ビジネスわかったランド (経理)

資金繰りと資金管理

融資交渉の席で録音テープを使っても問題ないか?

融資の話を録音するような客のところに銀行員は来ません。録音テープは絶対に使わないようにしましょう。

●銀行員との会話を録音して、役に立つのか?
最近、ICレコーダーがよく売れているそうです。ICレコーダーとは小型の録音テープのようなもので、1万円前後の値段で販売されています。マスコミ関係者以外の一般の人たちが、いつ必要なのかは疑問ですが、売行きは好調なようです。
そのICレコーダーを融資の交渉の際にポケットに忍ばせて、銀行員との会話を録音しておく経営者もいるようです。しかし、この録音内容をいつ、どのような場面で使うのでしょう?
結局は、融資の交渉が不調に終わったときに、「おまえはこの前、『融資は何とかします』って言っただろ!」と文句をいいいながら使うのが関の山ではないでしょうか。

●録音テープがあると、まともな会話ができない
銀行員を追い込んで融資を迫るつもりで会話を録音しておくのであれば、腹を割った話をしようにも銀行員としては怖くてできません。うわべだけの、当たり障りのない会話に終始せざるを得ません。
誰だって、会話を録音して今後もトラブルとなりそうな経営者を本気で応援しようとは思わないものです。
銀行員の立場になって考えてみてください。たとえば、経営者自身と取引先の社長との交渉内容がICレコーダーで録音されていたら、その社長とはまともな会話をしようとは思わないのではありませんか。
ましてや、融資の交渉を録音して融資を迫り、その結果なんとか融資を得られたとしても、もうその金融機関との信頼関係は崩れてしまい、二度と融資をしてもらえなくなるでしょう。

●公的金融機関にテープを使ってはならない!
銀行や信用金庫など民間の金融機関の場合は、横のつながりが希薄なため、会話を録音して融資を迫ったとしても、他の銀行等に知られることはまずないと思います。
しかし、信用保証協会や日本政策金融公庫などに対してはご法度です。絶対にテープで録音などしてはいけません!
民間金融機関なら「AがダメならB」といったこともできますが、公的金融機関には代わりがありません。録音などをしたために信用を失い、背を向けられるのは、命綱をなくすのと同じことです。
公的な金融機関でなくても、会話を録音しようとする経営者は、たとえ担当者が代わっても、“要注意人物”として引き継がれていきます。
どんなに融資金がほしくても、くれぐれもこのような手法はとらないようにしてください。

 

著者
石橋 知也(資金調達コンサルタント)
2009年4月末現在の法令等に基づいています。