ビジネスわかったランド (経理)

売上、売掛金の管理

売上の計上基準と変更の可否は
売上とは、商品、製品等の棚卸資産または役務を提供するのと引換えに、現金や売掛債権を得る営業取引のことで、これによって得られた営業収益を計上する科目を売上高という。会計上、収益計上を行なうのは収益を得る過程がほぼ完了した時点とされており、この考え方を「実現主義」というが、現実にどの時点を取引完了と見なして収益計上するかの「計上基準」は、取引内容等によって定められている。いったん選択した計上基準は継続適用が原則で、変更するには合理的な理由を要する。

通常の売上の計上基準は
1.商品、製品等の売上は引渡しの時点
商品や製品の売上高は、次のような「引渡しの時点」で収益計上する(引渡基準)。
・出荷基準→自社が出荷した日
・検収基準→得意先が検収した日
・使用収益開始基準(不動産業の場合)→得意先で使用収益ができることとなった日
・検針基準(電気・ガス販売業の場合)→検針により販売数量を確認した日
・船積基準→輸出商品を船積みした日
・工事完成基準→工事の目的物の引渡しが完了した時点で収益計上する。
・工事進行基準→適正な工事収益率によって工事収益一部を当期に計上する。
いつの時点を選ぶかは、契約の内容、商品の種類等により、会社にとって最も妥当な計上基準にすべきである。
なお、法人税法上、長期大規模工事(工事期間1年以上、請負金額10億円以上の工事。ただし、着手の日から6か月を経過していないもの、進行割合が20%に満たないものについては除かれる)については、工事進行基準が強制適用となり、その他の工事については工事完成基準と工事進行基準の選択適用となる。
2.役務の提供による売上は役務提供の完了時点
役務の提供による売上は、原則として、契約に定められている役務の提供を完了した時点で計上する。ただし、契約に従って継続して役務提供する場合は、時の経過に従って収益計上する。
主な役務収益の計上基準は、法人税法上、下表のとおり扱われる。


特殊販売の場合は
特殊販売による売上の計上基準として主要なものを挙げると、次のとおり。
・委託販売→委託した相手が実際に販売した時点。ただし、仕切精算書(売上計算書)到着日でも認められる。法人税の取扱いも同様。
・試用販売→購入者が購入の意思表示を行なったとき。商品を引き渡した場合は、委託販売の積送品に準じる。
・予約販売→商品を引き渡したとき。
・商品引換券による販売→商品引換金(商品券、ビール券、プリペードカード等)を発行した日。発行事業年度ごとに配分管理している場合は商品引渡し等のあった日。ただし、商品引渡未了分は、発行事業年度末日の翌日から3年経過した日の属する事業年度に収益計上する。
・長期割賦販売等→金利相当額を除いて商品を引き渡したとき。ただし、一定の要件((1)分割回数が3回以上であること、(2)資産を引き渡した日または役務の提供をした日の翌日から最終約定日までが2年以上、(3)頭金が販売等の対価の額の3分の2以下となっていること)を満たす商品の割賦販売等については、延払基準によることができる。
「延払基準」の方法とは、下表の算式で計算した金額を、事業年度の収益の額および費用の額とするものである。

・延払条件付販売→回収基準(延払基準)
・通信販売→会計処理はすべて予約販売に準じるが、代金後払いの場合は、試用販売に準じる。

計上基準の変更には合理的な理由が必要
なお、同一の商品等に1つの時点を売上の計上時期として採用した場合は、粉飾等の売上の操作を排除するためにも安易な変更は許されず、それを継続適用する必要がある。ただし、変更することに合理的な理由がある場合は、その変更は認められる。

長期割賦販売等についての消費税の取扱い
原則は、引渡基準により計上するが、法人税法上、延払基準を適用している場合は、消費税法上は延払基準と引渡基準の選択適用となり、法人税法上、原則である引渡基準を適用している場合は、消費税法上、引渡基準を適用することになる。
なお、途中で延払基準の方法により経理することをやめた場合、および消費税の課税事業者から免税事業者もしくは免税事業者から課税事業者になった場合には、その経理しなかった課税期間またはその事由が生じた日の属する課税期間以後に支払期日の到来する賦払金に係る部分は、その課税期間において消費税の計算上課税標準額となる。

著者
木村 隆(公認会計士・税理士)
2009年4月末現在の法令等に基づいています。