ビジネスわかったランド (経理)

設備投資

設備投資の中断・撤退の検討ポイントは
 再構築を検討した結果、採算ベースに乗らないとわかったら、早めに撤退する。
世間に対する面子などもあって、なかなか撤退の決断ができないものだが、明確な撤退基準があれば決断が早くなる。撤退基準は、損益面と資金収支の面、投入する経営資源の範囲などか定めるのが適切だが、投資の前に設定しておくことが望ましい。

明確な撤退基準が必要
不採算事業から撤退することによって、会社全体の業績を改善することができるにもかかわらず、タイミングよく撤退できないのは、次のような理由による。
1.撤退すべきか否か判断する材料や基準が整理できていない
2.事業に対する執着
3.世間に対する面子
合理的な意思決定を阻害する感情論的な抵抗も、明確な撤退基準があれば排除することができる。

撤退基準の設立を
設備投資や新規事業の参入が、常に当初の期待どおりの成果を得られるとは限らない。
むしろ逆のケースも多く、新規の設備投資や新規に参入した事業が既存事業の足を引っ張って会社全体の収益構造や財務体質の悪化を招く。
ところが、設備投資や新規事業の参入は投下資金が多額となって固定化するため、当初に期待した成果が得られないという不測の事態が生じても、なかなか見直しすることができずに事態をさらに悪化させることが少なくない。
そこで、大規模な設備投資や新規事業に参入するに当たっては、投資前に見直しや撤退の基準を設定すべきである。

不採算事業からの撤退のメリット
採算のとれない設備や新規事業から撤退することによって、次のメリットが得られる。
1.会社全体の業績を改善することができる。
2.後向きで生産性の乏しい業務から解放されることにより、組織のムードが改善される。
3.不採算事業に投入されていた経営資源を別の事業に投入することができる。

不採算事業の再建策の検討
投資した結果が期待どおりの成果を得られなかったからといって、直ちに撤退すべきであることにはならない。
まずは、不採算の設備や事業の再建策を検討する必要がある。そのためには、不採算の設備や事業について、次の事項を検討する。

そして、次の事項について検討する。
1.継続した場合と継続しない場合のそれぞれについて、会社の損益に及ぼす影響を比較する。
2.採算ベースまで事業規模を縮小して、不要となった経営資源は転用または処分を検討する。
3.採算ベースに比して経営資源の投資が不足している場合は、必要な追加投資を検討する。
これらを検討した結果、採算ベースに乗らないと判断した場合には、撤退が選択される。

投資前の撤退基準設定のメリット
経営環境が激しく流動化するなか、不採算事業から撤退する意思決定が遅れれば命取りになりかねないにもかかわらず、現実にはタイミングよく撤退できるケースは少ない。
経営者にとって、不採算事業から撤退することを決断するのは、設備投資や新規事業に参入することを決断するのに比して何倍もの力を要することも、その原因の1つとなっている。
したがって、設備投資や新規事業に参入を検討するに当たっては、慎重に意思決定することが求められるのである。
また、投資の意思決定をする時点で合理的な撤退基準を明確に設定しておけば、感情論に支配されることなく、タイミングよく撤退することができる。
さらに、明確な撤退基準を設定することによって、投資や新規事業参入の後も常に損益や資金収支の採算管理が徹底されることから、成行き任せの甘い経営を許さない効果も得られる。

撤退基準設定のポイント
設備投資や新規事業に参入した場合の撤退基準を設定するに当たっては、金額と期限から検討しなければならない。

上記2つのいずれの方法にせよ、合理的な撤退基準を明確にして、いったん設定した基準は原則として守ることがポイントである。

経理部門の留意すること
経理部門は、撤退基準に基づき、採算性、キャッシュフローでの計測などの資料を作成して、関係部門に提供しなければならない。
とくに、事業撤退は、整理損(違約金なども)などのコストがかかるので、適切な撤退戦略の判断が明確にできる資料作成を積極的に行なう必要がある。

著者
渡辺 昌昭(公認会計士・税理士)
監修
税理士法人メディア・エス
2010年8月末現在の法令等に基づいています。