ビジネスわかったランド (経理)

資金繰りと資金管理

現預金を持っているのが"強い会社"なのか?

銀行は、融資先のリスク対応力を査定しています。その際、かつては不動産を持つ会社が評価されていましたが、現在は現金をたくさん持っている会社です。


●銀行は中小企業の真の体力を測る「資産査定」をしている
銀行は、監督省庁の金融庁から検査を受けます。その検査では、銀行本体の財務体質から人事制度まで、多岐にわたる検査が行なわれます。
なかでも特に時間をかけるのが、貸出先が健全な財務体質であるかどうか、正常先なのか要注意先なのかなど、中小企業の真の財務体質を査定する作業です。
貸借対照表の左側は「資産の部」となっていますが、この資産として計上されている各項目が、本当に額面どおりの金額価値があるのか、これを査定するわけです。
特にターゲットとなるのは、土地・建物などの不動産です。


●銀行が好むのは換金しやすい資産を持つ会社
バブル期などでは、“不動産を持つ会社=強い会社”だったかもしれません。しかし今日では、銀行から見た強い会社は、現金をたくさん持っている会社となっています。
ただし、実際に現金をたくさん持っていても置く場所に困るので、決算書上では、預金などの資産を多く持つ会社こそが強い会社なのです。
現預金は換金性100%の資産です。たとえば、商品の返品やトラブルなどに対する違約金の支払義務や、売上減少時の従業員への給与支払など、当面の運転資金を確保できているのか、そういったリスクに対するマネジメントができているかなど、銀行は中小企業への融資の判断基準として「現預金」の多寡を見ています。
好景気のころなら、返品のトラブルや売上減少といったリスクも少なかったかもしれませんが、昨今のような消費者の視線が厳しく、物価高などもあって消費マインドが冷え込む状況では、なおさら企業にはあらゆるリスクが想定され、それに対する備えともいえる現預金をいかに多く確保できているか、これが問われているのです。
つまり、トラブルが発生したときの備えとして不動産などの資産をたくさん持っていたとしても、売却に時間がかかります。叩き売られる可能性も高く、購入時より大幅な赤字での売却となることもあるでしょう。これでは、何のための資産なのかといわれても反論できません。


●決算書の上のほうを重くする
貸借対照表の資産の項目は、上から現金、預金、有価証券などの流動資産から、下にある土地、建物といった固定資産へと並べられています。かつては、土地などの固定資産がどっしりあったほうが安定しているように思える時代もありましたが、いまや、上が重いほうが安定している会社となっているのです。

 

著者
石橋 知也(資金調達コンサルタント)
2009年4月末現在の法令等に基づいています。