ビジネスわかったランド (経理)
現金、手形等の管理
手形を受け取ったときの注意点は
手形収受の際には、手形の記載要件が適切に具備されているかのチェックがまず必要だ。振出日や受取人欄が白地の手形などは要件が欠けた手形であり、原則として、その後どのような記載をされても振出人は手形の所持人に対抗できない。トラブルを避けるためには、手形を受け取る際に記載漏れがないかどうかをチェックしておくべきである。
<< 受取手形の要件チェックポイント >>
約束手形を例に手形要件のチェックポイントを示すと、次のとおりである。
金額=[1]
振出人の作業上の都合により、鉛筆等で金額記載欄とは別に欄外に手形金額が書かれていることがある。手形法上、同一手形に2つの異なる金額が記載されているときは、算用数字よりも漢数字、大きい金額よりも小さな金額を手形金額とみなすとされている。
しかし、実務上は、銀行との取引約款で、金額記載欄に記載されている金額を手形金額として取り扱うこととされており、実際もこれに従っている。
手形金額は、算用数字が使われているときはチェックライター(印字機)で印字しているか、手書きのときは漢数字を使用しているかを必ずチェックする。とくに、手書きの算用数字は、手形としては有効だが、銀行を通すときに金額記載方法相違という理由で不渡りになるので注意を要する。
満期日(支払期日)=[2]
満期日の記載のない場合は、手形法上、一覧払いとみなされる。満期の有効な定め方は、次の4種類のみとされているが、1つの手形に複数の満期を定め、分割払いとするような手形は無効である。
支払地=[3]
銀行統一手形用紙の場合、支払地の記載は支払場所の銀行店舗と併記して記載されている。
受取人=[4]
特定の人とわかる名称が記載される。特定の人とわかれば、それが個人名や会社名、商号その他どのような名称でもよい。ただし、「甲または乙さん」「甲および乙さん」というのは認められるが、「手形持参人殿」といった、特定できない名称は認められない。
「甲または乙さん」といった選択的記載のときは、各人が独立して権利行使をすることができ、「甲および乙さん」といった重畳的記載のときは、各人が共同して権利行使しなければならない。
銀行統一手形用紙の約束手形では、金額欄の上に「~殿」という欄があり、為替手形では金額欄の下に受取人の欄があるので、そこに受取人の名称が記載されているかを確かめる。
振出日付=[5]
一覧払手形の呈示期間や日付後定期払手形の満期の基準になる手形上の意思表示であり、実際の振出行為日と一致する必要はない。先日付でも、後日付でも要件上は問題がない。
実務上よく用いられる確定日払手形では、振出日付が何らかの基準になるわけではないので、振出日付が白地のままの手形がよく出回る。白地である振出日付は、必ず補充すべきだが、たとえば振出日付が満期日以後になるような矛盾がないか、十分に留意する。
振出地=[6]
単一のもので最小の行政区画が表示される。通常の住所表示でかまわない。実際の振出地と手形記載の振出地が一致している必要もない。たとえば、支店で振り出した手形の振出地が本社の所在地になっていてもかまわない。
振出地の記載がない場合は、振出人の住所が振出地とみなされる。銀行統一手形用紙では、振出人の住所と振出地を兼ねて記載するようになっているので、そこをチェックする。
振出人の署名=[7]
手形法上は、署名(自分の名前を自分で書く)の必要はなく、記名捺印でよいので、実務上はゴム印と銀行届出の社印によって記名捺印されることが多い。
その他の留意事項
1.支払人 (引受人)……為替手形には支払いをなすべき者、つまり引受人の名称が記載される。特定の人を示していれば、それが個人名や会社名、商号その他どのような名称でもよい。ただし、「甲および乙さん」は認められるが、「甲または乙さん」といった記載は支払人がわからなくなるので認められない。
実務上は、約束手形の振出人や小切手の振出人を「支払人」と呼ぶことがあるが、これは法文上の用語ではないので、混同しないよう留意する。
2.裏書きの連続……受取人から最後の裏書きの被裏書人まで、切れ目なく連続していることをいう。形式的に連続していれば、その手形の所有人は、自己の権利を証明せずに、権利行使することができる。したがって、連続しているかどうかのチェックは重要なポイントといえる。
3.印紙……手形に所定の印紙が貼付されているかを確認する。
印紙の納税義務者は手形作成者(振出人)となっており、貼付されていない場合は印紙の貼付が要求される。なお、所定の印紙が貼付されていなければ、手形作成者の印紙税法違反になるが、手形としての効力には何の影響もない。
印紙税節約のために、自分が引き受けて署名をした為替手形を他人に交付し、当該他人が振出人となることにより自分の印紙税納税義務を免れようとする行為があるが、このような場合は、引受人が納税義務者であり当該他人に交付するときに印紙を貼付するように定められているので、注意を要する。
著者
田邉 太郎(公認会計士・税理士)
2011年1月末現在の法令等に基づいています。
<< 受取手形の要件チェックポイント >>
約束手形を例に手形要件のチェックポイントを示すと、次のとおりである。
金額=[1]
振出人の作業上の都合により、鉛筆等で金額記載欄とは別に欄外に手形金額が書かれていることがある。手形法上、同一手形に2つの異なる金額が記載されているときは、算用数字よりも漢数字、大きい金額よりも小さな金額を手形金額とみなすとされている。
しかし、実務上は、銀行との取引約款で、金額記載欄に記載されている金額を手形金額として取り扱うこととされており、実際もこれに従っている。
手形金額は、算用数字が使われているときはチェックライター(印字機)で印字しているか、手書きのときは漢数字を使用しているかを必ずチェックする。とくに、手書きの算用数字は、手形としては有効だが、銀行を通すときに金額記載方法相違という理由で不渡りになるので注意を要する。
満期日(支払期日)=[2]
満期日の記載のない場合は、手形法上、一覧払いとみなされる。満期の有効な定め方は、次の4種類のみとされているが、1つの手形に複数の満期を定め、分割払いとするような手形は無効である。
支払地=[3]
銀行統一手形用紙の場合、支払地の記載は支払場所の銀行店舗と併記して記載されている。
受取人=[4]
特定の人とわかる名称が記載される。特定の人とわかれば、それが個人名や会社名、商号その他どのような名称でもよい。ただし、「甲または乙さん」「甲および乙さん」というのは認められるが、「手形持参人殿」といった、特定できない名称は認められない。
「甲または乙さん」といった選択的記載のときは、各人が独立して権利行使をすることができ、「甲および乙さん」といった重畳的記載のときは、各人が共同して権利行使しなければならない。
銀行統一手形用紙の約束手形では、金額欄の上に「~殿」という欄があり、為替手形では金額欄の下に受取人の欄があるので、そこに受取人の名称が記載されているかを確かめる。
振出日付=[5]
一覧払手形の呈示期間や日付後定期払手形の満期の基準になる手形上の意思表示であり、実際の振出行為日と一致する必要はない。先日付でも、後日付でも要件上は問題がない。
実務上よく用いられる確定日払手形では、振出日付が何らかの基準になるわけではないので、振出日付が白地のままの手形がよく出回る。白地である振出日付は、必ず補充すべきだが、たとえば振出日付が満期日以後になるような矛盾がないか、十分に留意する。
振出地=[6]
単一のもので最小の行政区画が表示される。通常の住所表示でかまわない。実際の振出地と手形記載の振出地が一致している必要もない。たとえば、支店で振り出した手形の振出地が本社の所在地になっていてもかまわない。
振出地の記載がない場合は、振出人の住所が振出地とみなされる。銀行統一手形用紙では、振出人の住所と振出地を兼ねて記載するようになっているので、そこをチェックする。
振出人の署名=[7]
手形法上は、署名(自分の名前を自分で書く)の必要はなく、記名捺印でよいので、実務上はゴム印と銀行届出の社印によって記名捺印されることが多い。
その他の留意事項
1.支払人 (引受人)……為替手形には支払いをなすべき者、つまり引受人の名称が記載される。特定の人を示していれば、それが個人名や会社名、商号その他どのような名称でもよい。ただし、「甲および乙さん」は認められるが、「甲または乙さん」といった記載は支払人がわからなくなるので認められない。
実務上は、約束手形の振出人や小切手の振出人を「支払人」と呼ぶことがあるが、これは法文上の用語ではないので、混同しないよう留意する。
2.裏書きの連続……受取人から最後の裏書きの被裏書人まで、切れ目なく連続していることをいう。形式的に連続していれば、その手形の所有人は、自己の権利を証明せずに、権利行使することができる。したがって、連続しているかどうかのチェックは重要なポイントといえる。
3.印紙……手形に所定の印紙が貼付されているかを確認する。
印紙の納税義務者は手形作成者(振出人)となっており、貼付されていない場合は印紙の貼付が要求される。なお、所定の印紙が貼付されていなければ、手形作成者の印紙税法違反になるが、手形としての効力には何の影響もない。
印紙税節約のために、自分が引き受けて署名をした為替手形を他人に交付し、当該他人が振出人となることにより自分の印紙税納税義務を免れようとする行為があるが、このような場合は、引受人が納税義務者であり当該他人に交付するときに印紙を貼付するように定められているので、注意を要する。
著者
田邉 太郎(公認会計士・税理士)
2011年1月末現在の法令等に基づいています。
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