ビジネスわかったランド (経理)

売上、売掛金の管理

海外の取引先の信用調査と情報収集の仕方は
 直接頻繁に接触できる国内取引先とは異なり、日本にいながらにして入手できる信用調査会社やネットなどからの情報収集に務める。
取引先の信用調査を行なうことは、海外の与信管理の基本である。新規取引先はもちろんのこと、既存取引先についても定期的な調査を実施したい。

活用すべき外部情報と内部情報
信用調査のための情報収集は、大きく外部情報と内部情報に分かれる。外部の調査会社を活用することはもちろん、与信取引申請書や Trade Reference(トレード・レファレンス=企業照会)などを活用して、自社で情報を収集することが基本となる。
また、過去の取引実績は案外、見過ごされがちだが、自社以外では決して入手できない非常に貴重な信用情報である。取引に関する情報を社内で蓄積し、関係部門が必要なときに閲覧できるようにしておくことが大切である。データベース上に保存し、社内LAN等で関係部門すべてがアクセスできる形が望ましい。
外部情報を活用する目的は、内部情報では入手できない項目をカバーしたり、顧客の申告ベースで入手した情報の正当性を検証したりすることにある。国内の取引先であれば、営業担当者が連絡をとったり訪問したりすることによって、各種の情報を収集することが可能である。
しかし、これが海外の取引先となると、入手できる情報にはおのずと限界がある。海外に支社や支店があればよいが、出先機関がない場合は、よほど取引金額が大きくない限り、頻繁に日本から担当者を出張させるわけにもいかない。
したがって、日本にいながらにして、いかに多くの情報を入手できるかがポイントとなる。

海外の取引先信用調査の主な情報源は、以下のとおりである。

<外部情報>・取引先
・仕入先(トレード・レファレンスによる支払情報)
・銀行(平均預金残高、借入れ、担保の有無)
・信用調査会社(基本情報、格付け、支払情報、財務情報、公的情報、業務内容)
・登記所、裁判所、行政当局、証券取引所
・ディレクトリ(会社年鑑)
・インターネット
・海外の新聞、雑誌、業界紙
・取引先の国の大使館、投資促進センター
・JETRO、日本貿易保険

<内部情報>
・過去の取引実績
・営業部門からの定性情報

業種・業界全体の動向も押さえる
顧客から直接入手できる情報も貴重で、とくにインターネットが発達した現在では、顧客のホームページから取得できる情報も意外に多い。
取引先の経営危機に関する兆候を事前に察知するには、企業の個別状況を把握することは大切だが、業種・業界全体の状況を把握しておくことも同じように重要である。
たとえば、米国では、National Associates of Credit Managers(NACM、全米与信管理協会)が主宰している各業界の団体に加盟すれば、業界の信用情報や最新動向を入手することができる。また、取引先の国の主要経済紙を購読すれば、経済全体の動向や取引先の業種の変化を比較的容易に知ることができる。
しかし、取引先が全世界にわたる場合、すべての国の主要紙を購読し、目を通すことは実務上、不可能である。ここに挙げた情報を自社で収集することも大切だが、そのコストや手間を考えると、信頼できる信用調査会社を活用するほうが安価に済む場合もある。これらの対応とコストについては、自社の海外売上の規模や比率などから検討する必要がある。

著者
牧野 和彦(ナレッジマネジメントジャパン株式会社代表取締役、与信管理コンサルタント)
2007年12月末現在の法令等に基づいています。