ビジネスわかったランド (経理)
資金繰りと資金管理
借入金額の計算と返済計画の立て方は
借入にはつきものの拘束預金。それに対応するには必要資金の30%増程度の借入計画を立てることが必要となる。
借入金の種類
資金不足となる原因には、大きく5つある。
1.運転資金の増加
2.業績悪化(赤字)資金
3.季節資金
4.設備資金
5.借入金返済資金
このうち、滞留売掛金や不動在庫など底溜りのものを除く運転資金と季節資金については、それだけに限れば資金調達も容易であり、返済に苦労することもない。
しかし、赤字資金と設備資金については、借入が必要なときにはその金額と返済の計画をしっかり立てておく必要がある。
借入金額と返済計画
必要設備資金の調達としては、「自己金融」「資産処分」「増資」を検討した後、それで無理な場合は「借入金」の導入となるが、借入金額を計算するときは、次の2つに留意しておくこと。
・イザというときのために借入余力を残しておくこと(担保やすぐに割り引ける手形など)。
・借入には拘束預金がつきものであり、必要資金の30%増ぐらいの借入が必要となる。
次に借入金の場合、当然、「借入金額≦返済可能額」が前提であり、返済可能額は、留保利益と減価償却費の合計のいわゆるキャッシュフロー(自己金融)と呼ばれるものである。
また、借入期間は、具体的にはその設備の使用年数を前提とし、5年を目安として返済できる金額とすべきである。
短期の借入を繰り返すいわゆる“ころがし”も考えられるが、短期借入は、調達が比較的容易で、コストが低いメリットもあるが、資金の安定性としては不測の事態に対応できない点に注意を要する。
また、借入可能額は、現在の借入残高、担保の余裕度からも制限されるが、銀行サイドからは、一般に、個別企業への貸付限度額を「売上高」「支払利息金額」「返済原資」などで判断することになっている。
なお、無理な借入額は財務体質を悪化させる要因となるから注意が必要である。
もちろん、必要金額が借入不能の場合や返済のための借入が必要となるときは、設備投資の見直し・縮小も考えねばならない。
設例に見る投資の借入金額と返済計画の立て方
設備投資の借入金額とその返済計画の立て方について、具体例を設例で見てみよう。
1.設備投資の内容
・取得価額……1億円
・耐用年数……5年間
・償却方法……定額法
2.投資による損益計算
・売上増……年間2億円
・金利控除前利益増……年間2,000万円
3.その他前提条件
・借入に伴う拘束預金は30%(拘束預金の受取利息は考慮しない)
・借入金利は、長期5%、短期4%
・運転資金の月数は2.4か月
・実効税率42%
まず、設備投資による利益計画が立てられる。様々な事情により、必ずしも計画どおり進むとは限らないが、資金計画は、利益計画をベースとせざるを得ない。
次に借入金額だが、取得価額をすべて借入金とする場合、必要借入金額は、拘束預金も入れると、
1億円÷(1-0.3)≒1.4億円
となる。
金利の計算は、5年返済として、
1年目……1億4,000万円×5%=700万円
2年目……1億1,200万円×5%=560万円
3年目……8,400万円×5%=420万円
4年目……5,600万円×5%=280万円
5年目……2,800万円×5%=140万円
となる。
運転資金分の金利は、毎年、
2億円×2.4か月÷12か月=4000万円(運転資金増加分)
4000万円×4%=160万円となる。
この例では、計画どおり進めば資金が余り、その分、他に借入金があれば、その返済原資となり、資金繰り(ただし、増加運転資金は考慮せず)が楽になる。
著者
石田 昌弘(元オムロン株式会社経理部長)
2011年12月末現在の法令等に基づいています。
借入金の種類
資金不足となる原因には、大きく5つある。
1.運転資金の増加
2.業績悪化(赤字)資金
3.季節資金
4.設備資金
5.借入金返済資金
このうち、滞留売掛金や不動在庫など底溜りのものを除く運転資金と季節資金については、それだけに限れば資金調達も容易であり、返済に苦労することもない。
しかし、赤字資金と設備資金については、借入が必要なときにはその金額と返済の計画をしっかり立てておく必要がある。
借入金額と返済計画
必要設備資金の調達としては、「自己金融」「資産処分」「増資」を検討した後、それで無理な場合は「借入金」の導入となるが、借入金額を計算するときは、次の2つに留意しておくこと。
・イザというときのために借入余力を残しておくこと(担保やすぐに割り引ける手形など)。
・借入には拘束預金がつきものであり、必要資金の30%増ぐらいの借入が必要となる。
次に借入金の場合、当然、「借入金額≦返済可能額」が前提であり、返済可能額は、留保利益と減価償却費の合計のいわゆるキャッシュフロー(自己金融)と呼ばれるものである。
また、借入期間は、具体的にはその設備の使用年数を前提とし、5年を目安として返済できる金額とすべきである。
短期の借入を繰り返すいわゆる“ころがし”も考えられるが、短期借入は、調達が比較的容易で、コストが低いメリットもあるが、資金の安定性としては不測の事態に対応できない点に注意を要する。
また、借入可能額は、現在の借入残高、担保の余裕度からも制限されるが、銀行サイドからは、一般に、個別企業への貸付限度額を「売上高」「支払利息金額」「返済原資」などで判断することになっている。
なお、無理な借入額は財務体質を悪化させる要因となるから注意が必要である。
もちろん、必要金額が借入不能の場合や返済のための借入が必要となるときは、設備投資の見直し・縮小も考えねばならない。
設例に見る投資の借入金額と返済計画の立て方
設備投資の借入金額とその返済計画の立て方について、具体例を設例で見てみよう。
1.設備投資の内容
・取得価額……1億円
・耐用年数……5年間
・償却方法……定額法
2.投資による損益計算
・売上増……年間2億円
・金利控除前利益増……年間2,000万円
3.その他前提条件
・借入に伴う拘束預金は30%(拘束預金の受取利息は考慮しない)
・借入金利は、長期5%、短期4%
・運転資金の月数は2.4か月
・実効税率42%
まず、設備投資による利益計画が立てられる。様々な事情により、必ずしも計画どおり進むとは限らないが、資金計画は、利益計画をベースとせざるを得ない。
次に借入金額だが、取得価額をすべて借入金とする場合、必要借入金額は、拘束預金も入れると、
1億円÷(1-0.3)≒1.4億円
となる。
金利の計算は、5年返済として、
1年目……1億4,000万円×5%=700万円
2年目……1億1,200万円×5%=560万円
3年目……8,400万円×5%=420万円
4年目……5,600万円×5%=280万円
5年目……2,800万円×5%=140万円
となる。
運転資金分の金利は、毎年、
2億円×2.4か月÷12か月=4000万円(運転資金増加分)
4000万円×4%=160万円となる。
この例では、計画どおり進めば資金が余り、その分、他に借入金があれば、その返済原資となり、資金繰り(ただし、増加運転資金は考慮せず)が楽になる。
著者
石田 昌弘(元オムロン株式会社経理部長)
2011年12月末現在の法令等に基づいています。
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