ビジネスわかったランド (経理)

現金、手形等の管理

受取手形が不渡りになったときは
 手形の支払銀行は、手形交換所で交換した手形を持ち帰り、個別に点検する。持ち帰った手形のなかに支払いに応じられないものがあると、その支払いを拒絶し、取立依頼銀行に返還される。これが手形の不渡りである。6か月以内に2回の不渡りを出すと、銀行取引停止処分に付せられ、その後2年間すべての銀行と当座勘定および借入の取引ができなくなるなど、実質的な「倒産」企業として経営を維持するのが困難になるとともに、社会的信用を大きく失うこととなる。

不渡手形返還の流れ
不渡手形は、次の図のような流れで返還される。
1.手形の振出人は、銀行と当座勘定取引契約を結び手形を発行する
2.振り出された手形は、直接所持人に渡るか、裏書きを経て自社まで渡ってくる
3.渡ってきた手形は、自社の取引銀行に取立依頼に出される
4.取立依頼をされた銀行は、手形持出銀行として手形交換所に手形を持ち込む
5.手形交換所を通じて支払銀行は手形を持ち帰り、決済可能かをチェックする
6.支払いに応じられない手形は、通常、手形交換所を通じて持出銀行に返還され、取立依頼銀行を通じて自社に返還される


不渡手形は大切な証拠書類
受取手形が不渡りになると、遅くとも翌日には、決済ができなかった旨の付箋を手形交換所から貼られた手形用紙が、取立依頼銀行から戻される。
取立銀行から帰ってきた不渡手形は、価値のない紙切れとして捨てるのではなく、手形上の責任を追及するための大事な証拠書類であるので、大切に保管する。

受取手形が不渡りになったとき
一度手形が不渡りになると、次の手形も不渡りになる場合がほとんどであるので、次に示すように、他の債権も含めて保全行動をとる。
未払いの債務があるときは、支払いを取りやめ、すぐに各営業部署に連絡して商品の引渡しも中止し、被害が広がらないようにする。留置権を行使できるような商品等がある場合には確保する。
その他の担保がある場合、担保物を処分したり、保証先に請求することとなる。

返還された手形による請求
取立依頼銀行や割引依頼銀行から返還された手形は、その所持人として振出人もしくは引受人に支払いを請求することができる。
振出人本人に支払呈示することにより、支払いを受けられれば問題はない。
しかし、不渡事由の多くは決済資金不足であるので、相手に資金力がない場合が多く、直接、支払呈示をしても振出人からの支払いを期待することはできない。
その場合は、破産、民事再生、その他の整理手続きによることとなるが、同時に裏書人があればいつでも請求できる。
しかも、裏書人が複数のときは、その中の誰にでも請求でき、また全部の者にも同時に手形金の請求ができる。したがって、その中から手形金の支払いができそうな資産家を選んで請求することが必要である。

不渡手形の会計処理
不渡手形は、その処理が確定するまで不渡手形という科目を使用する。処理が確定すれば、その処理に従って、その他の不良債権と同様の処理を行なう。
不良債権は、その他投資として会計処理を行ない、期末には適切に見積もった回収不能額を貸倒引当金として計上する。回収不能が確定した不渡手形は、貸倒損失となる。
1.不渡発生時
(借)不渡手形 ×××  (貸)受取手形 ×××
2.処理確定時
(借)破産債権等(その他投資) ×××  (貸)不渡手形 ×××
3. 回収不能確定時
(借)貸倒損失 ×××  (貸)破産債権等 ×××
貸倒引当金を計上済の場合は
(借)貸倒引当金 ×××  (貸)破産債権等 ×××

割引手形が不渡りになったとき
なお、割引に出した手形が不渡りになったときは、銀行からの手形の買戻しを請求される。したがって、そのための買戻金の手当をすることも必要となる。割引依頼人に預金があれば、その預金を割引手当の買戻請求権と相殺されるケースがある。その一方で、振出人や裏書人に対して手形金の請求をするなど、通常の不渡りの場合と同じ手配をすることが肝要である。

著者
田邉 太郎(公認会計士・税理士)
2011年1月末現在の法令等に基づいています。