ビジネスわかったランド (経理)

仕入、買掛金の管理

買掛金の残高確認の仕方と不一致の際の対応は
 不一致の差異を原因別に区分把握し、それぞれに応じた対応をする。

<< 買掛金の残高確認はどうやるか >>

買掛金管理の重要性
資金管理のうえで買掛金の管理は、過払い等の誤りの総合チェックを行なうものとして、きわめて重要な意味をもっている。すなわち、買掛金残高の構成内容を常時チェックできるように、買掛金計上票など買掛金計上の証憑を区分して整理し、支払済のものは完了分として別枠整理しておく。そうすれば、残った内容やその理由のチェックにより、買掛金の計上段階でのミスや支払段階でのミスなどが発見でき、それにより、今後の改善対策を立てることができる。

まずは買掛金元帳との残高照合を
買掛金の残高照合とは、買掛金の仕入先別残高が仕入先の売掛金残高と一致しているかどうかを確かめ、記帳を正確にする手続きである。買掛金の残高が正確かどうかは、毎月の請求書によってもつかめるが、この残高照合手続きによってさらに明確になる。
もっとも、不一致が出ても、その理由が値引未訂正なのか未検収なのか、入金未記帳なのか、はっきりしないことがある。こうした事態を引き起こさないためには、買掛金元帳の各仕入先ごとの消込みや、どの買掛金を支払ったか1件ごとにチェックすることを行ない、未払いになっている残高の内容をチェックすることである。この残高確認によって原因をつかみ、修正をする。

仕入先への確認も
期末などには、仕入先に残高の確認を求めて、お互いの残高の差異の内容を検討する。
確認の方法としては、不一致の有無に関係なく回答を求める積極的確認と、不一致があった場合のみ回答を求める消極的確認とがあるが、前者のほうが確実である。
一方で決算期は事務量が多くなり、また差異分析の必要もあるので、この残高確認は、決算日の1、2か月前の締め日で行なうほうが望ましい。また、先方からの売掛金の残高確認依頼書がある場合、これを利用する方法もある。
さらに、督促をしても残高確認が未回答の仕入先に対しては、何か特別の理由があるかもしれないので、当方で発注書・納品書・請求書等の確認を行ない、自社残高の正当性を確保しておく必要がある。

<< 差異分析と期末整理 >>

残高確認を行なったら、不一致の差異を原因別に、たとえば次のように区分し、それぞれに対応しておく必要がある。
1.未検収
相手方の売上計上時期と、当方の仕入・買掛金計上時期の相違によるものなので、通常は問題にならない。しかし、大量の未検収在庫が存在する場合は、直ちに原因究明する必要がある。そして、当方に責任がある場合は、買掛金の計上処理を行なう。
また、社内の手続き上未検収になっているだけで、実際には販売、売上計上されている商品や、製造に投入されている原材料がある(未検収売上)場合も考えられるので、チェックのうえ、買掛金計上も行なう。
2.返品・値引・単価等交渉中のものや仮仕入・仮単価のもの
仕入部門に、経過や見通しなどを問い合わせて確認し、合わせて早期解決を要請する。
仮単価のものは、できる限り正規の単価に修正しなければならず、単価未定のものは、仮単価を見積もって計上する。このとき、見積金額は客観的・合理的なものでなければならない。
3.帳端処理
請求書の締切日を基準として、仕入・買掛金を計上している場合は、この締切日の翌日から決算日までの帳端分を買掛金(消費税も併わせて計上)として計上しておかなければならない。なお、翌期首には、振戻処理を行なうこと。
4.納品書到着のズレ
入荷(発送)基準を採用している会社では、本来、入荷・発送の事実に基づいて買掛金計上を行なう。ところが実際には、仕入先より送付されてくる納品書に基づいて買掛金計上を行なっている例も多い。
したがって、期末には納品書のチェックをし、商品入荷の事実があれば買掛金計上を行ない、商品は未入荷で納品書のみ到着している場合は、当然、買掛金計上から除かなければならない。
また、商社など直送取引を行なっている場合は、売掛金の計上と買掛金の計上がずれると、損益に重大な影響を及ぼすので、期末前後の処理には注意が必要である。
仕入先からの書類が未到着であっても、売上に対応する仕入は、買掛金計上する。
あらかじめ担当営業者は期末までの納期予定の受注情報を入手し、それに基づいて納品書、請求書のチェックを行なう。あるいは、販売先等に連絡して商品到着の有無を確認するなど、より確実な方法をとることが望ましい。
5.訂正時の注意
原因が判明し訂正する場合、それが当年度分のものは仕入の訂正で処理し、過年度分のものは前期損益修正となる
相手からの請求がなく時効期限が経過したものは雑収入処理を行なうが、直ちに処理してしまうのではなく、調査や、相手との話し合いを十分に行なってからにすべきである。
また、差異がきわめて少額で、どうしても原因が判明しないものも雑損益処理をする。

著者
木村 隆(公認会計士・税理士)
2009年4月末現在の法令等に基づいています。