ビジネスわかったランド (経理)

現金、手形等の管理

受取手形の保管法は
 手形は流通性が高く、換金性も高い。また、1つの証券として独り歩きし得るので、当然、不正の対象になりやすい。経理としては、細心の注意を払って次のように管理しなければならない。


<< 受取手形の管理上のポイント >>

受取手形の管理上、常に注意を払っておくべきポイントは、次の3点である。
1.受取手形の現物が取引記録に従って実際に存在するか
2.取引記録は網羅的に現物の動きをとらえ、かつ現物把握できるか
3.手形の回収可能性に問題はないのか
以上の3点をいかに適切に把握するかが、受取手形の現物管理のポイントである。その実務的なやり方をまとめると、次のとおりである。

収受等は所定の手続きを経る
受取手形の収受、取立て、裏書き、割引、担保差入等、現物の移動に関しては、所定の手続きを経て、必ず責任者の承認を得る。

要件は責任者がチェックする
受取手形を収受したときは、手形要件を具備しているかをチェックする。
白地手形を受け取った場合は、自社で補充する、振出先に補充を依頼する、受け取らない等、状況に応じた処理を行なう。

手形金額と回収予定金額の照合
手形金額が回収予定金額と一致しているかどうかをチェックする。印紙税の関係で、大きな金額の手形は分割して発行されることがあるので、それらの合計を踏まえて回収予定金額と一致しているか否かを確認する。
また、満期日が支払条件どおりに記載されているかのチェックも行なう。
さらに、内部統制上、回収手形と領収証控を突合する。

受取手形の現物保管を適切に
とくに会社で保管する理由がないときは、取立依頼銀行に保管を依頼するのがよい。
割引による資金繰りの関係や、取引の付合い上の関係で手形を会社で保管しなければならないときは、現物は期日順に整理し、不正や盗難等の事故に備えて常に大金庫に保管しておく。

現物保管と記帳は別の担当者が行なう
不正や単純ミスを防止するため、現物保管と記帳業務は分離する。現物保管と記帳業務を同一担当者が行なった場合、不正の発生を容易にするばかりでなく、不正やミスの発見、対応を遅延させ被害を大きくする原因となるので、それぞれ別の担当者により行なうべきである。

現物実査と記録の照合を毎日励行
受取手形の現物保管者や受取手形記入帳(下図参照)の記帳者以外の者により、定期的に受取手形を実査し、帳簿記録との照合を行なう。
実査された残高と受取手形記入帳の残高との照合を行ない、記帳の正確性や現物が記録どおりに保管されているかを確かめる。取立依頼中の手形や割引手形で未決済のものも、できるだけ毎月銀行の残高証明により確認する。


定期的に受取手形記入帳と総勘定元帳の照合を行なう
現物の動きに即して記帳されている受取手形記入帳と総勘定元帳を照合し、記録の正確性を確かめる。

資金繰りと絡め期日管理を徹底
受取手形受入票(下図参照)や受取手形期日別管理表(下図参照)等により、資金繰りの観点から期日別管理が必要である。


安価な受取手形管理ソフトがあり、それを利用すれば期日別管理や資金繰りの管理ができるようになっているので、大いに利用したい。その際も、従来の受取手形受入票に準じたインプットメモを活用し、入力漏れがないように注意する。

著者
田邉 太郎(公認会計士・税理士)
2011年1月末現在の法令等に基づいています。