでそのことに言及する。
Provide motivation for the debtor(債務者に支払いの動機を与える)
ここでいうところのモチベーション(動機)とは、簡単にいえば、インセンティブかペナルティを指している。インセンティプは遅延期間の短い時期に、ペナルティは遅延期間がかなり経過した時点で効果的である。
というのは、債務者といっても、もともとはお客さまであり、多少の遅延で脅していては、債権は回収できるだろうが、2度と注文がこなくなるおそれがあり、それでは商売が成り立たなくなる危険性もあるからだ。ある程度の見極めが必要である。
「与信限度額を維持する」ということは、インセンティブになるし、「減額する」とすればペナルティにもなる。今後の注文(出荷)も同じで、「維持する」といえばインセンティブになり、「減らす」といえばペナルティになる。
「次なる手段」は、より強い回収活動なのだから、明らかにべナルティである。
Action(行動)
ここでは、第2パラグラフの提案を再確認することで、債務者を即、行動に移らせるように働きかける。支払方法や銀行の振込先などもこのパラグラフに記載する。ここでも、行動の期限を設定することを忘れないようにする。
著者
牧野 和彦(ナレッジマネジメントジャパン株式会社代表取締役、与信管理コンサルタント)
2007年12月末現在の法令等に基づいています。
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