ビジネスわかったランド (経理)

現金、手形等の管理

融通手形とその見分け方は
 融通手形とは、商取引の裏付けなしに複数の会社間で同額の手形を発行し合い、その手形を割り引くことによって融資を得るものである。基本的に、そうした手形を発行する会社は危険な財務状態にあると判断されるだけに、自社が融通手形を発行しないことはもちろん、融通手形が回ってきたときには慎重に対処しなければならない。その見分け方の要点は、次のとおり。

融通手形のリスク
融通手形は、下図のような形で使われるが、手形借入で振り出される支払手形とはまったく異質のものとして認識しなければならない。

取引先から融通手形の依頼があったり、融通手形らしき手形が回ってきたときには、その取引先は財務的に危険な状態にあると疑って間違いはない。
つまり、自社が融通手形の当事者となった場合には、自社振出しの支払手形は決済されても、相手振出しの手形は不渡りになり、自社が損害を被るおそれがある。
支払手形は、自社が振り出した時点でそれ自体が価値ある有価証券として独り歩きする。当然、相手からの受取手形が決済されないのを理由に、支払手形の決済を免れることはできない。
自社の決算書に融通手形が存在すると、融資が受けづらくなったりすることがあるので注意が必要だ。

融通手形を振り出さないのが原則
融通手形は、以上のようなリスクを伴ったものであるので、経理責任者としては、規程上も、実際上も、原則として融通手形を振り出さないように注意する。
どうしても融通手形を振り出さざるを得ないときは、その後に必ず融通手形の残高が膨らむ傾向になるので、残高が膨らまないように注意する。

融通手形の見分け方
一般的に、次のような場合は、融通手形を疑ってみる必要がある。
1.取引の流れから見て、手形を持ち込んできた会社の通常の取引先とはいえないような会社が振り出した手形が回ってきた場合
2.取引関係から見て、手形金額が予想もできないほど多額な場合
3.持ち込まれる手形の金額が、大きく増加している場合
4.季節的に見て取引額が下がるはずなのに、いっこうに下がらない場合
5.親子会社や役員の交流のあるところなど、関連会社の手形が持ち込まれた場合
6.手形の決済日が一定だった会社が、それ以外の日を決済日としている場合
これらのうち、ある事実に該当するだけで融通手形であると断定はできないが、疑いが高いとして警戒してかかるべきだろう。

融通手形の会計処理
融通手形は、通常の手形とは区分して会計処理を行なう。
具体的には、次のように独立の勘定科目を使用し、残高管理を行なう。
1.融通手形の振出し・受入時
(借)受取融通手形 ×××  (貸)支払融通手形 ×××
2.手形の割引時
(借)現預金   ×××  (貸)受取融通手形 ×××
手形売却損 ×××
3.手形の決済時
(借)支払融通手形 ×××  (貸)現預金 ×××

著者
田邉 太郎(公認会計士・税理士)
2011年1月末現在の法令等に基づいています。