ビジネスわかったランド (経理)

現金、手形等の管理

金銭出納に伴う不正とその防止法は
 現金・預金に関して不正や誤謬が発生しやすいのは、何といっても日常の金銭出納時である。不正の起こりにくい管理体制や金銭出納のしくみづくりを欠かすことはできない。前項で取り上げた基本的な管理法に加えて、次のようなポイントがある。

<< 日常の金銭出納の実務ポイント >>

出納担当者の定期的な交替や内部監査も有効
前項のように、出納業務を分担させるようにしても、これらの者が共謀により不正を働く場合や、人員の都合で複数の担当者を配置できない場合もある。このような場合は、経理部門以外の者による内部監査によって補うようにする。
また、出納業務の一部を特定の従業員に長期にわたり担当させることは、業務の能率が向上する反面、横領等の不正を生じさせる可能性を高くするといえる。したがって、内部管理上は、現金出納担当者を定期的に交替させるのがよい。
さらには、不正の発生を事前防止するには、一般的に、現金出納担当者に次表のような業務を兼ねさせないほうがよい。


領収証の管理を徹底
現金・小切手・手形による収納には、領収証を発行する。未使用の領収証用紙は、出納責任者等所定の者が保管し、必要に応じて営業部門等に交付する。この際、交付した領収証の番号、部門、担当者名等を把握できるよう管理簿を作成する。
領収証に使用する印鑑は、領収証用紙とは別に金庫等に保管することとし、未使用の領収証用紙にあらかじめ押印しないようにする。また、主要な取引先に対して、領収証に使用する印鑑を届け出ておくことは、領収証の不正使用を防止するには有効である。
逆に金銭の支払いでは、領収証の入手を徹底する。従業員が交際費等を立て替えた際に、領収証の入手漏れがある場合には、原則として支払いを承認しない。
主要な取引先に関しては、領収証に使用する印鑑の届出を受けておき、現金支払担当者が取引担当者より領収証を受け取る際にこれと照合するという手続きをとれば、領収証の改ざん等不正使用を事前に防止することが可能である。
また、領収証の年月日にも注意する必要がある。年月日の記載のないものや、かなり古い日付のものに関してはとくに注意を払い、場合によっては支払いを認めないことも必要である。

取引先への残高確認
主要な取引先には、定期的に残高確認書を送付し、相手先の帳簿残高との整合性を確かめる。これにより、取引先から回収した売上代金が適切に会社側で入金処理され、回収担当者等により着服されていないか、また、支払うべき金銭が相手先に適正に支払われ、支払手続きの過程で不正が発生していないかがわかり、管理上きわめて有効である。

収納金銭を支払いに充てない
売上代金等を現金で収納したときは、これを経費の支払いに直接充当せずに、いったん銀行に預け入れる。そうしないと、後日、その取引のなかで不正が発覚した場合、収納・支出のどちらの手続きの際に不正が行なわれたのかが、うやむやになってしまうからである。

二重支払いの防止
支払担当者は、金銭の支払いが済んだ出金伝票と証憑書類には支払済の印を押すなどして、二重支払いを防止する必要がある。また、仮領収証による金銭の支払いはできるだけ避け、本領収証の入手を待ってから支払いを行なうようにすれば、仮領収証と本領収証による二重支払いを防止することができる。

<< できるだけ銀行振込みを活用する >>

現金・預金を直接扱う機会を減らす
売上代金、仕入代金や経費については、現金や小切手、手形で扱う機会をできるだけ少なくし、銀行振込みによるようにする。そうすれば、営業マン等による回収代金の着服や、領収証の不正発行による着服などを防げるとともに、移動中の盗難や紛失等も防げる。
一方、支払いについても銀行振込みにすると、小切手の不正発行による着服などの不正を防げるとともに、支払いに備えて支払担当者が保管すべき現金の額を少なくすることができ、手元現金の横領等の不正や盗難・紛失の発生割合を低くできる。
また、銀行経由の場合、銀行側に取引の記録が残るので、管理上も有効である。

迅速な入金処理と当座勘定照合表等との照合
銀行振込みによる入金は、入金の事実を迅速に把握するようにすべきである。振込入金されたにもかかわらず会社側の処理が行なわれないと、銀行の預金残高と会社の帳簿残高との間に差異が生じる。迅速に処理がなされず、常に差異が生じているようでは、不正が行なわれていても即座に発見することができない。
そのため、記帳をこまめに行なう、あるいは、ファクシミリやパソコンを利用して振込入金明細を入手するなどにより、入金処理を速やかに行なえるような状況を整えておく。
また、前項でも指摘したように、当座勘定照合表や預金通帳により、不明な出金がないかどうかの確認を怠らない。振り出した手形や小切手が支払期日または一定の期間内に適切に支払われているかどうかも、当座勘定照合表により確かめる。

著者
許 仁九(仰星監査法人・公認会計士)
2011年3月末現在の法令等に基づいています。