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設備投資

設備投資の採算チェックの仕方は
 設備投資の採算チェックをする方法としては、投資利益法、回収期間法、現在価値法などが代表的。予想収益、予想コスト、処分見込額等は、客観的資料に裏付けされた合理的根拠に基づいて算出し、慎重に判断することが大切である。

設備投資の経済計算法
設備投資の採算チェックをするための代表的手法として、次のものがある。


原価(収益)比較法
コストダウンを目的とする投資の場合は、既存設備によるコストと新規設備によるコストを比較して、コストダウンの効果によって設備投資の経済計算を行なう。

 現状のコスト-新設備によるコスト

一方、増産投資のように売上や生産能力の増加を期待する設備投資の場合は、投資によって得られる増加収益の予想額からコストの増加予想額を差し引いた収益の金額を比較して経済計算を行なう。

 増加収益の予想額-増加コストの予想額

投資後の売上や生産高が確定していない場合にも、原価比較法は有効である。旧設備によるコストと新設備によるコストのそれぞれを変動費と固定費に区分して、新旧それぞれの設備について損益分岐点売上高を算出し、目標利益を達成するために必要な売上高を求めて比較検討することができる。
いずれにせよ、原価比較法では、投資額との関連が減価償却費の増加として反映されるだけである。

投資利益率法
そこで、設備投資で得られるコストダウンまたは増加収益の効果を、投資に対する収益性で判定するのが投資利益率法である。利益率が高いほど収益性が高いと判定される。

分母の投資額には、設備投資額だけでなく、増加運転資本を含めること。また、取替投資の場合は、新規投資の金額から旧設備の売却収入を差し引くこと。
分子の投資利益は、借入利息や法人税等の負担を考慮しないのが一般的である。

回収期間法
設備資金の借入期間を検討するには、回収期間法を利用する。回収期間が短いほど、採算性がよいと判定される。

分子の投資額も、分母の投資利益も、キャッシュフローでとらえることがポイントである。
分母の投資利益は、税引後利益に減価償却費を加算して求める。借入利息も法人税等も、負担したキャッシュフローとなる。
分子の投資額は、処分時の処分見込額を控除しないのが一般的。
設備投資額が、その投資によって得られる利益(資金)で回収できる期間を比較して検討する。
したがって、投資額を回収した後のキャッシュフローは考慮されない。

現在価値法
投資期間中に期待されるキャッシュフローの現在価値を、投資総額と比較して投資採算性を検討する。時の経過による資本コストを考慮する点で他の方法と異なる。


投資額比較法
厚生施設のように利益を直接の目的としない投資の場合は、経済計算になじまないので、投資の金額を比較して検討する。
この場合も、単に投資額の大小を比較するだけでなく、投資後の維持費などのコストについても比較検討を要する。
むしろ、利益を直接の目的としない投資の場合は、投資の必要性、優先順位、規模の適切性などから総合的な判断がポイントとなる。

合理的根拠に基づいた採算チェックが必要
設備投資後の予想収益や予想コスト、処分見込額、利子率等は、客観的資料に裏付けされた合理的根拠に基づいて算出し、慎重な判断が必要である。
信憑性のない甘い見積りでは、設備投資の採算チェックは有効に機能しない。
〔例〕
新設備に対する投資額は3億円。現有設備の売却見込額は5,000万円。新設備と現有設備のコスト負担を比較すると、次のとおり。

1.投資利益率法による採算チェック
投資額=3.0-0.5=2.5億円
投資利益=(1.1-0.0)-(0.9-0.1)=0.3億円
投資利益率=0.3÷2.5=12%
2.回収期間法による採算チェック
投資利益=(1.1-0.9)+(0.3-0.1)=0.4億円
回収期間=2.5÷0.4=6.25年

著者
渡辺 昌昭(公認会計士・税理士)
監修
税理士法人メディア・エス
2010年8月末現在の法令等に基づいています。