ビジネスわかったランド (経理)

資金繰りと資金管理

余裕資金の上手な運用の仕方は
「借金の返済」こそが最も効率的な資金運用のひとつである。また、うまい話にはウラがあることを念頭に、事前に十分な調査をしたうえで、金融商品なども検討する。

必要な現預金の額
資金繰りをスムーズに回転させるには、手元の現預金は必要である。しかし、現預金そのものはそれ自体何の収益も生まないので最小限の保有にとどめ、残りの資金(余資)は種々の運用をして収益を稼がなければならない。
余資の運用は、いわゆる流動性を保ちながら収益性も狙うということになる。あえていうなら、収入が一切なくても翌月1か月分の支払いができる程度の金額は、流動性を保つこと。そして支払日に運用期日を合わせること、さらに、月中の支払いの集中日と回収集中日のどちらが先かなどを考慮して、必要な現預金額を決めることが肝要である。
なお、当座借越しが使えるのであれば、手元に残しておく現預金はもっと少なくて済む。


アイドルマネーの追放
必要以上に保有している現預金のことをアイドル(怠けもの)マネーという。運用する資金の利息金額は、下図のとおり、「利率×運用金額×運用期間」の掛合わせで計算される。

ともすれば、利率ばかりに目がいってしまう。しかし、もし資金繰りが大まかで信頼性が持てず、不安なため余資のうち10%は手元に現預金として保有しておいたり、1か月単位の資金運用の中で金曜日に出せるのをズボラして月曜日に運用に出せば30日のうち3日間は利息ゼロとなってしまう。
この場合、金額も90%、期間も90%となってしまい、着実に運用していれば得られる利息の8割しか得られないこととなる。
もし、5%の利率が得られるのに、8割の4%で運用していれば、資金担当者は大目玉を食らうことであろう。
リスクのないものであれば利率にあまり差はなく、アイドルマネーをなくすことを基本にして金額と期間の最大化を心がける自社の運用スタイルをつくればよい。金利が低い近年はあまり差が生じないが、利率が高い経済情勢のときには、留意すべきである。

一番の運用は借金の返済
さらに、もし、余資が継続的にあるのであれば、一番に考えるべきなのは借金の返済である。
当然、「借入金利>預入金利」であり、拘束預金を考えれば、借金を返済することによる運用利回りは実効金利となり、コストの面での効果は大きい。
ただし、途中返済は、銀行の印象が悪くなり、金融引締め時などでは借入ができなくなるリスクもある。
それだけに、この方策は銀行に納得してもらってから実行すること。また実際には返済しなくて金利引下げの交渉材料として使うのも一法である。

実際の運用
1.小口資金はMMFの活用……引出し、預入れが自由にでき、金利(銀行の定期と同等)もそれなりにつく証券会社のMMF(マネー・マネジメント・ファンド)をうまく活用すれば、流動性と収益性の両面を満たすことができる。
2.支払集中日に満期日を当てて運用
3.金額が大きければ、1日単位でもそれなりの金利がつくのでアイドルマネーを残さない
4.課税関係……運用商品によっては、税務上、貸金扱いにされるもの(たとえば、現先)がある。貸倒引当金の対象貸金に該当し、一定率の引当金繰入額が損金に算入できるので、その分税金が安くなり、高利回りとなる。期末をまたがる運用のときは活用すべきである。
また、収益に対する税率や課税方式などが違う商品もあり、表面上の利率だけでは判断しない。

うまい話にはウラがある
金融商品にはいろいろなリスクがあるので、当該商品での運用を考える際には、その商品にはリスクがあるのかないのか、あればどんなリスクかをよく把握したうえで運用に出すべきである。低リスクでハイリターンのものはない。

運用に際してのリスク
リスクには一般的に次のようなものがある。
・為替レートの変動
・元本割れ
・安全性……預入先・債券発行者
・収益性……利回りが確定していない
・政策性……取引先・取引金融機関との関係
・流動性……換金性・満期がきても換金できない
・難易性……中身がわからない証券化商品

著者
石田 昌弘(元オムロン株式会社経理部長)
2011年12月末現在の法令等に基づいています。