ビジネスわかったランド (経理)

現金、手形等の管理

手形を振り出すときの注意点は
 支払手形の管理に当たっては、取引の記録を網羅的で正確に行なうことにより、取引状況が明確に把握できるよう、厳密な管理を行なうことが大切であるが、不正や誤謬を事前に防止するためには、手形を振り出すときに適切な手続きをとることが重要である。振出時の注意点としては、手形用紙の管理と、適切な発行手続きの遵守である。

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署名、捺印者(銀行届出印)は手形作成者と分離しているか
手形用紙の作成者、保管者、手形署名捺印者、銀行届出印保管者が同一の場合は、支払手形の振出作業が当該担当者のみによって行なわれることとなる。
これでは手形の不正発行の危険性が高くなるため、内部牽制上不適切で、できるだけそれぞれの担当者は分離すべきである。要員の関係上、分けるのが無理な場合は、少なくとも署名捺印を責任者の管理下で行なうようにする。
手形の作成者は、責任者の管理下でないと銀行届出印を取り扱えないようにするとともに、日頃から会社の銀行届出印と手形用紙の保管、受払管理を厳しく行ない、手形事故の予防に努めることが大切である。

手形は用法に従って作成されているか
手形に関する銀行との取引約款には、当座勘定規定、手形用法と銀行取引約定書がある。
このうち手形用法には具体的な手形の記載方法が決められており、それに反したために生じた損害については銀行は責任を負わないことになっているので、注意をしなければならない。
とくに金額欄記載方法の相違は、手形交換所規則による不渡事由の1つに例示されているので留意したい。
また、手形金額の記載には、チェックライターを使用する等、手形用法どおりに記載しておけば、変造等の事故防止にもなり、自社責任を免れるための根拠にもなるので、手形用法どおりの記載を心掛けることが大切である。
近年の経理システム(パソコン・ソフト)では、支払予定から適時かつ自動的に手形用紙に必要事項を印刷できるものもある。印紙の組合せが最も安く上がるように自動的に手形を分割してくれる機能もあるので、大いに利用すべきである。

約束手形の振出し、為替手形の引受けの手続きは適切か
支払いの予定に従って手形を振り出すときは、所定の責任者の検閲・承認を受ける。
責任者は、金額、期日、振出目的等について間違いがないか確認するとともに、手形要件の記載方法が適法に行なわれているかを検査する。

支払依頼票に基づき振り出す
支払手形は、手形作成担当者以外の者によっては作成されず、所定の責任者の認印を受けた支払依頼票または手形振出依頼書に基づいて発行するという決りを必ず守る。

交付されるまでの保管は適切に行なう
本来、支払手形の振出しは支払時に記名捺印するのが望ましいが、手形枚数が多量である等の理由で、所定の支払日の支払いに備えて手形をあらかじめ記名捺印を行なった状態で社内に保管しておくことがある。
このような支払手形については、受取手形と同様に大金庫に保管するなど、その保管に十分注意しなければならない。
なお、何らかの理由で所定の支払日に支払先に引き渡されなかった未渡手形の場合も同様である。

支払手形の送付は適切な方法で行なう
手形の送付は危険を伴うため、郵送の場合には書留郵便の利用や保険の設定等必要な措置を講じる。また、支払担当者が長時間持ち歩くことも避ける。

手形振出し・引受け後、会計伝票は速やかに元帳記帳担当部署に回付
約束手形の振出しや為替手形の引受け後、仕入先元帳の記帳担当者へ速やかにその旨を連絡することは、二重払い等の誤謬や着服等の不正の発生を防止するだけでなく、不正・誤謬の発生を適時に発見し、対処するためにも必要である。

支払記録は領収証と照合する
相手方の支払手形の受領を確認するため、領収証を収受し、支払記録がそれに基づいているかを確認する。あらかじめ相手先から届けられている記名捺印の印章と、領収証の印章を照合し、事故の発生を予防する。
また、当該領収証には、対応する請求書を添付しておくことが望ましい。

融通手形の発行は禁止する
融通手形は非常にリスクを伴う手形である。融通手形の発行は、理由の如何を問わず、禁止されていなければならない。

著者
田邉 太郎(公認会計士・税理士)
2011年1月末現在の法令等に基づいています。