ビジネスわかったランド (経理)

売上、売掛金の管理

売上の計上基準変更の注意点は
 当期の売上高は、会社が妥当なものとして採用した基準に従い、決算時までに決めた基準に合致したものに限り計上する。計上基準を変更したり、新たな計上基準を採用したりすることは、直接的に利益の額に大きな影響を与えるために、そうした変更については「合理的な理由」が求められるので注意が必要である。

選択から3年以内の変更はむずかしい
商品、製品等または役務を提供することによって得た売上を計上する場合、法の定めた計上基準のうちから選択し、どの基準を採用したかを税務当局に届け出ることになっている。また、こうして選択した計上基準をむやみに変更することは許されず、少なくとも選択から3年以内に変更することはできない。
それは、計上基準を変更することで直接的に売上や利益の額が変わるために、恣意的に利益圧縮などに利用されるおそれがあるからである。

合理的理由として認められる場合
そこで、こうした変更がなされた事業年度の税務調査では、変更について「合理的理由」があるかどうかが求められる。
たとえば、1つの会社が、
1.見込生産と受注生産の両方を行なう
2.製造業と仕入販売業の両方を営む
3.卸売業と小売業の両方を営む
などとなった場合に、新たに加わった事業について、それまでに採用していた計上基準と異なる基準を選択しても、内部事情が変化したという合理的理由が存在するため、いっこうに問題はない。
また、販売量が急増したことにより、営業部が先行して売上の計上やカラ売りを行なうようになるなどして、正確な債権管理がむずかしくなった場合、出荷基準を検収基準に変更しても、合理的理由があるとして許される。
あるいは、得意先の検収手続きが非常に厳しくなり、毎月の返品が激増したりした場合、出荷基準から検収基準に変更するのは、外部の事情が変化したことに対応するためという合理的な理由があると考えられる。

利益調整のためでないことを明らかに
一方、計上基準の変更を行なった際に、合理的理由が明白でなく、利益調整の目的で行なわれたと考えられる場合には、税務調査では否認されるものと思われる。とくに、税務調査では、収益計上時期が念入りに調べられるとされており、否認されないためには、事前に、
1.変更による金額的影響
2.変更による損益への影響
を把握するようにし、利益操作による租税回避のための変更ではないことを明らかにしなければならない。

著者
木村 隆(公認会計士・税理士)
2009年4月末現在の法令等に基づいています。