ビジネスわかったランド (経理)

現金、手形等の管理

受け取った手形・小切手が所在不明になったときは
 手形や小切手の管理に万全を期していても、万が一紛失したり盗難に遭ってしまうという不測の事態が起こらないとはいえない。そうした際は、手形、小切手それぞれの特性に応じて対処していかなければならない。

所在不明の受取手形は無効にする
受取手形の紛失や盗難などに遭って所在不明となり、手形の呈示ができない場合は、手形上の権利は失われていないが、それを行使することができないこととなる。
そのため、手形の振出人に再度手形の発行を依頼しなければならないが、不明の手形がどこかで流通し、何も知らない第三者(「善意の第三者」という)が適法かつ重大な過失なしに手形を入手し(「善意取得」という)、その手形を呈示した場合、債務者は支払いを行なう必要がある。
つまり、不明手形について、善意取得者がいないことを確認する前に再発行したり支払いを行なったりすると、手形の振出人にとって二重払いになってしまう危険があるため、そのままでは再発行には当然応じてくれない。
そこで、受け取った手形の所在が不明の場合の対策としては、まず次の表のような手続きを経て手形を無効にすることである。

なお、公示催告中に手形の権利を届けたものがある場合は、裁判によって正当な権利者を決定する。

小切手が所在不明の場合は
受け取った小切手を紛失したり、盗難に遭ったりしても、その人が小切手に対する権利を喪失してしまうものではない。また、所在のわからなくなった小切手が善意の第三者の手に渡ってしまったら、その善意取得者が権利を主張できることは、手形の場合と同様である。
したがって、小切手を紛失したり盗難に遭ったときは、振出人に連絡をとって支払銀行に対して事故届を出してもらい、銀行に小切手の支払いを拒絶してもらうことが先決である。これを支払委託の取消しという。もちろん、同時に、警察にも遺失届を提出し、遺失受理証明書をとる。支払委託の取消しは、法的には、小切手の呈示期間経過後でないと効果は生じないが、支払人が支払いを拒絶することは自由なので、実務上は事故届が出ていれば、支払銀行は、支払いをなさないであろう。すなわち、小切手が呈示されないいまま呈示期間が過ぎれば、支払委託の取消しの効果が生じ、銀行は小切手の支払いをしないわけである。その時点で振出人には当該小切手の支払義務はなくなって、紛失した手形のように公示催告や除権判決は不要ということである。紛失者が小切手の受取人であれば、その時点で振出人に小切手を振り出してもらうように交渉すればよい。

著者
田邉 太郎(公認会計士・税理士)
2011年1月末現在の法令等に基づいています。