ビジネスわかったランド (経理)

資金繰りと資金管理

なぜ銀行員は疑り深いのか?

銀行員が疑り深い理由を理解し、借りる側にとって不快な質問にも冷静に対応することが肝要です。

●人を疑うのが職業病■
「警察官と銀行員はすぐに人を疑う」──私は銀行員時代に、こんな言葉を顧客からいわれたことがあります。
好きで疑っているわけではないのですが、第1章でも述べたとおり、すぐに人を疑ってしまうほど、裏切られたというか、結果的にだまされた経験を銀行員はしているのです。
「絶対に返します! 大丈夫です!」という言葉を信じて融資をしたにもかかわらず、遅れ遅れの返済となっている事実。借りた側に悪気はないのは理解していても、どうも釈然としない──そんな経験が銀行員を疑い深くしてしまうのです。

●気分はよくないがこらえよう
そんな銀行員の事情など理解せぬまま融資の相談を持ちかけ、人を疑うような質問ばかりを投げかけられたらどうしましょう?
「もし、返済できない場合は……」とか、「おっしゃるとおりの売上を確保できない場合は……」、「当てにされている取引先から受注が止まったら……」など、後ろ向きの話題ばかりを振られて、やる気に水を差される──銀行でそんな対応をされるのは珍しいことではありません。
決して気分のいい話ではありませんが、このようなことが実に多いのです。しかし、ここはグッとこらえて大人の対応をしてください。
つまり、上述のように、銀行員は過去にさまざまな経験をしており、ましてや不景気のご時世では不良債権化する融資件数も増え、返済面でも不安になるあまり、「もしも……」と考えてしまうのはやむをえないことだと理解してください。
もちろん、そうであっても、顧客との会話を和やかに進めようとしない銀行員の話術自体にも、改善の余地はあると思います。
しかし、見込んでいた売上を確保できない場合、また、受注先からの取引減少などは、銀行員に問われるまでもなくごくありふれたリスクです。そのリスクに対して、あなたがどんなマネジメントをしているのかを問われているのだ、と気持ちを切り替えることができるなら、少しは腹の虫も治まることでしょう。

●感情的になるのはご法度
疑り深い質問をされたとしても、堂々と回答できればなにも問題はないわけです。ですから、感情的になって、「ワシの言うことが信用できないのか!」はご法度です。このような経営者は、“その取引先の顧客に対しても感情的な対応をする”と推測され、トラブルが絶えない顧客とまで拡大解釈されてしまいます。冷静な対応を心がけてください。

 

著者
石橋 知也(資金調達コンサルタント)
2009年4月末現在の法令等に基づいています。