ビジネスわかったランド (経理)
資金繰りと資金管理
資金繰り表のつくり方と使い分けは
資金繰り表は、「項目の区分」「対象期間」「予定か実績か、または予実対比か」といった3つの要素を目的に応じて配列して作成し、資金ショートが起こらないようにチェックする道具として活用する。
資金繰り表の役割
資金繰りとは、一定期間における資金の収入と支出を一定の区分に従い集計して、資金の過不足の調整をとることである。
その内訳を一覧表にしたのが資金繰り表であるが、資金繰り表には予定(見積り)と実績があり、これを分析・検討・調整することが資金管理の重要な役割といえる。
また、資金の過不足の調整という目的からすれば、実績よりも正確な見積資金繰り表の作成のほうがより重要となる。
しかし、資金繰り表には限界がある。資金の収入と支出の内訳はわかるが、どうして過不足が生じているかという原因の内訳まではわからない。
そのために、資金収支の改善には繋がらず、その役割は別項の資金運用表や資金移動表に譲ることになる。
資金繰り表の基本原則
資金繰り表には、所定の様式はなく、必要に応じて各企業が自社に合ったものを作成すればよい。
しかし、資金の過不足をバランスさせるという目的を達成するためには、基本的な原則はある。それは家計簿と同じように、必ず、
1.前月繰越し(または前日繰越し)
2.収入
3.支出
4.翌月繰越し
の4項目から成り立っていることである。
さらに、「収入」と「支出」については、定常的な項目と定常外(非定常的)の項目がある。
定常外収入は、投資有価証券売却など「投融資の戻り収入」と、定期預金戻りなど「財務収入」に分かれる。
定常外支出は、出資や設備購入など「投融資支出」と定期預金や借入金返済などの「財務支出」に分かれる。
これらの資金収支管理をどのような区分で把握するかにより資金繰り表の様式は4分法とか6分法・8分法などに分かれる。なお、言葉として「定常」ではなく「経常」が使われることもある。
定常の項目については、どの企業もほぼ同じ内容となる。一方、定常外についての区分は、財務収支の金額の大きさや頻度により、設定する項目を決めることになる。
また、繰越しについても、現金と当座預金だけにするのか、定期預金も加えるのかなどがポイントとなるが、作成趣旨からはすぐに資金化できるもの(現金、当座預金、短期運用資金)に限定すべきである。
最後に期間の問題があるが、毎日、旬間、月間、3か月、半年、1年間、数年間の単位がある。目的に応じて必要な期間の資金繰り表を作成することになる。
資金繰り表の種類
資金繰り表には、前述のとおり定められたものはなく、様式は自由となるが結局のところ次の3つの要素を目的に応じて配列した様式を自社でつくることになる。
1.項目の区分けと細分化
2.対象期間
3.予実対比か予定or実績のみか
また、自社の資金繰り表の様式を決めるに当たっては、資金の動きがわかりやすく、将来の計画や管理にも使いやすいものでなければならない。いたずらに項目を細かく分けても、かえって使いにくいものである。
様式のサンプルは下表だが、ポイントは次のとおり。
・定常的な活動収支の資金過不足を見たいか
・借入金や拘束預金などの財務収支が頻繁にあるか
・収入と支出を明確に分けたいか
・手形の割引は常時あるか
・時系列で管理するか
・将来の資金繰りをわかりやすくするために、受取手形・支払手形の残高を参考記入しておくか
資金繰り表の作成時期
通常、資金繰り表は、資金のサイクルに合わせて毎月作成し、3か月ぐらい先の分までをつくる。さらに、月のいつ作成するかは、資金ショートを発生させないことを前提とするので、当月または翌月の支払いが確定したときが最善といえる。
また、支払時期や回収が不確定で資金不足の発生が心配な場合には、旬単位や日繰りも必要となる。
資金繰り表の作成手順
資金繰りは、経理部(財務部)の仕事であり、資金繰り表を作成するのも経理部である。
しかし、資金収支の発生する行為そのものは経理部以外の部門であり、見積資金繰り表を作成するには他部門から資料・情報を入手しなければならない。
資金不足が心配なときは、各部門からの計画(見積り)数値をそのまま使うかどうかも判断を要するところである。
日繰り表のつくり方
通常、資金繰り表は月単位で作成する。しかし、月単位では資金ショートを起こさない場合でも、支払いが特定の日に集中するときなどは、月中に資金ショートが発生する場合がある。
また、前月からの繰越金が少なく、支払いが回収より先にくるような場合にも資金ショートが起こる。このような場合には、日々の資金収支を管理する資金繰り表、すなわち日繰り表が必要となる。
とくに、手元資金に余裕のないいわゆる自転車操業の状態では、毎日毎日資金収支を追いかけねばならない。
日繰り表作成のポイント
日繰り表は、資金に余裕がなく、日々の資金を正確・迅速に追いかけるためにつくるものであり、資金ショートを回避するための管理資料である。
その作成のポイントは、次の2点である。
・一覧性があること
・修正がきくこと
下図の例のように、縦に日にち、横に項目をとることや1日の欄を2段にしておくことも、修正がしやすく、実用的である。
とくに支払手形の決済は、その日と金額を正確に前もって記入しておく必要がある。
銀行提出用資金繰り表のつくり方
資金の借入を申し込んだとき、銀行が知りたい内容は、その会社の業況・返済能力・将来性や他行との取引条件などの項目である。
したがって、これらを満たす資料(書類)として会社概況や3期分ぐらいの決算書・売上の実績(商品別・客先別)などに加えて、当然、資金繰り表を提出しなければならない
そのときには、資金計画を基に、過去の実績と今後の予定を提出する。
つくり方のポイントとしては、資金の使途が何であるか、その必要金額はいくらかを明確にした資金繰り表をつくらなければならない。具体的には、次の点を盛り込むことが肝要である。
・定常分の資金収支の過不足はどうか
・投資(設備投資・出資・融資)の金額がどれくらいか
・過去の借入金の返済はいくらか
・新たな借入金はいくらか
借入金は、長期と短期に分けて、個別に欄をはっきり分けて作成することである。
この資金繰り表を基に、会社の状況説明や借入申込みをすることになる。
著者
石田 昌弘(元オムロン株式会社経理部長)
2011年12月末現在の法令等に基づいています。
資金繰り表の役割
資金繰りとは、一定期間における資金の収入と支出を一定の区分に従い集計して、資金の過不足の調整をとることである。
その内訳を一覧表にしたのが資金繰り表であるが、資金繰り表には予定(見積り)と実績があり、これを分析・検討・調整することが資金管理の重要な役割といえる。
また、資金の過不足の調整という目的からすれば、実績よりも正確な見積資金繰り表の作成のほうがより重要となる。
しかし、資金繰り表には限界がある。資金の収入と支出の内訳はわかるが、どうして過不足が生じているかという原因の内訳まではわからない。
そのために、資金収支の改善には繋がらず、その役割は別項の資金運用表や資金移動表に譲ることになる。
資金繰り表の基本原則
資金繰り表には、所定の様式はなく、必要に応じて各企業が自社に合ったものを作成すればよい。
しかし、資金の過不足をバランスさせるという目的を達成するためには、基本的な原則はある。それは家計簿と同じように、必ず、
1.前月繰越し(または前日繰越し)
2.収入
3.支出
4.翌月繰越し
の4項目から成り立っていることである。
さらに、「収入」と「支出」については、定常的な項目と定常外(非定常的)の項目がある。
定常外収入は、投資有価証券売却など「投融資の戻り収入」と、定期預金戻りなど「財務収入」に分かれる。
定常外支出は、出資や設備購入など「投融資支出」と定期預金や借入金返済などの「財務支出」に分かれる。
これらの資金収支管理をどのような区分で把握するかにより資金繰り表の様式は4分法とか6分法・8分法などに分かれる。なお、言葉として「定常」ではなく「経常」が使われることもある。
定常の項目については、どの企業もほぼ同じ内容となる。一方、定常外についての区分は、財務収支の金額の大きさや頻度により、設定する項目を決めることになる。
また、繰越しについても、現金と当座預金だけにするのか、定期預金も加えるのかなどがポイントとなるが、作成趣旨からはすぐに資金化できるもの(現金、当座預金、短期運用資金)に限定すべきである。
最後に期間の問題があるが、毎日、旬間、月間、3か月、半年、1年間、数年間の単位がある。目的に応じて必要な期間の資金繰り表を作成することになる。
資金繰り表の種類
資金繰り表には、前述のとおり定められたものはなく、様式は自由となるが結局のところ次の3つの要素を目的に応じて配列した様式を自社でつくることになる。
1.項目の区分けと細分化
2.対象期間
3.予実対比か予定or実績のみか
また、自社の資金繰り表の様式を決めるに当たっては、資金の動きがわかりやすく、将来の計画や管理にも使いやすいものでなければならない。いたずらに項目を細かく分けても、かえって使いにくいものである。
様式のサンプルは下表だが、ポイントは次のとおり。
・定常的な活動収支の資金過不足を見たいか
・借入金や拘束預金などの財務収支が頻繁にあるか
・収入と支出を明確に分けたいか
・手形の割引は常時あるか
・時系列で管理するか
・将来の資金繰りをわかりやすくするために、受取手形・支払手形の残高を参考記入しておくか
資金繰り表の作成時期
通常、資金繰り表は、資金のサイクルに合わせて毎月作成し、3か月ぐらい先の分までをつくる。さらに、月のいつ作成するかは、資金ショートを発生させないことを前提とするので、当月または翌月の支払いが確定したときが最善といえる。
また、支払時期や回収が不確定で資金不足の発生が心配な場合には、旬単位や日繰りも必要となる。
資金繰り表の作成手順
資金繰りは、経理部(財務部)の仕事であり、資金繰り表を作成するのも経理部である。
しかし、資金収支の発生する行為そのものは経理部以外の部門であり、見積資金繰り表を作成するには他部門から資料・情報を入手しなければならない。
資金不足が心配なときは、各部門からの計画(見積り)数値をそのまま使うかどうかも判断を要するところである。
日繰り表のつくり方
通常、資金繰り表は月単位で作成する。しかし、月単位では資金ショートを起こさない場合でも、支払いが特定の日に集中するときなどは、月中に資金ショートが発生する場合がある。
また、前月からの繰越金が少なく、支払いが回収より先にくるような場合にも資金ショートが起こる。このような場合には、日々の資金収支を管理する資金繰り表、すなわち日繰り表が必要となる。
とくに、手元資金に余裕のないいわゆる自転車操業の状態では、毎日毎日資金収支を追いかけねばならない。
日繰り表作成のポイント
日繰り表は、資金に余裕がなく、日々の資金を正確・迅速に追いかけるためにつくるものであり、資金ショートを回避するための管理資料である。
その作成のポイントは、次の2点である。
・一覧性があること
・修正がきくこと
下図の例のように、縦に日にち、横に項目をとることや1日の欄を2段にしておくことも、修正がしやすく、実用的である。
とくに支払手形の決済は、その日と金額を正確に前もって記入しておく必要がある。
銀行提出用資金繰り表のつくり方
資金の借入を申し込んだとき、銀行が知りたい内容は、その会社の業況・返済能力・将来性や他行との取引条件などの項目である。
したがって、これらを満たす資料(書類)として会社概況や3期分ぐらいの決算書・売上の実績(商品別・客先別)などに加えて、当然、資金繰り表を提出しなければならない
そのときには、資金計画を基に、過去の実績と今後の予定を提出する。
つくり方のポイントとしては、資金の使途が何であるか、その必要金額はいくらかを明確にした資金繰り表をつくらなければならない。具体的には、次の点を盛り込むことが肝要である。
・定常分の資金収支の過不足はどうか
・投資(設備投資・出資・融資)の金額がどれくらいか
・過去の借入金の返済はいくらか
・新たな借入金はいくらか
借入金は、長期と短期に分けて、個別に欄をはっきり分けて作成することである。
この資金繰り表を基に、会社の状況説明や借入申込みをすることになる。
著者
石田 昌弘(元オムロン株式会社経理部長)
2011年12月末現在の法令等に基づいています。
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