ビジネスわかったランド (ビジネスマナー)

文章を「分かりやすく伝える」テクニック

主役は早く登場させる
書き手と読み手は、少しでも早くその文章の主役(主題)を共有すべきです。
歌手、高橋真梨子のことをインターネット上のウィキペディアで調べていましたら、次のような文章に出合いました。少し分かりにくいかもしれませんが、この文章の主役を探し当ててみてください。
火曜サスペンス劇場の主題歌として同番組のターゲットである主婦層から絶大な支持を受け、自身では最大のヒット、番組の主題歌としては岩崎宏美の聖母たちのララバイに次ぐ売上を記録し、さらにはカラオケチャートでも40-50代女性の中で1位となった「ごめんね…」や~
(2009年7月1日15時現在のウィキペディアより)
最後まで読めば分かったと思います。この文章の主役は「ごめんね…」という曲なのですが、その登場の前に修飾語が延々と続いています。書いている本人は最後に登場する主役が何なのかを知っています。しかし、読み手のほうはそれを知りません。ですから何の話か訳が分からないままじっと耐えて、主役の登場を待たねばなりません。このような文章が明快と言えないことは、明らかでしょう。

「『ごめんね…』という曲は火曜サスペンス劇場の主題歌として……」と書き始めれば、問題は一気に解決します。
  • スムージーの一番人気は、100パーセント・アップルジュース、イチゴ、バナナ、アイス、ノンカロリー・フローズン・ヨーグルトをミックスした「ストロベリー・ワイルド」である。
  • スムージーの一番人気は、「ストロベリー・ワイルド」である。100パーセント・アップルジュース、イチゴ、バナナ、アイス、ノンカロリー・フローズン・ヨーグルトをミックスしたものだ。
この原文も、最後まで読まないと何の話か分かりません。それのみならず、読み始めたときには、「スムージーの一番人気は、100パーセント・アップルジュース」と誤解してしまいそうです。改善案のように、「ストロベリー・ワイルド」という主役を冒頭に登場させれば、読み手は何の不安もなく読み進むことができます。
  • アメリカでは、インターネットの普及を利用し、コンピュータ技術とカウンセリングの結合が進められている。メールとカメラとマイクを用いてカウンセリングを行なうのである。
  • アメリカでは、今までになかった新しいカウンセリングが行なわれている。インターネットを利用し、メールとカメラとマイクを用いてカウンセリングを行なうのである。
この原文には最初に、「インターネット」「コンピュータ技術」「カウンセリング」という3つ言葉がほぼ対等の形で登場します。にわかには、どれが主役なのかが分かりません。
改善案では、「新しいカウンセリング」が主役であることが、最初に明確に示されています。そうすれば、後の文章の理解がずっと容易になります。

以上のように説明すれば、主役をなるべく早く登場させようという提案に多くの人が賛成してくれるでしょう。
ところが、いざ自分が文章を書く段になると、そのことをうっかり忘れてしまうことが少なくありません。それは、書こうとすることを自分の側からばかり見て、相手の側に回って見直してみる習慣がないからです。